リメイク作品:蜘蛛の巣
むし暑い夏の日、鳴り止まぬアラームの音で目を覚ました。
「やられた」
男は時計を見て呟いた。
時刻は8:20をさしている。
男はため息混じりに立ち上がりスーツに着替え始めた。
1時間遅めの出勤の支度だ。
「どうせ遅れるんだ、ゆっくり行こう」
支度を終えた男は鍵をかけて会社に向かって歩き出した。
その途中に蜘蛛の巣が視界に入った。
よく見ると珍しい金色(コンジキ)の蝶が引っかかっている。
「とんだ馬鹿野郎だな、どこ見て飛んでたんだ。俺が蝶だったらそんなヘマはしねぇな」
男は鼻で笑った。
金色の蝶はこころなしか男の言葉を理解し
怒っているように見えた。
「おっとこんな所で道草をくっていたら怒られてしまう」
男がそう言うや否や電話がかかってきた。
「会社からか...」
内容は予想通りだった。
流石に男も焦ったのか走り出す。
スクランブル交差点に差し掛かった
通行人をかき分け信号も見ずにただただ目的地の会社を目指す。
だが交差点を渡ったのは男だけだった
スクランブル交差点の真ん中でようやく
男は信号を見た。
赤く光っていた。
「やられた」
男は交差点という蜘蛛の巣にひっかかってしまったのだ。
次に男が気づいた時には、仰向けで
真夏にも関わらず下半身から上半身にかけて急に体が冷え始めた。
朦朧とする意識の中、さっきの蜘蛛の巣に引っかかっていた金色の蝶の姿が見えた。
『とんだ馬鹿野郎だな、どこ見て走ってたんだ。俺が人間だったらそんなヘマはしねぇな』
どこからともなくそんな言葉が聞こえた。。