日記:三体の話とかキンタマのエコー撮ったときの話とか
noteに「8月なんも書いとらんやないか!なんか書け!!」とケツを叩かれたので日記を書きます。
なんか特に書くことないんですけど……なんでこんな面白いこと言えないおれに174人もフォロワーがついて記事を読んでくれているんだろう……とか思い始めていますが、まあいろいろあったことを思い出しながら書きます。
三体を読んでいる
読んでます。
最近小説をぜんぜん読んでなくてIQや語彙が下がりに下がっていることを自覚し始め、これはまずいと積ん読の三体を崩し始めました。面白いですね。Twitterでもずっと三体の話ばっかりしてます。
第一巻の時点ではかなり迂遠というか、並行で進んできたお話が収束して「今こういう事が起きている」という真相にたどり着くまで結構かかるのが苦痛なのですが、「中国に住む現代人が文革についてどう考えているか」などといったそうそうお目にかかれない内容で飽きませんでした。
共産主義には明るくないのですが、原始的な共産主義は反知性・帰農をものすごく熱烈にプッシュするところがあって、これが極まった結果出てきた文革は本当に恐ろしいなと思いました。ものすごく異常な時代ですよ。バカであればバカであるほどよく、無学で原始的な生活をしているほど美しいとされる。インテリはいくら殴って殺してもよい。この延長線上に「メガネをしているやつは殺す」で有名なクメール・ルージュがあるんですが、我々日本でも全共闘とか日本赤軍とかあさま山荘事件というイカれた共産主義者がやらかした恥があるのであんまり他人のことも言えない……。大義名分に酔って熱狂した結果「人を殺してもよい」と行くところまで行ってしまったら近代文明として終わりだな……と思わせます。
これを自己批判的に中国で出版したこと自体がなかなかすごいことだなと思いますね。よく共産党に怒られなかったなというか……。
三体は「知識層と労働者層の相克」をすごく意識している小説だなと思います。文革はその最たるものですが、現代パートでも汪淼と史強の二人が並んでいたり、インテリの葉文潔が送ったメッセージを三体人の最底辺の労働者層が受信したりしている。
この葉文潔と1379号の対比は白眉と言うほかないですね。インテリであるがゆえに、自分の知っている世界である文革と共産党の貶め合いだけをこの世のすべてだと思い込み、葉文潔は全世界を巻き込んだ自殺のような行動に出てしまう。対して1379号は孤独であまり知能が高くない、社会的地位の低い老いた人物ながら、「自分が何かを成せなくても、少なくとも美しい星をひとつ守るくらいはしたい」と己の身を犠牲に心からの優しさを地球人に向けてくれる。この差がえげつない。
労働者層が良いのかといえば、やはり文革をやらかしたりした通り、粗野で暴力的なところがある。かといってインテリ層もインテリ層で自分の絶望だけをもってして全世界の人々を巻き込んで三体人の侵略を招いたりする。どちらだけが良いとは言わないところが実に示唆に富んでいます。
でも両者の関係がうまく行っている場合はどうか?
ここで汪淼と史強のタッグがきらめいてくるわけですよ。賢いながらもメンタルが弱く絶望しがちな汪淼を、現場主義で鋼の精神の史強が力強く支える。このふたりの関係って、知能・肉体・精神が調和してるんですよね。史強が車で連れ出してイナゴの群れを見るシーンは本当に圧巻でした。
……と思ったら二巻の黒暗森林でめちゃめちゃ作品の雰囲気が変わって笑ってます。三体、なんか急にギャグが始まったんだが……?羅輯が拉致されてまたしても何も知らない大泉洋さんみたいなことになっていく流れでお腹痛くなった。なんでおまえ宇宙戦争やってるときに史強に頼んで理想のオリキャラ描いてもらうskebやってんだよ!!
そういうわけで、三体おもしろいんで皆さんも是非読んでみてください。一巻はちょっと難しい話も出てくるんですが、二巻は自分の妄想の美少女にハマりすぎて人生棒に振ってるボンクラ社会学者が説明無しでいきなり人類の命運を任される、ちょっと何言ってるかわからないバカみたいな話が始まるので俄然オモロが湧き出してきます。
最近やってるゲーム
Psychopomp
海外のアーティストが作ったアドベンチャーゲーム。
主人公の女性が「他人の考えてることがわからないから読心マシンを作ろう!」と開発してみたものの、結果は大失敗。しかしこれをつけると見えないものが見えるようになり…みたいなお話。
彼女が言うには、あらゆる建物の下には社会の秘密を隠した地下墓地があるらしいが……。
この失敗作のヘルメット、ありもしないものが見えるようになってどう考えてもヤバいのですが主人公ちゃんはなんかガンギマリで満足そうです。よかったね。いやよくねーよ!!主人公がこの顔しちゃダメだろ!!
陰謀論と被害妄想と幻覚がまぜこぜになった意味不明な世界を探索する独特なゲームです。完全和訳もされてますし面白いと思うんですが、たぶん精神が健康なときにやったほうが良いと思います。
まどろみトラベル
干潮時にあらわれる不思議な街、睡眠街をぶらぶら探索するゲーム。滞在していると眠くなってくるので、いかに眠らないようにまどろみゲージを管理するかがゲームのキモ。
アートワークが優しげでかわいらしく、主人公のコノミさんはもちろん、睡眠街出身のともだち・ミモザラとの関係もふんわりとしていて温かい。
ローグライクというとハードな世界観設定が多いけれど、これはただ眠らないように頑張ってそのへんを歩くおはなしなので暴力的なものが苦手な人にもおすすめできますね。
まあおれは悪いオタクなのでコノミモのカップリングを想像してニチャニチャしてますが……。
BOMB RUSH CYBERFUNK
ジェットセットラジオをリスペクトしたハイスピードストリートカルチャーゲーム。ちょっと触るのが遅くなりましたが最近やり始めました。
原作ジェットセットラジオを意識しつつも、スケートやスケボーなどプレイヤーが使うツールを切り替えられるのが面白い。ちょっと違った滑り心地になるのがいいですね。楽曲に関してもさすがのセンスで、長沼秀樹さんはもちろんのこと2 Mello等JSRに縁深いコンポーザーから採用しているのは「わかってるな…」って感じ。
ただちょっと曲のチョイスにバカゲー感がないな…ってとこでおれとちょっと解釈が違うなと思ったりもします。長沼秀樹の"エセ西海岸風"というのか、ああいう絶妙に彼オリジナルの要素が入っているファンクではなくガチ西海岸のHIP HOPになっちゃってるので、「日本のカレーを食べたかったのにインディカ米のちゃんとしたスープカリーが出てきちゃったな…」と思うかな、おれは。
「コルテックス倒してきてね」とか言っちゃうようなああいう遊びがなくて…。音楽性ならぬセガ性の違いを感じる部分は否めないですね。
とはいえ滑走感の出来は非常にいいし、ゲームシステムもJSRよりわかりやすく整理されていて進化してますね。
キンタマのエコーを撮ったときの話
急にどうした?と思われそうな大見出しですね。あの、その、ちがくて………ちょっと理由があって…。
昔の記事で「キンタマのエコー撮ったことあるんだけど…」と言いかけてそのままキンタマの話をする機会を逸しているな…と思いそろそろ書くことにしたんです。その……違うんです……発狂したわけじゃなくて「する」って言った話をしないのも誠実じゃないかなって思ったんです…。確かに自分の性器の話をするのは機会というより常軌を逸していますが……。
話を戻します。
おれが大学生くらいのとき、ナマイキにもクロスバイクに乗っていた時期がありました。おれは今の運動嫌いからは想像できないくらい、大層のめりこんで週末に地元のサイクリングロードを端から端まで走ったりしたものですが……。
さて、ここでひとつ問題が発生します。みなさんスポーツ自転車のサドルってどんな形かご存知でしょうか?
そうです。キンタマだけを正確に抉るかのような残酷なデザインになっているのですね。
足の動きを邪魔しないために細くなっているんですが、そのぶんの荷重が会陰に集中する…という過酷なトレードオフが生じており、座り方がうまくないと容赦なくふたつのCreepy nutsがくるみ割り人形されてしまうのです。おれはこれを人間工学の敗北だと主張しているのですが誰も耳を貸してくれません。
キンタマをお持ちの方は理解していただけると思うんですけど、なんでこの問題がずっと放置されてるのかって思いますよね。わかりますか?この社会は臓器が圧迫される欠陥構造を容認しているんですよ。インターネットで検索すると同じような悩みを持っている人が多いのに、いつまでたっても解消されない問題なんです。これは自転車業界を巻き込んだ陰毛……陰謀に違いないと睨んでいます。許せませんね。
そういうわけで大学生のおれは片道40分かけて丹念にキンタマを圧迫しながら通学し、両方のキンタマがステレオで上げる悲鳴をだましだまし聞こえないように乗り続けてきました。しかしながらついに動けなくなるほど痛くなり、事ここに及んで睾丸の絶叫ASMRにまで至ってしまったので病院に行くことを決意します。
ここでさらにおれはもうひとつ失敗します。病名をググってしまったことです。
おれはキンタマのあまりの痛みに思考力が落ちていたのでしょう。自分のGolden Ballsがどうなっているのか不安すぎて激痛にもんどり打ちながら検索してしまい、精巣捻転ではないかと思いこんでしまったのです。これは人生で役立つアドバイスなので覚えておいてほしいのですが、みなさんもキンタマが痛くなると深くものを考えられなくなるので気をつけてください。
精巣捻転とはキンタマをつなぐ管が回転してよじれてしまう現象で、まずい状態だと捻れすぎて壊死してしまうこともある恐ろしい病気です。「キ、キンタマが……壊死!!!!!」まさにタマヒュンとはこのこと、完全にパニックに陥ります。
いま思えばただの炎症程度の話だったのでしょうが、キンタマがなくなるなんてのは男の一大事なんです。ナニとは言いませんが出るものが出なくなっちゃうんです。(いるかわかんないですけど)女性読者の方はどうかわかってください。痛みに加えて涼しくなってしまった股間を抱え、おれは冷静さをうしなって悶え転がりながら泌尿器科の予約を取りました。
キンタマの管が捻れてす、しまったのですが!!!
かくして一刻を争う状態だと誤認したおれは痛むキンタマをおさえながら泌尿器科に飛び込み、問診票に
睾丸がとてつもなく痛い
と大半の人が一生に一度も書くことがなさそうな症状を書いて冷や汗を拭いました。あまりにも精巣捻転を調べすぎて見慣れたせいでまず常用漢字ではない睾丸の"睾"がスッと出てきたことをいまでも覚えています。
受付で「今日はどのような症状で来院しましたか?」とか聞かれなくてよかったです。おれはともかくとして相手方の立場になってみれば相当イヤだろうなという話で、ガタイのゴツい男子大学生に鬼気迫る顔で「私のキンタマの管が捻れているかもしれないんです…!」とか言われたら重度のPTSDになっていたかもしれません。
やっと順番が回ってきて先生に必死に訴えたところ、「まあ…大丈夫だと思いますけどエコーで調べましょうか」と若干低めのテンションで案内され、ベッドに横たわり下を脱ぐことに。「え、キンタマってエコー撮ることあるんだ……!」とかなり衝撃を受けつつベルトを外しました。
このとき、先生は男性だったので良かったのですが(良かったのか?)、その場に立ち会っている看護師さんが女性だったというのがかなりしんどかった。おれは「あれかな?せめてオチンチンに布とかかけて隠してくれるのかな?」と淡い期待を抱いていましたが、そのままフルオープンの状態で冥府を流れる嘆きの河のような冷たさを陰嚢に感じた瞬間すべてを諦めました。
つらい経験というのはおれも人並みにしてきたつもりですが、人生の中であのときほどいたたまれない時間はなかった……。異性に事務的な冷たい目で見られながら中年男性の手でキンタマにエコー用のジェルを塗られるという特殊な体験は、自分では自覚できませんがおそらくおれの精神構造に多分に影響を与えていると思われます。
先生にはとてもイヤな作業だったと思うのですが、じっくりと丁寧にキンタマのエコーを撮っていただき、無事「管に捻れはないので炎症でしょう」と診断され一安心しました。良かったです。自分がなんでもないのにパニックを起こしてキンタマのエコー撮った人だという事実から目を背ければこれほど嬉しいことはありません。
そんなわけでもうかれこれ7~8年前くらいの出来事、キンタマのエコーを撮った話でした。
あまりにもくだらない話ではありますが、こうして振り返ってみると少し身につまされるところがありますね。SNSではよく自分の症状を調べてパニックを起こして代替医療にハマったり、怪しげなオカルトに走る人がおもしろおかしく笑われることがありますが、おれもまたキンタマのエコーを撮ってしまった経験を考え「他人のことを言えない身だな…」と陰嚢がキュッと引き締まります。
ヒトは痛みを知ると優しくなれる。2個の痛みだったのできっと2倍優しくなれたと思います。