梅にまつわるお話
「梅はその日の難逃れ」「梅は三毒を絶つ」
こんな言い伝えが昔からあるように梅は体に良いとされています。
「梅は三毒を絶つ」の三毒とは、
・水毒(体の水分の汚れ)
・食毒(暴飲暴食や不規則な食生活による汚れ)
・血毒(血液の汚れ)
のことで、
梅を食べると
・余分な水分などを排出
・体のバランスを整える
・血液をサラサラにする
といった効果がある健康食品なのです。
梅にはクエン酸など、強い殺菌・抗菌作用を持つ有機酸が含まれています。
疲労の回復、胃腸の機能を高める、肝機能を高める、食欲増進など様々な効果があるのです。
梅の効能は2000年前に書かれた中国最古の薬物学書『神農本草経』に、
「気を下し、発熱による胸部煩満を除く、心をやわらげる。肢体痛を治す」
と説かれていました。
日本には飛鳥時代に食用としてではなく観賞用として伝来しましたが
平安時代になると薬として梅を用いるようになりました。
日本最古の医学書『医心方』の「食養編」に梅干しの原形、梅の塩漬けのことを、「味は酸、平、無毒。気を下し、熱と煩懣を除き、心臓を鎮め、四肢身体の痛みや手足の麻痺なども治し、皮膚のあれ、萎縮を治すのに用いられる。下痢を止め、口の渇きを止める」
と書かれています。
平安時代の村上天皇が疫病に罹ったとき、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで回復されたという話や、
「梅干ハ僧家ノ肴」僧侶は梅干しを酒の肴にしていたという話も伝わっています。
戦国時代になるとますます梅の効能が認められて梅干しは兵糧食として重宝されるようになります。
忍者が生み出した栄養たっぷりの「兵糧丸」の材料にも梅は不可欠です。
江戸時代になるとやっと庶民の食卓にも梅干しが上がるようになります。
当時小野蘭山によって書かれた食べ物百科全集「飲膳摘要」に梅干しの七徳が紹介されています。
・毒消しに功あり。ゆえにうどん屋は必ず梅干しをそえて出す。
・防腐に功あり。夏は飯櫃の底に梅干し1個を入れておけばその飯は腐らず。
・疫気を避けるに功あり。旅館では朝食に必ず梅干しを添えるを常とする。
・その味かえず。
・息づかいに功あり。走る際、梅干し1粒口に含めば息切れず。
・頭痛を医するに功あり。 婦人は頭痛する毎に梅干しをこめかみに貼るを常とする。
・梅干しよりなる梅酢は流行病に功あり。
今の時代にも通じる梅干しの七徳ですね。
コレラが大流行した時も梅干しや梅肉エキスの殺菌力が治療に生かされたのです。
「梅肉エキス」
・青梅をすりおろし、布に入れて絞る
・絞り汁をホーロー鍋や土鍋などで弱火で気長に煮詰める
とても手間暇がかかりますが、出来上がった梅肉エキスは万能薬です。
梅肉エキスには梅を加熱することでムメフラールという梅肉特有の成分が含まれ、血流の改善に効果があると言われています。
搾りかすもジャムなどにするととても美味しいので無駄なく梅を使えるのです。
「煎り酒」
室町時代に生まれた長い歴史を持つ万能調味料です。
醤油の普及によってあまり使われなくなりましたが、
減塩効果もあり再び注目されています。
・鍋に日本酒500mlと軽く潰した梅干し3個を入れて加熱
・沸騰したら鰹節15gを入れて半分くらいになるまで煮詰める
・冷めたらこして消毒した瓶に入れる
お醤油がわりにいろんなお料理に使えます。
昆布を入れるとさらに旨みが増します。
「梅は三毒を絶つ」
仏教で三毒とは心の三毒「貪瞋痴」のことで
・貪欲にあれこれ欲すること
・感情をぶちまけること
・無知であること
のことです。
梅で体の三毒を断ち、
梅仕事で梅とふれ合って穏やかに、心の三毒も断ち
心身ともに健康になりましょう。
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