ファントムシータ HANAGATAMI MV 感想

ファントムシータ『HANAGATAMI』(OFFICIAL MUSIC VIDEO)


・衣装、装飾品、メイク

氷の女王(姫)や雪の妖精を想起する衣装で、色味を抑えている分、装飾品やメイクを華美にしてバランスをとっている感じ。

全体はシンプルすぎず、派手すぎずで、上品にまとめていてGood。
小物類も安っぽくなくて、かわいい。
メンバーによく似合ってる。

・舞台

白と青で構成された雪原のような幻想世界に柳が1本たっている。
空からは白と青の花びらが降りそそぐ。

◆柳の意味

・・・柳は「強靭な生命力」の象徴となり、さらにそこから発展して魔除け・子授けの力を持つと信じられるようになりました。
・・・柳に関する習俗にもう一つ・・・「旅立つ者に柳の枝を手折って送り、無事を祈る」というものがありましたが、これも柳の旺盛な生命力や、辟邪へきじゃの力に由来しています。

出典:カクヨム 穴だらけの知恵袋 田所米子    https://kakuyomu.jp/works/1177354054884911968/episodes/1177354054893341923

「旅立つ者に柳の枝を手折って送り、無事を祈る」っていうところが、新たな出発の歌だと暗示しているのかな。

・イントロ 0:00~

暗闇の中、柳に向かって歩いていく。
タイトルが表示。

・1Aメロ 「黴の花に」から 0:18~

明るいなか上を見あげて歌っている
暗いなか伏し目がちな顔をしている

希望や期待、不安や孤独の間で揺れ動いているのを分かりやすく表現している。
灯翠の表情と演技にグッと曲の世界へ引き込まれる。

凛花の地声と裏声の中間のような歌声は何故こんなにも魅力的なのか。 

百花の伸びやかな声は前2人との対比もあって涙腺にくる。

自然過ぎて初見では気づかなかったけど、もなは実際に涙を流している。
想いを込めているのが伝わってきてこちらも感動。
歌唱もピアノの演奏とシンクロして、サビへの繋ぎとして抜群によい。

・1サビ 「花筐」から 0:53~ 

アングルが斜めになってるのは身長差を目立たせないようにするため?
フォーメーションはその辺りが配慮されてそう。

いつもみたいにヒールに差がないのが、等身大の彼女たちを表してるようでよい。(単純にバレエシューズだからかもしれないけど。)

斜めの画角は、大ぶりの振り付けも相まって躍動感につながっている。
けど、腕をクロスするところで美雨の手先が切れてるのは‪‪✕‬。
このパート、凛花の姿勢が美しい。

・1サビ 「動けない」から 1:01~

1Aメロと同様の暗いシーン。

美雨の表現に心臓をグッと掴まれた。
単純な感情ではなくて、複雑な感情を表現してるのかな?

・1サビ 「心が枯れないうちに」から 1:06~

柳のように揺れながらフォーメーションチェンジ。
振り付け最大の見せ場、バレエのような動き。

百花のダンスは頭の先、指先、足先まで完璧すぎて見惚れる。

・1サビ 「境界線の内側から」から 1:14~

満ちたりた表情をした彼女たち。

灯翠はバックの柳も相まって、仙女感があって美しい。
昔の中国の美人画みたい(よく知らんけど)。

・1サビ「わたしはわたしの手を引いた」から  1:18~

美雨の優しい歌声が耳心地よい。「引いた」の部分のタイム感も好き。

そして、場面転換。水中(夢の中?)へ。

・2Aメロ 「壊したくて」から 1:25~

MVで1番驚いたのは、蓮の花がメインのモチーフになっていること。
花筐(はながたみ)=花かごっていうところから、てっきり山か、野原に咲く花をイメージしてた。
どうして、蓮にしたか気になる。花言葉からの連想?

◆蓮の花言葉

「神聖」
「救ってください」
「雄弁」
「沈着」

特に白い蓮は、
「純真」
「清らかな心」

AND PLANTS Magazine 蓮(ハス)の花言葉|色別の花言葉や由来、育て方 by 西山 藍子
https://andplants.jp/blogs/magazine/flowerlanguage-indianlotus?srsltid=AfmBOoqKWpXK9-HxdWcSPG6gDWkrZCZjaTY3EqEgDunWQXBnewSEbKEF


曲の主題的に「救ってください」「純真」「清らかな心」がしっくりくる。この当たり考えるのAdoプロデューサーが好きそう。

感想続き。

華美な装飾は無くなり、素にちかい彼女たちになっている。

俯瞰から撮影するシーンは、ドレスが広がって彼女達自信が花であることを表現していてニクいなと思った。

凛花の憂いを帯びた表情が印象的。吸い込まれそうになる。

灯翠の「私だけの痛みにやっと出会えた」の表情と歌唱は、単なる喜びというよりも被虐性が込められているように感じた。

で、この部分の歌詞解釈が難しい。

壊したくて壊すようなことはなく
壊したそのときに壊したくなった

壊したそのときに壊したくなった」が「壊れたそのときに壊したくなった」なら自分から壊した訳では無いから理解出来るし、前段の「壊したくて壊すようなことはなく」とも繋がる。単に「壊したくないけど、壊さなきゃ前に進めない」っていう葛藤を表現したものなら理解出来る。

演じていた昨日までが消えてなくなり
わたしだけの痛みにやっと出会えた

「私だけの痛みにやっと出会えた」も殻を破ったポジティブなものに思えるけど、そのまま受け取っていいか分からない。
もなの表情が明るいから、それでいいのかも。

・2サビ 「花筐」から 2:00~

1サビとは異なるフォーメーションになっている。

前のシーンから引きつづいてだけど、光の揺らぎで水中を表現しているのがオシャレ。

・2サビ 「私は私の目を隠した」から 2:26~

百花を俯瞰で撮りながら引いていく。
背景(地面)が一瞬赤く染まりそうになり、暗転。

赤く染まる=ファントムシータになる、の前フリでもあり、まだファントムシータになりきれない彼女たちの葛藤の表現にもなっていてGood。

場面転換。地上(現実?)へ。

・3Aメロ 「長い夢をみていた」から 2:36~

凛花のドアップ。

眼力ありすぎる。美しい。

装飾は元に戻り、掌に蓮の花を持っている。

前のシーンからの流れで、花=彼女たち自身を表現している。

凛花の喉奥で響かせるような歌唱が素晴らしい。

もなの吐息多めの歌声に癒される。ビブラートも心地よい。

・3Aメロ 「目が覚めて」から 3:10~

美雨のストレートな歌唱は曲の盛り上がりと合わせて高揚感を感じる。
声の魅力が存分にひきだされていて、歌唱だけならこのパートが1番好き。

それぞれ個性のある花を持ち、池の前に立つ。

花が完全に開ききっていない状態=純真、未成熟なことを表現している。

灯翠が池に花を浮かべる。

裏声やエッジボイスでニュアンスを出していて、単調になりそうなメロディをうまく表現している。
灯翠の声の魅力を感じることが出来るフレーズ。歌うますぎる。


他の4人も花を水面に浮かべる。

花が赤く染まりそうになり、場面転換。

・3サビ 「花筐」から 3:42~


彼女たちのいる世界も一瞬赤くなる。
白と青の花びらが降る中、再び満ちたりた表情をした彼女たち。
それぞれの顔のドアップ。顔には涙メイクが施されている。

悲しみの涙ではなく、涙を出してスッキリとした表情にみえる。

・3サビ 「歩き出そう」から 3:58~

5人で手をつないで前に進む。

胸を張って自信に満ち溢れた表情は、前に進む=ファントムシータになる決意と覚悟を表現している。
歌詞ともシンクロしていてMVで1番好きなシーン。

この後の「わたしはわたしの手を引いた」も5人全員で助け合い、高めあってファントムシータとして活動すると読み取れてエモい。

もなに青の花びらが振りかかっている。
赤い花びらになる。
もなが消え蝶になる。

ここまでならただただ美しいファントムシータ結成物語。

・アウトロ  4:16~

無音の中、花を浮かべた池が映る。
タイトルが表示。
青かった部分が赤に染まる。

幻想的な世界が一変し猟奇的な世界に。
池は血溜まり、周囲も血の雨が降ったようになる。

ファントムシータの世界観を伝えつつ、今後の活動の困難さを示唆しているように感じた。

初見の時は、世界が赤く染まっても、池の花は白いまま=ファントムシータの世界の中でも彼女たちは純真なまま、だと思ってたけど、単純に赤と青を反転させただけかも。

アーティストロゴが表示。
スタッフが表示。

~完~

・さいごに

デビュー半年のタイミングで公開されたMVということで、今のファントムシータの想いが凝縮された作品だと思い、感想を書きました。

メンが可愛いとか、綺麗とかはキリがないので、控えめにしてます。
(ほんとは「美雨ちゃん、かわいい!」とか、もっと書きたかった。)

ファントムシータの中でも異質な楽曲で、しかもバラードっていうところで、再生数は伸びていかないかもだけど、MV含めて素晴らしい作品だし、もっと評価されるべきだと思います。

アイドルっていう消費されやすいコンテンツのなかで、MVは長期的に楽しめて愛されるものだと思うので、今後も繰り返し視聴したいです。



・小話

他アイドルを推している友達にMVを見せたら「めちゃくちゃお金かけてんねー」と言われた。

ファントムシータだけ推してると感覚が麻痺してくるけど、相当に時間と労力がかかってるんだなと認識。

インスタントな娯楽が溢れるなかで、こういう重たいコンテンツを作るのはクリエイティブ面でのこだわりとファントムシータの活動への覚悟を感じて、より一層強く推そうと思った。