ながめをなにに
春のうららの 隅田川
のぼりくだりの 船人が
櫂(かい)のしづくも 花と散る
ながめを何に たとふべき
見ずやあけぼの 露(つゆ)浴びて
われにもの言ふ 桜木(さくらぎ)を
見ずや夕ぐれ 手をのべて
われさしまねく 青柳(あおやぎ)を
錦おりなす 長堤(ちょうてい)に
くるればのぼる おぼろ月
げに一刻も 千金の
ながめを何に たとふべき
「花」作詞武島羽衣 作曲滝廉太郎
美しい歌。のびやかに楽しく春の情景を歌い上げている。
ぜひ歌として曲として聴いてみてほしい。曲の美しさが詩と相まって目の前に浮かんでくるようだ。
私は特に二番が好きだ。「われ」に声をかけ、招いてくれる花と緑。
春そのものの色がそこにあるように思う。主菓子と呼ばれる練り餡を使った芸術とも言える和菓子は、日本の四季折々にその色を写し取って表現してくれるが、春のこの季節、この薄桃と薄緑を用いた作品が多いように思う。目にも美しく、美味しい。ぜひ薄茶で頂きたい。
子供のころ『長堤』を「朝廷」かと思い、首をかしげたことも今はいい思い出だ。日本語はこういった所が難しく、面白い。
少しずつ木々の緑の色が変わってきた。枝ばかりだった桜に丸い蕾が膨らみようやく咲き始めてきた。
今年の花は遅いようだ。その分期待が大きくなってくる。
さあ、花の下を歩いてみよう。