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娘の親友保護猫みーちゃん 猫エイズキャリアから発症そして天国へ。

もう何年前になるだろう。

暑い夏の日、我が家の軒下に切なそうな猫の鳴き声が聞こえた。

子供たちと猫の声が聞こえるねと言いながら軒下を覗いて見ると痩せ細った一匹の猫。

子猫のように見える。

この日は夏のカンカン照りで、とても喉が渇いているのか、助けてよー!と言わんばかりに

「にゃーーーーーーー!」と強く鳴いて私達に食べ物を要求してるように見えた。

飼う気もないのに餌を与えていいものか悩んだが、流石にほっておけず、水をあげてみた。

ごくごく飲んだ。

お腹も減っているようなので、食パンも少しあげた。

すごい勢いで食いついた。

ご飯を食べ落ち着いたのか軒下の日陰で横たわり眠り始めた。

2時間ほどするといなくなっていたので、どこか行ったのだろうと少し安堵した。

翌朝を迎え、軒下を見ると、また昨日の猫が来ているではないか。

そして、顔を少し怪我している。

他の野良猫にやられたのだろう。


今日も暑い。カンカンでりだ。

私達は、いけないと思いつつ、今度は猫のミルクを買ってきてあげた。

美味しそうに飲んだ。

子供達は飼いたいといった。


野良猫を餌付けしているところを近所のおばさんが見て、

「そんな汚い猫触っちゃダメよ。病気になるよ」

といった後に、自分の飼っている猫の種類と買った時の価格を自慢し始めた。


なぜかカチンときた私は

この子を飼おう。そしてどの猫よりも可愛くしてやるよと心に誓う。

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まず病院に連れて行った。

猫は猫エイズキャリアだった。

【猫エイズとは。】

猫エイズとは正式には猫免疫不全ウイルス感染症

いわゆる猫が免疫不全になる病気である。

【猫エイズキャリアとは。】

猫エイズをまだ発症はしておらず、ウイルスには感染している状態をいう。

そのまま発症せず一生を終える場合もあるが、発症すると口内炎や皮膚炎から始まり、免疫不全によるいろんな病気になる。


病院では猫エイズキャリアだけど、よく考えて飼うかどうかを決めてくださいと言われた。

もう飼うと決めていたので、悩むことなく飼い始め、名前はミーと名付けた。

私が子供の頃に、保護した野良猫もミーという名前でとても賢くて思い出深い飼い猫だったことが名付けの理由だ。

新しい家族となったミーは、ただただおとなしかった。

ご飯さえあげていれば、ただ眠った。そして時々窓ガラスからぼーっと外を眺め、私達人間には警戒心を持っているように見えた。

困ったことに、息子はひどいアレルギー持ちで、猫アレルギーにもひどく反応した。

なるべく素手では触らず、近寄るときは手袋、マスク、ゴーグルをさせた。

(年が経過するうちに、息子は何も付けなくてもミーを触ることができるようになる。)

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ミーを一番可愛がったのは娘だった。

幼稚園から帰るとすぐにミーをおもちゃにした。

ミーもだんだん心を開いていき、あっというまに愛嬌たっぷりの猫になった。

拾った時にいたノミや、蟯虫も治療し、荒れていた皮膚もすっかり良くなった。

ミーはたちまち近所のアイドルとなって、すごく綺麗な猫だねと言われるようになった。

保護猫とは思えないほど賢く、家の柱で爪を研いだりするようなことは一切なく、飯台の上にもあがらず、与えられたもの以外を食べることはなかった。

まるで、拾ってくれたことを感謝してお利口に努めているように感じた。


幼稚園から娘が帰宅すると、音を聞きつけて必ず玄関までお出迎えにきた。

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ミーは娘のままごとにいつも付き合わされ、いつも赤ちゃんか妹役だった。

ぽぽちゃん、メルちゃん、ミーちゃんが娘の遊び相手だった。

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冷蔵庫にミーの缶詰が入れてあり、ご飯の時間になると、冷蔵庫の前に行って「にゃーー」と大きく鳴いてご飯をおねだりした。

私は猫の柄で娘にワンピースを作って着せてあげた。

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【ミーの脱走】

ミーは目を盗んではよく脱走した。

その度に娘は泣きながら探した。

大体は2時間ほどで帰ってくるのに、ある時朝から晩まで帰らない時があった。

娘は玄関先で大泣きで泣いていた。

私は「大丈夫だよ、ミーは家を知ってるから帰ってくるよ」と慰めたが聞かなかった。

私は夕飯を作り始め、家の中から見える、軒下のところで娘はたったまま、ミーを待っていた。

そして、しばらくすると、娘が「ミーー!」と叫んだ

私は急いで窓を開け、娘のいる軒下のところを覗き込むと、娘はミーを抱いていた。

「どこからきた?」と泣きながらミーを抱っこする娘に聞くと

道路の方を指さして、「あっちからミーが走ってきて、私がミーーと叫んだら、ミーもにゃーーー!と叫んで、ジャンプして抱きついてきたの」

といった。

ミーがそんなアクティブなことをするのはとても珍しかった。

ミーも道に迷って、必死で帰らなきゃって思っていたところに、娘の姿が見えて嬉しかったに違いないと思った。


胸が熱くなった。


そんなこんなで

幸せな日々は5年ほど続いた。

もう猫エイズにはならないんじゃないかと思った。

【ミーの異変】

そんなある時、ずっとお利口だったミーが今までしなかった飯台に登ったり、悪戯をするようになった。

そして、しかると牙を向いた。

ミーの様子が最近なんだかおかしい。。


ある時体を撫でていると、しっぽにぶつぶつがあるのを感じた。

皮膚に何か瘡蓋みたいなものがあちこちにできていた。

嫌な予感がした。

翌朝ミーを病院に連れて行った。

【猫エイズ発症】

やはり、ミーは猫エイズを発症していた。

医者は猫エイズを発症しても8年くらい生きる猫もいるし、すぐには死なないといった。

口の中が口内炎だらけになるので痛くて食べれないことも出て来るかもとも言われた。

ミーは猫エイズを発症してから食欲がなくなっていった。

ジャンプもできなくなって、足がフラつくようになった。

そして、意味なく歩いて、壁に頭をくっつけたまま止まったりしていた。

そして夜中に寝ずの看病が続いた最中、ミーはてんかんの発作を起こすようになった。

ミーがてんかんになって、発作が戻った後、自分を襲ってくる得体の知れない何者かと思ったのか、そのてんかんに向かって「フーー!」といった。

猫同士の喧嘩の時に出す声だ。

私はミーがてんかんを起こすたびに怯えたので、「大丈夫だよ、みーちゃん」と声をかけた。


そしてミーは歩けなくなり、自分でトイレにいけなくなった。


それでもミーはトイレに行きたくなると、小さく鳴いた。

「オムツしてるからそこでおしっこしていいんだよ」と声をかけた。

ご飯も最高級の缶詰を飼って口に入れてあげた。

ほとんど食べないが少しだけ舐めてくれた。


ほぼ毎日動物病院に点滴に行き、お金がどんどん飛んだ。

それでも、少しでも楽になればといてもたってもいられなかった。

もう天国に行く時も近い。私達はそう感じていた。

ミーを座布団に寝かせて、家族みんな集まっていた。

すると娘が、「ミー息してない?」

と言うので、確認した。

ミーは娘の言う通り、息をしていなかった。

子供達は泣き出した。

それぞれがミーを抱っこして写真を撮った。

ミーは天国に旅立っていった。

楽しかった五年間。

ミーは猫エイズを発症して約二週間で天国へと旅立っていった。

きっと高額にかかる治療費を気にかけて、自分から天国へ旅立って行ったのだ。

どこまでもお利口なみーちゃん。ありがとね。

【仲良し】鉛筆画

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【旅立ちの時】鉛筆画

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ご静聴ありがとうございました。





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