村上春樹の一冊目に何をすすめるか問題
たぶん、両手では数えられないほどにやったこのやりとり。
(「村上春樹」のところを「江國香織」に置換しても成立します。「森博嗣」の場合には、とにもかくにも「すべてがFになる」を勧めます。「京極夏彦」の場合には、「分厚い本でもへこたれない人ですか?」とまず聞きます。)
こう聞かれると、本当にうれしい!興味もってもらっているんだろうな〜とめっちゃニコッ!となってしまう。とはいえ、いざ勧めるとなると、めっちゃ悩む…。いや、ほんとに。
となったときに、いろいろ考えちゃう。
「え!ちょっと待って、待って!!」って。
「ほんとにあうのかな?」
「ーーーなシーンあるけど、大丈夫かな?」
「長編、短編、超短編、どれがすきなんだろう??」
こっちとしては、せっかく勧めるのだから、好きになってほしいな、いい時間を過ごしてほしいなと思う。
しかも、本にはあう、あわないがある。
その人の読書経験という宝物に傷をつけるわけにはいかない!そんな使命感を勝手にもってしまう。
とはいえ、正確に伝えられたら、若干引く。
うん、そんな人いない。いたら怖い。
かといって、
これでは、ただの重い人だ。あと、質問には質問で返してはいけないと小さい頃に言われた。
プレゼンか!!
ということで、めっちゃ考えた末にフィーリングで答えることが多い。で、だいたい喜んでいただける(社交辞令かもだけど…。)
ありがたい。みんないい人。
ただ、思い返してみると、勧める本はだいたい決まっている気がする…いくつか紹介しますね。
ここからやっと本編〜勧めやすいもの
とはいえ、書評なんて、タイトルでググればたくさん出てくるから、書かない。
短編集ならまずはこれかな…「神の子どもたちはみな踊る」
村上作品を勧めるとき「1995年」という年をまたぐか、またがないかでまず悩む。この年は1月に「阪神淡路大震災」、3月に「地下鉄サリン事件」と、天災、宗教がらみの事件が連続しておきた。そのどちらも、村上作品に影響を与えている。後者は「アンダーグラウンド」「約束された場所で」と、ノンフィクションルポ、そこから「1Q84」などにつながり、前者はこの短編集につながっている。
なので、同い年くらい、もしくは上の人達には、そんな背景を伝えたりもしながら(もちろん、伝えないときもある)、これを渡すときが多い。
背景は同じなのだけれど、書かれ方や、雰囲気がそれぞれに違っていて、2冊めにつながりやすいと思う。
短編集のいいところは、「あう」「あわない」が見えやすいところだ。「どの作品もよかった!」なら、その作家さんの作品を最初から読めばいいだろうし、「ーーはよかったけど、・・はどうも…」みたいな人はそれに合うのを見つけてもらえばいい。読む順番だってかえられる。そんな良さがあるのが短編集である。
中編(一冊完結モノ)は悩む…。自分は「スプートニクの恋人」が好きだけれども…。
無難に勧めるなら「国境の南、太陽の西」なのかな…。「アフターダーク」も好き。というか、一冊完結モノって、この3つかな?もしかして…。あ、「多崎つくる」があった!
「スプートニクの恋人」は書き出しが最高にかっこいい。暗唱できるくらいにかっこいい。「不思議な三角関係」なんて言葉で出版当時は語られている気がするが、たしかにそこにおもしろさがある。途中、疑問符たくさん頭の上に出るところもあるが、全体的に落ち着いたしずかな文体なところが好き。
「国境の南、太陽の西」はね…うーーーーーん、無難。「ねじまき鳥クロニクル」から省かれた章をリライトした作品なので、おもしろいんだけど…なんていうんだろう、なんか好きになれない恋愛の形なんだよなぁ…。ちょっと再読してみる。
「アフターダーク」は、カメラがずっとファミレスでまわっているの。淡々と色んな人の日常が描かれるの。そのおもしろさがあるかな!
ここまででだいたい2,000字。けっこう書いたな。前段が長すぎるんじゃね?と思いながら書いていたが、たぶんそう。今回も約束できない「つづく」でしめよう。
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