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改訂版絵画語彙発達検査(PVT-R)と見るべきポイント

 今回は小児系の言語聴覚士(ST)が、よく使う検査についてご紹介します。また検査を行う上で大切なことも解説します。

改訂版絵画語彙発達検査(PVT-R)

 検査自体はとても簡単で、STが口頭(単語)で問題を出して、4枚の絵の中から、お子さんに正解を選んでもらうという、いたってシンプルな検査になります。
時間としても15分くらいで終わるので、中にはスクリーニング検査として行うSTもいるでしょう。

 検査を行うにあたって、心理検査使用者レベルというものが設定されています。
心理検査は十分な知識と技術がないと、ただお子さんに負担をかけてしまうだけで、無意味な事になってしまうので、しっかり基礎を固めましょう。というものです。

日本文化科学社https://www.nichibun.co.jp/level/

ここでは、PVT-RはレベルBとなっています。
レベルAの基準を満たし、かつ大学院修士課程で心理検査に関する実践実習を履修した方、または心理検査の実施方法や倫理的利用について同等の教育・研修を受けている方。

 やり方としては、とてもシンプルな検査なのですが、意外と内容については、深く勉強しておかないといけないんですね。

 導入として、初めに簡単な問題でやり方を確認。
そこから、実際のお子さんの年齢に応じた開始問題から始めます。やり方について分かった上で、出題問題を見てみましょう。

語彙について

検査の名前の通り、『語彙』と聞くと、名詞を思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか?
語彙をWikipediaで調べてみると、このように書いてあります。

一般に、「目」「手」「足」などの身体語、「父」「母」「娘」などの親族語、食べ物、動物、気象などに関する身近な名詞、ごく基本的な動詞や形容詞、数詞などが基礎語彙として扱われる。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/語彙

 タマゴやスイッチなどの名詞だけでなく、走るや押す、敬う、短い、少しなども語彙に含まれます。
つまり、私たちが単語で表現できるものは、全て語彙なんですね。それを踏まえて、改めて検査の内容を見てみます。

 名詞や動詞はもちろんの事、シャツの絵を見せて、『ボタン』と尋ねる関連語や、バイクを見せて『乗り物』と尋ねる上位(下位)概念、抽象的な表現語彙も含まれます。

検査のポイント

 もちろん、問題はやっているうちに、どんどん難しくなっていきます。
実はここからが大切なんです。
 難しい問題になった時に、検査を受けているお子さんが、どのように悩んで、どのように表現するか、またどのように振り返るか、ここが大切なんですね。

 私たちが難しい課題に直面すると、分からないなりに、一生懸命悩みます。悩んだ挙句に『これかな?』と答えを出します。
 しかし、一部のお子さんは、難しい問題になると、当てずっぽうで絵を指差したり、間違えてても今までと同じスピードで、絵を指差したりします。
また自分が選択した回答が合っているのか、間違っているか、STの表情や動作を見ることもありません。

 最終的には、語彙年齢や成長の程度を、数字として出します。
例えば実年齢4歳1ヶ月に対して、語彙年齢3歳2ヶ月、成長の程度は『少し遅れている』といったように、数字として成長の程度を表します。

 もちろん、保護者からしたら、どの程度成長しているのか、数字として見たいですよね。前回の結果と比較して、語彙年齢が上がってて欲しいものです。しかし、そんな数字も大切なのですが、取り組む姿勢はもっと大切です。

 なぜならば、取り組む姿勢というのは、検査だけに限らず、生活場面全てにおいて応用がきくからです。
検査で出てきた数字は、その検査の15分間の結果しか表しませんが、頑張る姿勢は言葉を獲得する下支えになり、チャレンジ精神を増やし、自分をコントロールする力になります。その結果、言葉の増加につながりやすくなります。

 支援者として、結果の数字は参考程度に、取り組む姿勢を評価したいものです。そして、日常のどんな場面にも全力で取り組めるような姿勢をはぐくめるように、支援を行っていきたいですね。

さて、今回はPVT-Rについて解説しました。
心理検査はついつい結果に目がいきがちですが、その背景にある基礎知識や、結果の解釈、その過程も十分大切なんですね。

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