大学生おもしろエピソード〜自己評価高すぎくん
ここまで、エントリーシートの話を少し書いてきましたが、今回少しだけ横道に逸れて?、アナウンススクールで受講してくれた生徒さん達とのやり取りを切り取って書いてみようと思います。
何しろ19年という長い期間、千人以上の受講生と相対して来たので、彼らとのエピソードはそれこそ枚挙にいとまがありません。
彼らと向かい合って来たその時間はそれはそれは濃いものでした。
先ず最初にご紹介したいのはやはりT君のこと。
彼がスクールに通っていたのはかれこれ16.7年も前のこと。今の大学生とは、社会の環境も学生の気質も大きく違っていることは確かです。
それでも、どうしても忘れられない一言を放ってくれたのでぜひご紹介したいのです。
その頃はまだテレビ局のアナウンサーは花形の職業。合格倍率も地方局でも数百倍の難関でした。
その職業に就きたいと、私たちの小さなアナウンススクールにも今では考えられないほど多くの大学生が集っていました。
入校してくる彼等の大半は、自信に満ち溢れています。
もちろんそうでない人もいますが…。
T君も、それこそ自信満々です。
背が高くスラリとして、友人も多く明るい人柄。
確かにパッと見、アナウンサーっぽい人ではありました。
そんな彼との初めての個人面談。エントリーシートなど、細かな相談に乗ったその後に、屈託のない明るい顔の彼から飛び出した言葉が、「先生、僕って爽やか系じゃないですか。」
私は絶句。
この言葉のインパクトが強すぎて、その時の相談事が何だったのかも忘れてしまいました笑。
自分の口で、自分を爽やか系と言い切る。この自信にもびっくりだし、第一爽やか系って何?何をもとに決めるの?と、口をアングリさせてしまったものの、次には笑い出してしまいました。
爽やか系かぁ…。
爽やかかどうかは人が決めるものじゃないのかなぁ。自分でそれを言う?
私は、アナウンサーを目指す大学生や社会人と一対一で話をする機会がとても多かったのですが、私自身がみんなの憧れのアナウンサーではなかったことが大きいのでしょう。皆さん、緊張も何もしないので結構本音をポロリと口にするのです。
その本音を聞くと、いかにみんな自信過剰なのかわかります。
T君とは別の女子学生。
特に美人というわけでも、アナウンサーに求められる明るさ、笑顔に魅力があるわけでもない(失礼!)、ごく普通の国立大生の彼女は、「先生、私って内定が出るか出ないかの、ちょうどスレスレのところにいると思うんですよね。」と大真面目な顔。
これにも、私は開いた口が塞がらず、「ねぇ、何をもって内定スレスレと判断するの?」と、素朴に尋ねました。
アナウンサー試験って、それほど甘い試験ではないので。
彼女は、九州屈指の国立大学に競争を勝ち抜いて合格したという思いがとても強かった人でした。
この合格は物凄い武器で、これを持てばこの先の人生は思い通り!と、真剣に思っているのでした。
でも、就職試験、特にアナウンサー試験は偏差値とはおよそ関係のないところで結果が出ることも多く、大学入試で結果が出せた人でも、就職活動がうまくいかない人はとても多いのも事実です。
彼女が合格スレスレかどうかなんて、私は口が裂けても言えないなぁと思ったものです。
こんな風に、まだ何も始まらない時期には、根拠なく大きな自信を持つ学生が多いものです。
自信を持つことはとても良い事ですよね。自分を信じることは大切ですし、必要なことではあります。
でも、自信を持つまでにやるべき事は必ずあるはずで、私は寧ろ、大人が「自分を信じて!」と若い人に簡単に言うのはどうかな、と思います。
就職活動を始める時、本当は不安の方が大きいはず。自分には何があるのだろう、何がアピールできるのだろうと、誰もが悩みます。だからこそ、自分を奮い立たせようとするのかもしれません。でも、自分の立ち位置を高いところに置きすぎると、その後の就職活動は大抵おかしなことになりますよ。そんな人を、このお二人だけではなく、たーっくさん見てきました。
これから就職活動をする皆さん、自信を持つからには、下準備をたくさんしましょうね!
その下準備のお話はまたの機会に!