【支援技法】コミック会話の方法
この記事は、会話の中の他者の考えや思考、感情を視覚的に分かりやすくする事で、発達に特性を持つお子さんが、適切な行動を取れるようになる手段について書いています。
私たちは話している時、以前、記事にしたような会話の原則にしたがって話をしていますが、同じ言葉でも、会話の状況によっては意味が大きく変わる事があります。
『今、何時?』
夕方、買い物を予定している人が、『今、何時?』と聞いている人に尋ねると、時間を尋ねているのが分かります。しかし、話している人がとても忙しく、慌てていて、聞いている人がのんびりな状況で、『今、何時?』と尋ねると、聞いている人に『急いで!』っていう意味になります。
発達に特性をお持ちのお子さんの場合、上のように同じ言葉でも、状況に合わせた理解ができず、文字通りにしか言葉の意味が理解できない事があります。そんな場合、これを試してください。
コミック会話
会話の内容を、絵と文字で表現して、視覚的に会話の流れをわかりやすくしたものです。特性のあるお子さんのコミュニケーションの練習として使われることがあります。「視覚的支援」の理論をもとにしており、 効率よくコミュニケーションについて学ぶことができます。
準備するもの
紙、鉛筆、色鉛筆
やり方
①『話す人』と『聞く人』の絵を描きましょう。
②『話す人』は何と言ったか、言葉の吹き出しに書きます。
③言葉の吹き出しの後に、どんな事を考えているか、考えの吹き出しに書きます。また考えている事を、色で表現し、感情に合わせて塗りましょう。話す人がどんな気持ちで話したか見て分かりやすくなります。
ここで一度、『話す人』の気持ちをお子さんと一緒に確認しましょう。
この話す人は、『今、何時?』(言葉)って言っているけど、本当は焦っていて(気持ち)、聞いている人に『急いで欲しい』(考え)って思ってるんだね。急いで欲しいって事を、こんな伝え方をすることもあるんだよ。
次は『聞く人』の絵にうつります。
『聞く人』の隣に、考えの吹き出しを描きます。
ここで『話す人』の考えの吹き出しに、共感を示すような考えを入れてます。お子さんと一緒に考えましょう。
話す人が『急いで欲しい』って思ってたら、○○ちゃんなら何て言う?お母さんなら、『すぐ準備するね』っていうかなぁ。○○ちゃん、どぉ?
このように、会話の中にある言葉だけに注目させるのではなく、会話には言葉と感情(表情)、考えがあることに気づいてもらいます。また、返し方は1つではなく、いくつもあって良いでしょう。
上の例で言うと、「すぐ準備するね」だけでなく、「ちょっと待って」「ゆっくりしてて、ごめんね」と言った返しもできます。同じ場面でも、どんな表現をするのかは、話す人と聞く人の状況によって変わってきますので、練習として、いくつも出してみると良いでしょう。
ただし、1つの場面で、複数の返し方ができるようになりますが、違う場面になると、新たに学習が必要になります。困った場面を1つ1つ見つけ出し、対応していく根気強さが必要です。
また、感情は大きく分けると、ポジティブな感情、ネガティブな感情となりますが、細かく分けると基本感情と応用感情とに分かれます。特性をお持ちのお子さんの場合、感情を細かく把握することが難しい場合もあります。感情の塗り分けは、お子さんの分かる感情で伝えると良いでしょう。
まとめ
人の考えや思考、感情というモノは、言葉や表情を通じて、他の人に伝えられます。コミック会話は、そんな目には見えにくいモノを、見える形にして、特性をお持ちの方でも分かりやすくします。わかる事で、気持ちが落ち着いたり、次の対処法が思いついたりできます。ソーシャルスキルトレーニングとして活用してみてはいかがでしょうか。
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