人生は選択の繰り返しで成り立っている
映画「フォルトゥナの瞳」を観た。
百田尚樹作品は何作か読んでいるものの、この作品は未読。主演の神木隆之介くん、有村架純ちゃん、そして三木孝浩監督という組み合わせに惹かれ、予告を観てから公開を楽しみにしていた作品だ。
幼少時に飛行機事故に遭い両親を失った慎一郎は、死を目前にした人間が透けて見えるという「フォルトゥナの瞳」を持つ。彼はそんな特殊能力を持つ自分に苦悩しながら孤独に生きてきたが、ある日携帯ショップで出会った葵に好意を持ち、彼女の運命を変えたことをきっかけに彼自身の人生も変化していく。
神木くんは、何かを背負った影のある役が見事にはまる役者だ。子役の時は天使のようなかわいらしさで数々の作品で存在感を発揮し、そのイメージを全く損なわずそのまま大人に成長した稀有な役者と言える。でも生まれながら演技の才能を持っていた天才肌らしく、作品ごとに全然違う顔を見せられるのが彼のすごいところ。今回は初の本格的ラブストーリーとあって、自分の運命に苦悩しながらもただ一途に葵を愛し、守ろうとする男らしさがとても新鮮に映った。
「バクマン。」や「脳内ポイズンベリー」などで見せた、陽に振り切った役ももちろん魅力的だ。でも今作や「3月のライオン」の桐山零で見せたような、陰を纏った役の方がより神木隆之介という役者の素晴らしさを実感できる。あくまでわたし個人の所感だけど。とにかくこの木山慎一郎も、神木くんにぴったりはまっていた。
そんな慎一郎に愛される葵を演じたのが、有村架純ちゃん。神木くんと共演が多く、前述の「3月のライオン」では敵対する役を演じていたのが、今回は恋人役。個人的に昨年沼落ちしたドラマ「中学聖日記」で演じていた聖ちゃんのイメージが残りすぎてて、違和感を感じるかも…と勝手に懸念してたけれど、ちゃんと葵という別の役を生きていたのはさすがだった。
そして神木くんと架純ちゃん、このふたりがとてもお似合い。ふたりの魅力を存分に引き出したのは、三木監督の力だろう。同じく三木監督の作品である「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」でも福士蒼汰くんと小松菜奈ちゃんのデートシーンが印象的だったが、今作でも慎一郎と葵が海や公園で過ごすシーンがとても素敵だった。やはり三木監督の青春映画は一級品だ。
「人は朝起きてから夜寝るまでに、9,000回何かを選択している」
これは慎一郎が勤める会社の社長の奥さんである、美津子が言った台詞。この映画のテーマと言える言葉だ。たった1つ違う選択をすることで、その後の人生が大きく変わることもある。そう考えると恐怖を感じるが、人間は毎日、今現在も何かを選択しながら生きているのだ。
人生は選択の繰り返しで成り立っている。運命は信じなくとも、ひとつひとつの選択の積み重ねが、自分の運命を動かしているということには納得できる。だからこそ、自分の中にぶれない芯を持っておくことが必要なのかもしれない――エンドロールを見ながら、いろいろなことを考えさせられた作品だった。