【AWEU21】MadTech!~収れんが進むマーテクとアドテク
こんにちは。「マーテクとアドテクの収れんと両者のつなげ方(The convergence of martech and adtech and how to connect them)」にご参加頂きありがとうございます。AcxiomのEMEA地域のStrategic GrowthディレクターLisa Andreouです。本日のモデレーターを務めます。Jill、Dean、Davidがパネルとして参加します。私が会場にいたら、皆さんの経歴をお伝えしたいところですが、今日はバーチャルですので、皆さんに自己紹介頂けると助かります。レディーファーストでJillさんから頂けますか?
Sitecore)皆さんこんにちは。お招き頂きありがとうございます。本日のパネルを楽しみにしています。Sitecoreのプロダクトマーケティングディレクター。当社はデジタル・エクスペリエンス・プラットフォームで、ブランドが顧客と人間的なつながりを持てる様サポートします。今日のテーマについてお話しできることを楽しみにしています。
David)David Keensです。AcxiomのEMEAの製品担当副社長です。私の役割は、マーテクとアドテクの融合を理解し、チームが提供する製品サービスやその他サービスが、お客様をどの様に補完し、強化されていくか理解することです。
Dean) Dean Landsmanです。MullenLowe Preferoでデータ部門の責任者をしています。私の仕事には2つの部分があります。第一に、データを活用、クライアントやクライアントの顧客に何をもたらせるのか、製品や技術の開発をリードしています。
また、NHSやハーレーダビッドソンなど国際的に展開している多くのクライアントをサポートする役割も担っています。
今回のトピックに入る前に、業界に影響を与えるトレンドを見てみたいと思います。市場トレンドには、Convergence(収れん)、Complexity(複雑さ)、Change(変化)という3つ分野があります。
組織的にも、技術的にも、データ的にも、マーテクとアドテクが融合しています。Acxiomの全ての顧客にみられます。もはや、マーケチームやテックチームだけでなく、アドテクチームやメディアチームとも連携しています。この様なことが起こるのは、消費者がブランドのあらゆるタッチポイントで一貫した体験を求めているからです。もし、マーテクがある決定を下し、アドテクが別の決定を下したら、期待する様な素晴らしい体験は提供できません。測定もできないでしょう。
次は複雑さについて。私たちは皆消費者なので、このことを知っています。デバイス数が増えることで、信号が指数関数的に増加します。平均的な人は、家庭で9台のデバイスにアクセスしています。データ処理に関する統計を読みました。データ機器は2年で倍増、今後も速いペースで成長していくと思われます。プラットフォームの爆発的な増加もあります。エコシステムでは、様々な新しいテクノロジーが登場しています。2020年には、マーテクは14%成長、約8,000のソリューションが登場すると予想されています。また、マーテク・ランドスケープへの新規参入は24%増加しています。つまり、今年のマーテク・ソリューションの5つに1つは、昨年は存在していなかったことになります。即ち顧客へのシームレスな体験で課題解決するものは何か、どのテクノロジーが適しているかについては、マーケターにとってまさに地雷原なのです。
さらに、GDPRやCCPAなど、世界中で起きている個人情報保護に関する法律の変更など、誰もが気になっている話題もあります。Appleや最近はGoogleが、2022年までにブラウザでのサードパーティークッキーやトラッキングを中止すると発表しました。そこで、今回のパネルディスカッションでは、これらをテーマにしてみたいと思います。
DavidとJillに、各領域でこの1年、どんな変化があったか聞いてみたいと思います。では、Jillさんから。
Sitecore)ご存知の様に、ここ12~15ヵ月の間に全てが劇的に変化しました。対面での交流がなくなり、デジタルファーストの世界に移行しました。私たちの領域では、DXの加速を目の当たりにしています。企業は、自社のマーテク・スタックを見直し、どうすれば顧客体験を向上させ、オンライン取引を支援できるか理解しようとしています。直接会って話をしたり、取引をしたりできない場合、疑問に思ったとしても、そのような体験をデジタルで再現する必要があります。これは大きな課題です。
もう一つは、今日のテーマに連関すると思いますが、顧客データに焦点を当てることです。タッチポイントが増えれば増えるほど、得られるファーストパーティデータ(デジタルの手掛かり)も増えます。そして、組織は、顧客体験が摩擦のない(フリクションレス)ものであることを確認する必要があります。企業にとしては、顧客がカスタマージャーニーを確実に歩んでいける様に、360°把握という意味で、包括的な顧客プロファイルを持つことが重要です。
Acxiom)Jillと同じだと思います。ユニークな状況が重なって起こったと思います。MullenLoweや他のIPGの代理店の調査によると、英国のEC行動は、取引件数の増加という点で5年前より早まったそうです。タイムマシンのように、私たちを未来へとシフトさせる瞬間だと思います。
テクノロジーの視点では、マーテク領域で継続的に爆発的な成長を遂げているため、マーケターや広告主は、常にテクノロジー導入の先頭に立ってきました。ですから、この1年は、企業がどの様に対処していくかという点で、まさに変化の瞬間だったと思います。もう1つはプライバシー保護の変化ですが、これはGoogleやAppleが発表した、プライバシーや行動追跡に対する対応と関係があります。アルゴリズムで意思決定を行うAIや、機械学習に関する報道とも関係します。
消費者の視点では、これはどの様にコントロールされているのでしょうか?この1年、パンデミックや、消費者のデジタルプラットフォーム導入など、かつてない変化が起きたことで、この2つの力が結集したと思います。一方、データはどう使われている?どう規制されている?ブランドは何をしている?その一部が商業的に利用されているのではないか?といった懸念もあります。
GoogleやAppleが追跡防止のために行ったプライバシー保護という側面もありますが、Appleのマーケティングから、データを、製品やサービスの差別化要因としてどう利用しているか知る必要があります。つまり、プライバシーだけではなく、データ・プライバシーが消費者にどう影響しているか、商業的な側面が重要なのです。
Sitecore)Davidさん、素晴らしい指摘だと思います。なぜなら、それはある種の調整だからです。AppleやGoogleがプライバシーに関する行動を起こしていることは明らかですが、同時に、パーソナライズに関する消費者の要望に応えようともしていますよね?
74%の消費者は、データを提供することで、パーソナライズされた情報やオファーを受け取ることに抵抗がないと答えています。つまり、消費者のプライバシーを尊重しつつ、パーソナライズされた体験を提供するために情報を収集することは、バランスが必要なのです。
私たちがこの様な会話を通じ、今後の方向性を見極めるのは、実に興味深いことです。
Acxiom)同僚が、かつて「パーソナライゼーション・パラドックス」と呼んでいました。これは、データや情報を共有したくないという欲求と、ブランドからパーソナライズされた体験を得たいという欲求とのバランスを意味します。保険料請求のためにコールセンターへ出向いたとき、同じ事を何度も繰り説明しなければならないことに、誰もがイライラしたことがあります。「もう3回も言ってるよ」ってね。
私が言いたかったのは、如何にそのバランスを取るかということです。そして、そのバランスが一方向に崩れている瞬間があるのではないでしょうか。消費者によって、業種によって違うかもしれません。健康データと小売店での好みでは、データ共有について私たちだって違う態度をとりますよね。一概に言えないと思います。非常に複雑な状況です。
もう1つは、ご存知か分かりませんが、この5ヶ月間に起こったことは、テクノロジーの民主化が進んでいるということです。
ノーコードやローコード技術が数多く存在しています。5年前には技術的なスキルセットが必要でした。マーケティングや広告の分野では、ストーリーテリングのような、別の専門性を持った人たちが遥かに増えています。
AIやMRの領域でも、高度な数学的手法が段階的に導入、より身近なものになっています。統合プラットフォームといって、APIを通じた技術統合ができるようになりました。5年前は、多くの手作業が必要だったでしょう。
この様な変化は、パンデミックに限らず、プライバシー保護にも連関していると思います。それは、現在も進んでいると思います。
Jillさんは、ローコードやノーコードの技術にも変化を感じているようですね。また、ビジネスや投資の観点から、ある種のダイナミクスの変化は見られますか? それはどの様なものでしょうか?
Sitecore)Davidさんが素晴らしい指摘をしてくれました。Lisaも、ダイナミクスの変化について指摘しています。何故なら、消費者の期待は常に変化しているからです。ブランドの顧客体験は、消費者がブランドとどう接したかだけでなく、顧客体験の全てによって形成されます。つまり、期待値は常に変化しています。また、ノーコード、ローコード、そしてマーケターが技術的な関与なしに実行できるケーパビリティへのニーズも高まっています。つまり、このニーズは非常に高まっています。この傾向は今後も続くと思います。
とは言え、オペレーションの観点から見ると、マーケターはオペレーション実行という点ではITとは少し離れたところで仕事をしていますが、両者の連携は進んでいると思います。
また、DXやマーテック投資に関しては、CIOがより重要な役割を担うようになっています。
CIOの役割がシフトしているのも見て取れます。初期は、CIOが全ての予算を握っていて、それがマーケターに移っていきました。現在では、CIOとCMOが連携してチームをまとめ、顧客体験を共有、アドテク、コンテンツ、顧客体験、モバイルアプリ、デリバリーなど、全ての要素をひとつの顧客体験の傘下に収め、マーケティングとITが収れんするようになってきています。
そのため、マーテク投資の観点からだけでなく、運用の観点からも、パートナーシップやチーム間の連携強化について、変化が起きていると思います。
Dean、あなたはMullenLowe Proferoで、デジタルでシームレスな顧客体験を実現するために、テクノロジーとデータに命を吹き込んでいます。
状況がどの様に変化したか教えてください。また、CXの世界でブランドにもたらされている機会についても。
MullenLowe Profero)そうですね、何が変わったかを考える前に、何が変わっていないかを考えてみるのも面白いかもしれません。
私は、自分自身の再認識に価値があると考えていますが、その中心にあるのは顧客です。いいですか? 顧客は、今も素晴らしいパーソナルサービスを求めています。個人的なニーズに応えてくれることを期待しています。満足できなければ、他店で買い物をします。
何が変わったかというと、それは買い物の方法であり、ここ数年で明らかに飛躍的に成長しているアマゾン・プライムは代表格と言えるでしょう。彼らは、「すぐ手に入る喜び(Instant Gratification)」の真の意味を教えてくれました。
マーケターとして、私たちのツールは変わりました。より賢い技術やより優れた技術を手に入れました。チャネルを問わず、顧客とのつながりを深めるのに役立つ、優れたデータを手に入れました。そして、顧客が誰でどの様に買い物するのか、より多くのデータにアクセスできるようになりました。しかし、問題はどのクライアントも同じ技術を持っているということ。殆どのクライアントは同じデータにアクセスできる。これは、私たちの抱える「同じものの海」というユビキタスな問題です。チャンスは、どうすればお客様に最適なサービスを提供できるかという点にあります。これらのことを知り、顧客を理解、適切なデータを収集することを考えるのです。
そして、個人のモチベーションを理解し、顧客を統合する優れた技術を持つことです。我々はそれについて話せますし、それは素晴らしいものです。但し本当に重要なのは、そうした信号の組み合わせにどう対応するか考え、ターゲティングやカスタマーエクスペリエンスに応用することです。そして最後に、コンテンツ投資を倍増させること。コンテンツがなければ、この様なものは何の役にも立ちません。リッチなコンテンツだけを意味するものではありません。短尺コンテンツやシンプルなコンテンツでも、素晴らしい体験を提供することは可能です。
David、顧客から常に聞かれる質問は、「クッキーのない未来、獲得はどの様に行うのか?」というものです。多くの広告主は、DMPに多額の投資をしている。そして、そのソリューションでは、将来、獲得のユースケースを解決できないという状況がある。
では、ブランドは何に注力すべきですか? また、将来に向けてアドテクやマーテクをどのように整備していくべきですか?
Acxiom)この質問は嬉しいですね。サードパーティークッキーとブラウザの変化、そしてクッキーがどの様に使用されているかという課題があります。
しかし、議論はかなり偏ったものです。人々は、課題解決のための魔法の杖を探しています。そして、殆どのブランドにとって、それは存在しないと思われます。今は、ブランドの抱える顧客獲得の課題にどの様にアプローチすべきか、見直しの時期だと思います。そして、マーテクとアドテクのエコシステムの中で、どの様な技術が価値を高めることができるのか、検討する必要があります。
顧客獲得のためにブランドのエコシステムをどうするのかという点では、サイコロを振っている様なものです。重要な1つの点は、顧客データプラットフォーム(CDP)とデータ管理プラットフォーム(DMP)が並んで存在し、共に価値を提供できることです。また、どの様な広告やマーケティングを行いたいかによって、まだDMPを導入していない場合は、DMPではなくCDPを単独で利用することもできますし、その逆も可能です。
ブランドによっては、サードパーティクッキーがなくても、DMPでの作業を継続、これまで同様に作業することが、現実的な選択肢になるかもしれません。特にFacebookやGoogleのようなプラットフォームのウォールドガーデンで作業している場合です。その様な広告プラットフォームのウォール(壁)内の作業は、パフォーマンスやフリコンなど、複雑な問題が発生します。サードパーティークッキーを使わない場合、さらに複雑になりますが、それはまだ可能です。
このモノローグで、判断の複雑さの一端を分かって頂ければ幸いです。テクノロジーと消費者体験をどの様に組み合わせるか、AcxiomやSitecoreなどのテクノロジー・パートナー、MullenLoweなどの代理店パートナーが役に立つのは、まさにこのポイントだと思います。
Sitecore)CDPとDMPの位置づけという点で、Davidさんは素晴らしい指摘をされていますね。先程仰っていた、コールセンターに電話して何度も繰り返さなければならないという話に戻ります。 明らかに、私たちは 「クッキーのない未来」という観点で新領域に入っていますが、「獲得」はジャーニーの一部に過ぎないという事実を見失わないようにすることが大切です。技術スタックが消費者や見込み客の獲得を支援できることは重要ですが、ジャーニーのそれ以外の部分にもフォーカスすることも重要です。
CDPは、顧客データがクリーンで実用的であることを確認するという点で、重要な役割を果たします。なぜなら、顧客獲得は幾らでも可能ですが、取引やゴールまでナーチャリングできなかったり、顧客を支援しないと、競合に流れてしまう可能性が出てくるからです。
つまり繋がりです。DMPとCDPの接続、きれいな顧客プロファイルを持つことで、顧客がどこから来てどこへ行くのかを理解、共感を示しロイヤルティを醸成する顧客をナーチャリングできるのです。これは重要です。カスタマージャーニー全体を見てブランドを理解すると、「クッキーのない未来」にアジャストできますが、それは常に変化するこの領域の変遷と同様です。しかし、ユーザーが何を必要としているのかに集中することは、この会話の上で重要です。
そろそろ時間になりました。 最後に、マーケターや広告主が考えるべき、マーテクとアドテクの融合、そしてそれらをどのように結びつけるかとについて、重要なポイントやアクションを1つご紹介頂ければ幸いです。
Sitecore)一番言いたいことは、この領域では変化が起きており、マーテクとアドテクの融合が進んでいるということ。
2つの角度から考えてみます。1つ目は、マーケターや広告主が、自分達にとって不快なことに慣れることです。これこそが、ブランドが本当に輝き始めるときであり、競合との差別化ができるときでもある。そして解決していくのです。そうやって進歩していくんですね。そこでイノベーションが起こるのです。それが第一の要素だと思います。
それから、お客さまを見失わないようにすることです。最終的に私たちがやろうとしているのは、獲得であれ、維持であれ、育成であれ、自分達のタスク達成を助けることです。ペルソナ調査、カスタマージャーニー、ファーストパーティデータなど、手持ちのデータを駆使、顧客が誰であるかをできる限り理解することです。そして、そのお客様に向けてマーケティングを行う。ブランドを押し出すだけではなく、お客様が必要としていることの達成を手伝うのです。そして、エンドユーザーが誰なのか、何をしようとしているのかに集中するのです。
Acxiom)私にとって、一つ重要なことは、価値ある消費者体験において人間性を忘れないことです。 曖昧な空間を見つけ、素早く入っていくことも重要だと思います。何故なら、テクノロジーが進化し、マーテクとアドテクが収れんすれば、これまで考えもしなかったような機会が生まれるからです。そして、そのような機会に対応できる、機敏なブランドが差別化に繋がるでしょう。Jillが言ったように、その際に人間的な顧客体験を見失ってはいけません。
MullenLowe Profero)ブランドや代理店として、顧客としてどの様に扱われたいかを常に考え、本当に好きなブランドについて考え、本当に望んでいることに耳を傾け、真の共感と理解を示すことができれば、勝ち組になれるでしょう。
そうすることで、直接的な販売に拘らず、アドテクやマーテクが与える力を最大限に発揮したくなると思います。アドテクやマーテクは、リタゲで販売を促進しますが、お客様の立場に立って考えると、無理をするとお客様が離れてしまいます。 ソリューションの核心とは、データとテクノロジーを活用、お客様一人ひとりに光を当て、誰であるかを理解、正しく、リッチな、ファーストパーティデータを収集することです。そこにリッチなサードパーティデータを重ね合わせ、顧客が期待する体験を構築するのです。
皆さん得るものがあったと思います。
人間的な体験を考えることが重要です。売る、売る、売る!だけではなく、顧客の人間的な側面をよく考えることが重要です。
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