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狂わないように、壊さないように、

久しぶりに小説を読んだ。
携帯の充電が底をつきそうで、仕方なく時間つぶしに持ち歩いていた小説を読んだ。
持ち歩いていたくせに開くことのなかったその本は、数ヶ月カバンの中にただ滞在していて、
そのことが逆に、よほど読むことを恐れていたんだろうなという証拠になった気がしている。

ひとしきり読んだ後の感情は、おおよそ予想していた通りで、
とても哀しくなったり虚しくなったりしている。
そういう内容のものではないのだけれど、
対になっているのだ。人の心を読むことと、自分の心を問うことが。

ずっと逃げていたんだろうと思う。
波風を立てないように、できるだけ穏やかに、感傷的にならないように、素直にならないように。
表に出さないように、狂わないように、壊さないように。

そして淡々と、親より後に死ねればそれでいい。




芸術は問題提示だ。
絶対にそうだ。




救急車のサイレンが聞こえる。
どうか君が乗ってませんように。

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