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【デュエマ】クソデッキ構築論 番外編 ~限られたプールの中で輝くデッキたち~【2ブロ】

2ブロックはデッキビルダーの至高の舞台だ

 2ブロック、それはスタン落ちという概念が存在しないデュエマにおいて、唯一「カードの収録時期」によって使用可能なカードが制限されるフォーマットである。

 アドバンスで使用可能なカードが10553枚あるのに対し、2ブロックで使えるカードはわずか776枚。(執筆時点現在)
 この枚数差が何をもたらすかと言えば、「環境デッキ」の構造が非常にシンプルになるという点だ。
 その結果、環境はしばしば三すくみの関係に落ち着く。


DM24-RP3環境

 たとえば、<ハッター・ルピア>もいなければ、<飛翔龍 5000VT>も存在しない。
 殿堂入りカードの中で使えるのは、<光牙忍ハヤブサマル>と<瞬閃と疾駆と双撃の決断>に限られる。
 カードプールの狭さとカードパワーの抑制が相まって、デッキ間の相性差を覆すのが難しい、独特な環境を形成するのだ。

 では、そんな環境でどうやって勝率を上げるのか?

 答えはシンプルだ。

 三すくみでグーにもパーにもチョキにも勝てる手を作ればいい。
 いや、そこまで万能でなくとも、グーとパーには勝てて、チョキとはあいこになるような手を組み上げれば十分だ。
 単体のカードパワーが低く、高速な展開も少ない。
 押し付け要素や、相手の受けを完全に否定するようなカードもほとんどない。
 だからこそ、「三すくみの枠組みから自分だけが解き放たれる」デッキを追求する理想が、このフォーマットでは実現しやすい。

 2ブロックは、デッキビルダーの腕が問われるフォーマットだ。
 それはつまり、デッキビルダーの真価が試される場である。

 そう、2ブロックは紛れもなく、デッキビルダーの至高の舞台なのだ。


■4月中旬~4月下旬

 4月に行われた数少ない大会結果を見ると、赤青マジック、青黒(ドロマー)COMP、白単(白黒)メカの3つのデッキがしのぎを削っていた。

 この環境で勝つために必要な条件は以下の3点だった

  1. マジックやメカの成長プランを止められるか。

  2. その成長プランを咎めるために採用されるボンキゴやヴェネラックに屈しないか。

  3. COMP系デッキを止める手段があるか、あるいは盾受けできるか。

 この3点を満たすデッキが勝利に近づくと考えていた――その時までは。

 突如として現れたのが青白ゴスペルだった。

 このデッキは、なんと上記3つの条件をすべてクリアしている。
プレイヤーを直接殴らず、ほとんどクリーチャーも展開しない2ブロックとしては異色のデッキ。
 それゆえに、環境を支配していた青黒COMPを一気に衰退させるほどのインパクトを持っていた。

 青白ゴスペルの登場によって、環境考察は大会1週間前に振り出しに戻った。
 対策を考えなければならないデッキは、赤青マジック白単(白黒)メカ青白ゴスペルの3つに絞られることとなった。
 そして、勝てるデッキの条件も次のように更新された

  1. マジックやメカの成長プランを止められるか。

  2. その成長プランを咎めるために採用されるボンキゴやヴェネラックに屈しないか。

  3. 青白ゴスペルに対抗する手段を持っているか。

 これらを満たすデッキを組むべく、今年度初めて構築したリストがこれだ

 このデッキの核となるのは、<コーボー・マジカルショッカー>と<Kl'avia Mondo>のメクレイド効果を駆使してデッキを掘り進めるギミック。
 最終的には、<♪必殺で つわものどもが 夢の跡>+<♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今>で無限追加ターンを獲得し、<水晶の祈り>を相手に向かって撃ち続けることでライブラリアウトを狙う構築だ。

 このデッキには勝算があった。

  • マジック・メカは盾受けすることができる。

  • ゴスペルは速度で上回る。

  • 一定数残存するであろうCOMPに対してもループ主体の構造ゆえに十分勝てる。

 こうして自信を持って臨んだ初陣が5/11 カードキャット2ブロCSだった。 
 しかし、結果は2-3と振るわなかった。

 敗因はシロフェシー採用メカの台頭
 ゴスペルやマジックへのメタとして<鎧機天 シロフェシー>採用型のメカが現れ、これを対処しきれなかったことが大きな課題となった。

 ちなみに、この大会でデッキシェアした仲間は予選を突破しベスト8に進出している。
 以下のリンクには、自分がシロフェシーに粉砕される様子が記録されている。

 新たな試みは挑戦の連続だ。
 だが、たとえ結果が伴わなくても、それは次への糧になる。
 青単マジックメクレイドは、この敗北を元にさらなる進化の可能性を秘めている。


■5月中旬~6月中旬

 環境は再び変化を見せた。
 青白ゴスペルが天下を取ると見られていた環境は、シロフェシーとサスペンスによって大きく崩れ去った。
 そして、メカCOMPと黒緑ゼニスの2強が台頭する新たな時代が始まったのだ。

 この環境におけるデッキ構築のポイントは次の5点に集約される

  1. <DARK MATERIAL COMPLEX>の高い攻撃性能と<聖カオスマントラ>の受け性能、両方を対策できること。

  2. シロフェシーで詰まないこと。

  3. 4ターン目の<「呪怨」の頂天 サスペンス>で詰まないこと。

  4. <「戦鬼」の頂天 ベートーベン>+<「異形」の頂天 クリス=ゼ=ブブ>の組み合わせで詰まないこと。

  5. 赤青マジックを受け切れること。


 この時期、初めて2ブロックCSの本場であるやわたCSに遠征した。
 この経験が自分にとって良い刺激となり、新たなデッキ構築への道筋を開いてくれた。
 そして生まれたのが、白黒メカCOMP(堕カオスマントラ&h4ch1採用)だった。

 <堕カオスマントラ>と<蜂紙の聖沌 h4ch1>は、ゼニスを対策するカードでありながらも、同時にCOMPに対しても極めて有効なカードである。
 この2枚を搭載したメカCOMPは、メカ、ゼニス、マジックといった主要デッキすべてに有利を取れる自称“最強デッキ”となった。

6/9 第21回笠原書店デュエマCS(2ブロ)

 予選5-0で突破。しかし本戦1没。
 本戦の対戦相手も堕カオスマントラとh4ch1入りのメカコンプだった。

6/15 音速CS in 川崎

 今回も予選5-0で累計10-0、予選勝率100%という驚異的な記録を達成。
 ただ、本戦では事故によって有利な試合を落としてしまい、悔いの残る結果に。

 翌週には新弾が発売。
 最強デッキを完成させたタイミングが遅かったことを悔やんでも仕方ない。
 ただ、このデッキで結果を残せたのは唯一の救いだった。

 デッキビルダーの腕――それが最も顕著に表れるのは、新弾発売直後の環境だ。
 終わりゆく環境に感傷的になる暇などない。
 次の戦いに備えるのみだ。


 ここで少し時系列を先取りして、ひとつ紹介したい出来事がある。

7/21 第142回DM岡山駅前CS(2ブロ)

 この大会で準優勝を果たしたのは声人さん。
 その使用デッキは、なんと1ヶ月前に自分が組んだ白黒メカコンプそのものだった。

 一見すると普通の準優勝報告に過ぎない。
 しかし、自分が「最強」と信じたデッキが別のプレイヤーの手で再び結果を残したと知った時、なんとも言えない感慨が込み上げた。

 あの時のデッキは、確かにまだ戦っていたのだ――。


■6月下旬

 カイザー・オブ・ハイパードラゴンの発売によって、2ブロック環境は再び大きな変化を迎えた。
 この新弾は、以下のような優秀なコントロール向けカードを多数追加した。


 これらの登場により、環境はどう変わったのか?

 メカが環境から消えたことで、立ち位置が良くなったゼニスがトップに浮上。
 そのゼニスに有利を取れるマジックが復権し、ビマナ(ゼニス)VSビート(マジック)という分かりやすい構図が生まれた。

 一方で、新規のコントロール向けカードを大量に採用したドロマーエルボロムという新デッキが姿を現した。

 このデッキの特徴は、STクリーチャーを主軸とした鉄壁の防御力にある。
 2ブロック環境においてSTクリーチャーを防ぐ手段はワスプメリサくらいしかなく、この制約がドロマーエルボロムの強さを際立たせている。

 ドロマーエルボロムは強い。
 そのポテンシャルは間違いなく環境トップクラスであり、ゼニスやマジックといったデッキに対しても十分に渡り合える力を持っている。

 それにもかかわらず、このデッキの入賞数が少ない理由は明白だ。
 このデッキには致命的な課題が存在する。
 それは、火力不足による時間切れだ。
 試合が長引きやすく、制限時間内に決着をつけられないことが多い。
 結果として、ルール上の両敗が頻発し入賞数の低さにつながっているのだ。

 この課題をどう克服するかが、ドロマーエルボロムを環境の頂点へ押し上げるための鍵となる。

 こうして組まれたデッキがこれだ

 時間切れの解決策として新弾で追加されたボルシャックハイパードラゴンを採用した。
 このカードにより、ミラーの時間切れを克服したドロマーエルボロムは、主要デッキと戦えるデッキとなった。

7/14 POWER CS in BOOKOFF SURPER BAZZERショップス市川店

 このデッキを持ち込んだPOWER CSでは、予選3-2で14位オポ落ちという結果に終わった。

 特に印象深かったのは4回戦。
 制限時間ギリギリの死闘の中で、最後に致命的なミスをしてしまった。
 ゼナークの効果を相手ターンの終わりに使い忘れるという失態だ。

 ゼナークは「各」ターンの終わりに墓地から場に出すことができる。
 この効果を忘れていなければ、2体のゼナークを場に揃えた状態で次のターンを迎えられた。
 そうなれば、相手の盤面と手札を全て破壊し、負けない盤面を形成していたはずだ。

 そのミスが結果を左右し敗北。
 その結果14位である。
 帰路に着く3時間の道のりは、いつになく長く感じられた。


■8月初旬

 8月は県内で3度も2ブロCSが開催予定のため、再び環境に適応したデッキを考えた。
 相変わらず黒緑ゼニス、赤青マジック、ドロマーエルボロムの三強が環境の中心だ。

 ふと、千葉遠征で目にしたデッキが頭をよぎった。
 超重竜ゴルファンタジスタの終極宣言で山札を削り、一気につわもの+なぜ離れへ繋げるループデッキだ。
 このデッキは黒緑ゼニスには明確に不利を取るが、他二つのデッキに対しては有利を取れる。
 もし、黒緑ゼニスへの対策をすれば、これは環境最強デッキになり得るのではないだろうか。
 そして、黒緑ゼニスを意識しつつ、ループルートを調整して組み上げたのがこちらだ

8/17 キャット 2ブロCS代替店舗大会

 結果は予選4-0の好成績を収め、最終的に準優勝。
 デッキの手応えとしては非常に良好だった。

 だが、今月末から始まる全国大会2024の店舗予選に向けて気持ちが高まりきらない理由があった。
 発表されたエリア予選の会場が、そのモチベーションを大きく削ぐものだったからだ。


■8月下旬

 全国大会2024の店舗予選が始まったが、やる気は一気に低下してしまった。
 その理由は非常にシンプルである。

 権利を取れば向かうことになる北陸エリアの予選会場は福井県福井市。
・福井へ向かう時には名古屋を経由する
・同じ時間で新宿まで往復できる
 という点から東海エリアや関東エリアの方がアクセスが良いのだがそうもいかない様だ。
 アクセスが良い場所でも大会が開催されている中で北陸エリアに向かわざるを得ない現状は、どうしても気持ちを冷めさせてしまう。
 せめて、エリア戦の参加権利について出場エリアを自由に選択できる仕組みに改善してほしい。
 大会の地域性を守る意義は理解しつつも、この点については参加者の負担軽減のため再考を願いたい。

 なお、筆者の父の実家が石川と福井の県境にあるため、これまで幾度となくこの道を往復してきた。
 旅行としての新鮮さがないことも、やる気の低下につながった可能性は否定できない。


■11月中旬

11/16 北海道エリア予選
 今年最初のエリア予選が北海道で開催された。
 環境は9月以降、大きな変化が見られず、青緑ジャイアント、赤青マジック、ゼニスの三つ巴が続いている。
 参加デッキ分布は以下の通りだっった。

10 水自然ジャイアント
9 火水マジック
9 ゼニス( 7 火自然、 1 光水自然、 1 闇自然)
6 ターボマジック
4 COMPLEX( 2 XENARCH、 1 メカXENARCH、 1 トリガーコントロール)
3 闇自然アビス
4 その他(1 光水自然超化獣、 1 火水闇プレジール、 1 エルボロム、 1 アーマード)

https://dm.takaratomy.co.jp/coverage/area24hk_bd/

優勝:青緑ジャイアント

 予想通りのメタゲームで、大きな波乱はなかった。


11/23 東北エリア予選
 翌週の東北予選では以下のようなデッキ分布となった。

25 水自然ジャイアント
11 闇自然ゼニス
10 火水マジック
7 光水自然ゼニス
5 ターボマジック
4 火自然ゼニス
4 光闇メカ
3以下 13デッキタイプが18人

https://dm.takaratomy.co.jp/coverage/area24th_bd/

優勝:赤青マジック

 ジャイアントが主流であり続ける中、それをメタる黒緑ゼニスが増加。
 その黒緑ゼニスをさらにメタる赤青マジックが優勝を収めるという構図は、非常に理にかなった結果である。

 さて、北陸予選に向けての環境予測だが、この2週の結果を踏まえ、以下のポイントが挙げられる。

  1. 黒緑ゼニスの増加に伴い、赤青マジックもさらに増加する可能性が高い。

  2. 赤青マジックの増加を受け、マジックに強い青緑ジャイアントも増えると予測される。

  3. 新たに登場したトリーヴァゼニスにも注意が必要。ジャイアントやマジックに強いこのデッキは、黒緑ゼニスが減った環境では無類の強さを発揮する。

 これらを踏まえて組んだデッキが以下だ。

 トリーヴァゴスペルは、トリーヴァゼニスよりも青緑ジャイアントと赤青マジックに対して強い立ち位置を確保している。
 また、黒緑ゼニス相手も微不利程度にとどまり、初見殺しの要素を含めれば5割程度の勝率が見込めるデッキだ。

12/1北陸エリア予選

 さて、北陸予選のデッキ分布は以下の通りだ。

12 【火水マジック】
11 【水自然ジャイアント】
6 【ターボマジック】
5 【光水自然ゼニス】
4 【光闇メカCOMPLEX】
3 【光水闇COMPLEX】
3 【闇自然ゼニス】
12 その他(母数2以下)

https://dm.takaratomy.co.jp/coverage/area24hr_bd/

 この分布、環境予測と狂いなく一致しており、まさに完璧な読みだった。

 そして優勝は…











赤青マジック


 筆者自身はこの北陸予選に参加せず、代わりにトリーヴァゴスペルを持ち込んでもらった。
 しかし、結果は以下の通りだった。

1戦目:ドロマーCOMPにHアルカディアスを複数回出され負け。
2戦目:母数3の黒緑ゼニスとマッチングし、負け。

 結果として、予測通りの環境でありながら、デッキが活かされなかったのは無念である。
 対面運の悪さを呪うほかない。

 これは、世に出回らなかったデッキの供養記事である。
 トリーヴァゴスペルがこの場では日の目を見ることがなかったが、誰かがその遺志を引き継でくれることを切に願うばかりだ。





※記事についての補足
 本記事では、環境考察とデッキ構築過程をメインに取り上げているため、個別のデッキリストや詳細な動きの解説には触れていない。
 気になるデッキがあれば、ぜひX(旧Twitter)で質問してほしい。
 喜んで解説する用意がある。

九澄(@Akizukidm)



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