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トルコ旅14<洞窟の部屋>

辿り着いたガーデンハウスは巨大な岩の1つを利用した住居だった。

カッパドキアの奇石は何万年もの月日をかけて自然が作り出した。そして遥か昔から人々はその奇石をくり抜くなどし住居としてきた。イスラム教徒からの迫害を逃れるためにキリスト教徒たちがカッパドキアの渓谷に隠れ住んでいたという歴史もある。そんなカッパドキアは1985年に「ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群」としてユネスコ世界遺産に登録されている。

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カッパドキアには長い長い歴史があり、その異世界とも思える景観に私は随分昔から惹かれていた。「いつかは行ってみたい、自分の目で見てみたい」という夢を抱いていた。今までもここに来ることは出来ただろうに、なかなか来ることができなかった場所カッパドキアに、ようやく足を踏み入れることができた。

今回トルコ行きがまだはっきり決まらない段階から、私は暇さえあればカッパドキアの宿をチェックしていた。かなり素敵なホテルがたくさんあり「泊まってみたい」と思う洞窟の部屋がいくつかでてきたが、ニョキニョキ生えているような岩をホテルにしているところは数も少ない上に料金もそれなりにする。

私たちが今回やってきたギョレメの町には、かなり大規模な岩を削りホテルにして、洞窟部屋をウリにしているところもいくつかあったが、そのようなホテルは大体が予算オーバーだった。11月か12月にして空室検索すると値段がグッと下がりそこそこ安く泊まれるようだったが、私たちがやってきた10月はまだシーズン中のようだ。ただ「若干予算オーバーしても一生に一度は洞窟に泊まりたい!」とも思っていたので「1泊くらいは奮発してもいいかな?」と心のどこかで思ってもいた。

更に調べていくうちに「cave部屋」と「stone部屋」があることに気付いた。stone部屋は石を使い洞窟のそれらしく作っている部屋が多い印象だ。くり抜いて作られた洞窟部屋よりも部屋は広そうで使い勝手がよさそうなので、それはそれで魅力もあるのだが、私は自然を生かした荒削りのような岩の中に泊まってみたいと思っていた。

そんな中、連れてこられた場所は正真正銘の岩を削りくり抜いた部屋だったのである。しかも、ホテルとかではなく地元の人が昔から住居として使っている岩で、周りには人が住んでいる気配も全くない場所である。

興奮するでしょ、これは。

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ギョレメに到着して宿が見つからない時にはどん底に落とされたが、思いもしなかった流れでここに辿り着いた。私はとても興奮していた。

棚からぼたもち、と言うべきか。

そんな私の姿を見てオーナーは「気に入ってもらえてよかったよ、いいとこだろ?」と満足そうである。オーナーファミリーは住んでいる家は経営するホテル近くにあり、ここは時々来る別宅だそう。

居住スペースである居間に行くには外にある急なサビたハシゴのような階段を登らなければならない。

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階段を登りドアをあけた先には居間のような空間があり、大きなベッドが2つと長いテーブル、そして床である岩の上には絨毯が敷き詰められ、クッションもたくさんある広い空間だった。・・・が、もちろん客が来るとは予想もされていなかった部屋だし、宿泊施設ではないのでそれなりではあったが、一晩寝て過ごすには十分だ。一瞬、電気はないか?と思ったが幸いにも電気は通っていた。この時にはきちんと確認しなかったがソーラーだったと思われる。

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そして一旦外に出てハシゴを降りた下のフロアにキッチンがあり、トイレは岩とは別の少し離れた場所に作られていた。もちろん水洗トイレではないしお世辞にも綺麗とは言えないトイレだ。外に雨水をためてある大きな樽があり、そこからバケツに水を入れ、用を足した後はそのバケツの水を流し込むスタイル。トイレットペーパーは流せないのでゴミ箱がある。外で用を足すのと大して変わらないような感じだ。シャワーはないがオーナーが「宿にある共有シャワー、いつでも使っていいよ」と言ってくれていた。

そしてキッチンは水も出るし食器なども揃い、何よりもガスボンベがあった。オーナーが「ここにチャイとかコーヒーとか入ってるから適当に飲んでいいよ」と言ってくれた。キッチンのスペースと居間のスペースはそれぞれ鍵があったのだが、オーナーに鍵の束を渡される。「じゃ、楽しんで!何か困ったことがあったら連絡して。また明日」と言ってオーナーは去っていった。

オーナーが去った後、私たちはこの自然の中にある岩に2人だけになった。広すぎる空間にポツンと2人だけになった。岩の中で声を出すと声が響き渡る。エコーがかったような響き渡る声がとてもいい声に聞こえるので、私もホンザも陽気に歌を歌う。オペラ歌手にでもなった気分だ。小さな窓があり光は差し込んでくるが岩の中なので少し薄暗い。電気はあるがWifiやTVがあるわけでもないので、私たちはネットなどから離れた時間を過ごすことになる。たまにはこういうのもいい。

私はヨーロッパのホテルなどの鍵を開けるのが苦手で(日本とは違った開け方で回したりするので)いつも苦戦するんだけど、ドアのロックがどうなっているのかを一人で確認するなどしていた。そして少し仮眠しようかとも思ったが、天気もいいし出歩かないなんてもったいないということになり、身支度をして出かけることにした。

そこでハプニングが発生した。

岩の外の階段の上でホンザが鍵をしめてから、練習兼ねてもう一度鍵を開けようとしたが、いくら開けようとしても変な感じにロックがかかってしまったのか、鍵があかなくなってしまったのである。私がさっきロックの練習したから?鍵、壊してしまった?!

いくら開けようとしても鍵は開かない。窓が少し開いていたのだが、手が届かない高い場所にあるから窓から岩の中に入ることは不可能だ。ドアの前のサビた階段で私たちは焦っていた。

この鍵が開かなかったらアウトである。


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