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私がダンスに辿り着くまで7(師匠を語る)

師匠の好きなところ。
・見た目がかっこいい。
・ダンス作品の振り付けや構成・演出・世界観がかっこいい、個性的(変わっている)
・個性的だけれどベースの技術がちゃんとしている
・お人柄


・見た目がかっこいい
6の記事でも書いたけど、背が高く手足が長くめちゃめちゃ細い!
宝塚の男役のようでもある。ご自身のダンスチームは歌あり踊りあり芝居ありで(今だと『梅棒』みたいな感じ)男役をよく担当してらした。
レッスン着はダルダルな時も多いがダルダルでもかっこいい。私服姿もおしゃれだった。
ダンス同様いろんなテイスト、どこか風変わりで個性的。ちょっと民族っぽいポンチョを着てた時は「テーマはスナフキン。」
スタイルお化けなので超シンプルでもかっこいい。
ざっくりしたオフタートルのニットに、ブーツカットのデニム、イタリア製のフェドラハットをかぶっていた時は、女性的だけどかっこいいという不思議な雰囲気だったので印象に残っている。


・ダンス作品
振り付けが曲や歌詞にぴったりで、一度踊ってみたらもうそれ以外の振り付けは考えられない!となる。キリングパート製造職人。

『シアタージャズ』や『テーマパークダンス』も出来るけど、お決まりの技術(ポーズやターン、ジャンプ、ステップ等)をつなげたルーティーンではなく、また表情や演技力で伝えるのでもなく(表情と演技力も求められたけど)あくまで曲に合った個性的な「振り付け」がメインで構成されているところが凄いし面白い。

作品全体から何か物語を感じる。はっきりしたテーマがない時でも、世界観が見える。しかもちょっと変わっている世界。
作品タイトルの時点で「?!」となることもある。『脱皮』とか『紅烏龍茶』とか。。

もちろん衣装も絶対に日常では着られないものが多い。
イメージに合うものが無ければ作る!
「もののけ姫のサンみたいなやつ着たい。」とのことで、20人分の衣装の為に、絨毯みたいな巨大なファーの反物を担いできて、みんなでハサミで切って獣の皮の被り物のようなベストを作り、スタジオを毛まみれにしたこともww

でも単に奇抜なだけとかウケ狙いとかやりすぎで引く、とかにはならないギリギリ(?)の所を行くバランス感が凄い。発表会では他のクラスの人に「毎年楽しみにしてる(^^)」と言われてたw


・個性的だけどちゃんとしている
作り出す作品は個性的。でもレッスンの進め方や内容は王道。(これは最近師匠以外のレッスンに行くようになって初めて実感した)
ウォームアップ・エクササイズ~バレエの基礎(プリエ・タンジュ・バットマンetc
)~クロスフロア(ターンやジャンプなどの技をステップで繋ぎながら行う)~振り付け、という流れ。
45分が基礎練習、30分で振り付けを教えて最後の15分で曲をかけて通して踊るという感じ。
しかもバレエの基礎を小学生のバレエクラスのよう(?)に、細かく砕いて丁寧に教えてくれる。
振り付けは個性的なのでその基礎動作がそのまま出てくることはほぼ無いのだが、「基礎があってこそ(変わった動きの振りも)踊れる。」との信念をお持ちだった。
「神は細部に宿る」って言うし、自分が体操では基礎をきちんと知らず苦労をしたので、ありがたかった。
大人だからいきなり踊ると体を痛めるしね(^^;)


・お人柄
まあ作品同様面白くて変わってるw
ご自身のダンスチームも劇団っぽかったし、エンターテイナー。ビジュアルとのギャップが凄い。
飽きっぽくてミーハー、楽しい事面白いことが一番重要でマイペース。
いろんな要素がない交ぜだけど、根っこは真摯で優しい人。

レッスン構成は洗練されていて分かりやすかったけれど、たまに技術の説明が長嶋茂雄みたいに擬音だったりしてた。たぶん天才型。私が出会ったときは中堅~ベテランに入ったところだったと思うが、おそらくお若いころは生徒に伝わらなくて、ものすごく考えて工夫したんだろうなと思う。ちゃんと「できるようにしてあげたい」というのが伝わってきた。

舞台に対するリスペクト、プライドがある。
素人の趣味の発表会であっても、立ち位置やフォーメーションをきっちり決めて、ずれていると必ず修正が入る。
私は自分が観客として見るときに、フォーメーションがずれてたり立ち位置が変だと気になって楽しく見れないというか、「もったいないなぁ」と思ってしまうので、そこを追及してくれる先生はありがたい。

衣装も作品の世界観に合ったものを、売っていなければ作る!「後でレッスン着やパジャマにでも使えるようなやつ」とかはありえない。

わりと体育会系。師匠のクラスには滅多にいなかったが、あれこれいろんなクラスの作品にエントリーするくせにリハーサルをサボって、振りがあやふやな子に、極寒の視線で説教してた。
見てくれる人や舞台を作ってくれる裏方さん、一緒に踊る人に失礼だ、と。
めちゃめちゃ怖かった・・・

ビジュも才能もセンスもノリもあるのにそれに驕らず、生徒が選抜チームメンバーだろうがド素人だろうが一人一人を見て、丁寧に教える。
生徒がついてこれていない時は、ちゃんと立ち止まってくれる、置いてきぼりにしない。
生徒の発表会作品でも自分の世界観を爆発させる。
でも世界観を表現しきれていなくても生徒を責めたりしない。


私は師匠と師匠のダンスワールドが好き過ぎて、師匠ワールドを具現化することが生きがいになっていた。
師匠が指導する選抜チームの中高生にアクロバットを指導する係に任命された。コンテスト用の作品で、チアリーディングのようなリフトやアクロバットをやりたいと。
私はリフトは組体操くらいしか経験がなかったけれど、youtubeを参考にしたり選抜メンバーの子達と試行錯誤しながら作品を作るのはとても楽しかった。
その後スタジオの周年記念公演作品の子供パートを、アクロバットやリフトだけでなく、振り付け・構成まで任せてもらったことも。
そして作品のクレジットに、ちゃんとアクロバット担当として名前を載せてくれる所も気配りがあって嬉しかった。

私はレッスン着をなるべくその時の曲の雰囲気に合わせるようにしていた。師匠は雑食志向だったので、洋楽邦楽流行り物から映画のサントラetc本当に色々な曲で踊った。
私のファッションも雑食志向だったので、レッスン着を考えるのも楽しく、それを師匠が気に入ってくれて、晩年は衣装選びを任せてもらっていた。

師匠が事情があってインストラクターを休業しなくてはいけなくなった時、代行を依頼された。
私がダンスの先生になるなんて考えられなかったけど、師匠のダンスをまだまだ踊りたかったから、師匠が返ってくる枠を確保しておきたくて引き受けることに。
それまで一緒に習っていた生徒さん達と「師匠が帰ってくるまで!」という気持ちで一緒に頑張った!
私の指導が細かすぎて、ジュニアクラスの生徒さんが一人辞めてしまった時に師匠は、「気にしなくていい。”人気がある先生”と”良い先生”は必ずしも一緒じゃないから。あっこちゃんの良さをわかってくれる人はいる。」と励ましてくれた(TT)

10年近く習っていると師匠の好みや考えてることがわかってくる。
ダンスもはじめの頃は体操っぽさがなかなか抜けなくて苦戦したけど、師匠のダンスっぽく見える角度が分かってきた。(師匠がちゃんと教えてくれた)
師匠はおそらく私の一回りくらい上の年齢で、昭和な言い回しが私以外の生徒さん(ほぼ学生さん)には通じなくて通訳したり、勝手に押しかけアシスタントのようになっていた。
この頃が一番楽しかったけれど、いつかは師匠も引退する時が来る。それがそう遠くないであろうことも分かっていた。










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