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240608.SAT〜240614.FRI|強い形式

月末月初の経理作業。スタッフの給料や諸々の税金を振込予約して、先月の支払に漏れがないかを確認して、会計データを税理士に共有。地味な作業だけど大事な仕事だ。実際、今月は支払期限だった設計料が1件振り込まれていなかった。プライム上場企業なんだけどな…なんて思いながら担当者にメールすると、まもなく謝罪と振り込む旨の連絡が来た。
僕とスタッフの、特別徴収の関係書類に眼を通す。あるスタッフの住民税がネットで振り込めず、役所に電話すると窓口しか対応していないと返され絶句。ルールとは言え従業員の納税作業を経営者が負担するのは不満しかない。たぶん制度の設計者が狙った通り、AWAのスタッフ達を含めほとんどのサラリーマンは自分たちが収めている税金や社会保険料がいくらなのか、収入に対する割合がどのくらいなのか、意識してすらない。

先月から再開したコラムの連載は、連休のインドネシア出張で見た2つの広場とAWAのプロジェクトの関係についてまとめ、なんとか締め切り直前に入稿。

外壁の仕上げ工事が近づいているAビルとLビルの仕上げを、現地でサンプルを見ながら検討する。どちらもベースカラーは同じものを選んでいて、年明けに竣工した共同住宅を含めると3プロジェクトで同じ色を採用している。それぞれ規模や用途、立地にデザイン、合わせるマテリアルなどが異なるので、どうなるか楽しみだ。楽しい作業と並行して配筋検査やら追加費用の説明など現実的でシビアな作業もこなしていく。

サンプルを並べて外壁のカラーを検討中

プロジェクトの合間に、IGArchitectsの五十嵐さんと二つのイベント、彦根明さん・ジョースズキさんのトークイベントと魚谷繁礼さんの講演会を巡る。
トークイベントの後にジョーさんが母校の慶應義塾を案内してもらう。亡くなった槇文彦さん設計の図書館も良かったけれど、第一校舎に僕は惹かれた。2つの折り返し階段が吹き抜けを挟んで対象に並んで、(当時の法に基づいて)防火区画のない状態で廊下と一体の空間になっている。避難の実用性もあるだろうけど、シンメトリーの形式を持った構成そのものが美しかった。中廊下型のリニアな空間や、校舎の中央からエントランスが突き出るT型の平面形状も、100年経って見えてくる時代や用途を超えて生き続ける形式・構成が力強かった。ちなみに内田ゴシックみたいな様式も良かった(周りに銀杏が植えられている所もそっくり)。
そう言えば、魚谷さんの講演でも、魚谷さん自身は京都の町屋そのものよりも京都という都市のグリッド構造に興味があると話していて、12百年続く京都の街が時代を反映して色々と変化しながらも都市のグリッド構造が下地のように残り続ける様子をリサーチの結果とともに解説していた。
京都の街も慶應大の第一校舎も、表面では色々な変化が起こりつつも水面下では都市や建物の形式が残り続けているところが共通している。もしかしたら、こういった奥底にある形式が表層の変化を可能にしているのかも知れないし、だとしたら色々な要素を引き受ける包容力のある形式というのがあるのだろう。そういったものに僕は惹かれる節がある。
そう言うことを考えていたら「強い形式」というテーマがこれらのイベントに誘ってくれた五十嵐さんの自邸にも共通するテーマだ!と気づく。

五十嵐さんは住宅特集の掲載やモダンリビングで特集されたからか、12件も仕事をこなしているらしい。負けていられない。

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