とりあえず検査って大丈夫なんです...よね?
社会生活能力とは
日常生活に困難さを抱えたお子さんの、社会生活能力の評価の1つに『S-M社会生活能力検査』があります。
子どもの事を良く知っている大人が、予め決められた検査項目に〇か✖で答えていくものですね。評価は、身辺自立、移動、作業、意思交換、集団参加、自己統制の6グループから作られていて、それぞれの社会生活年齢と指数が出ます。
この検査では、『社会生活能力』を次のように決めています。
障がいをもった様々なお子さんに適応ができる検査ではありますが、一部お子さんに対して、そのまま使うのが難しい場合があります。
S-M社会生活能力検査の歴史
S-M社会生活能力検査の原版は、海外のVineland Social Maturity Scale(VSMS)という検査がもととなっており、その検査も改訂され、Vineland Adaptive Behavior Scale(VABS)となっています。
現在のS-M社会生活能力検査は、当時のVSMSを踏襲しており、6つの評価項目(身辺自立、移動、作業、意思交換、集団参加、自己統制)から、1つの社会生活能力を導き出すという、『1因子モデル』となっていますが、統計学的に不十分と言われています。
1因子モデルと2因子モデル
特に、知的発達症児に対してS-M検査を行い、社会生活能力(指数)を出すことに注意が必要なようです。
軽度~中等度知的発達症のお子さんには、これまで通りS-M検査を用いて評価することが可能ですが、重度の知的発達症のお子さんのには、検査を実施しても、社会生活能力を十分に把握できないことがあります。
通常であれば、6つの検査項目はそれぞれ相関しており、身辺自立が高いお子さんは、意思交換も高くなるようになっています。
しかし、知的発達症が重度になるにつれて、項目間の相関は小さくなってきて、生活能力(身辺自立、移動、作業)と社会性(意思交換、集団参加、自己統制)の2つのカテゴリーにわかれる結果となります。
そこで、身辺自立、移動、作業といった『生活能力因子』と、意思交換、集団参加、自己統制といった『社会性因子』の2因子で、社会生活能力を評価することが重要です。
ただし、知的発達症のないお子さんに関しては、これまで通り1因子モデルでの解釈でも十分に可能です。
まとめ
統計学的にデータが一定数取られており、一般に販売される検査になると、私たちは無条件で誰にでも利用したくなります。
実際は、検査するために十分な条件があり、検査を実施した後にも必ず解釈が必要になります。
今回のS-M社会生活能力検査についても、お子さんの知的能力に応じて、検査結果の解釈を柔軟に変えていかなければいけないのでしょう。
自戒も込めて、心理統計の知識も身に着けておかなければいけないですね。
引用・参考文献
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