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名目GDP実額、史上初めて の600 兆円超え。11 四半期ぶりにプラスに転じた実質雇用者報酬・前年同期比。4~6月期GDP統計での好結果発表を待たずに、前日に退陣会見した、岸田首相のタイミングの悪さ(?)。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2024年8月15日)―

実質GDP成長率は民需しっかりで前期比年率+3.1%と、2四半期ぶりのプラス。実質個人消費は前期比+1.0%と5四半期ぶりプラス、実質設備投資は前期比+0.9%と2四半期ぶりプラス。

 24 年4~6月期 GDP速報・第1次速報値が8月 15 日に公表された。実質GDP成長率は前期比+0.8%、前期比年率+3.1%と、2四半期ぶりのプラスとなりました。また、名目GDP成長率も前期比+1.8%、前期比年率+7.4%と、2四半期ぶりのプラスとなりました。
 
 4~6月期の名目GDP・実額は年率 607.9 兆円と、史上初の600 兆円超えとなりました。91年10~12月期に500.2兆円と名目GDPが 500 兆円を超えてから、32年半かかり600 兆円の節目を超えたことになります。

11 四半期ぶりにプラスに転じた実質雇用者報酬 ・前年同期比。4~6月期は+0.8%。

 実質雇用者報酬 ・前年同期比は+0.8%と11 四半期ぶりにプラスに転じました。33 年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げに加え、夏のボーナスが堅調であったことがプラスに働きました。

経済に関する発表のタイミングが、最後まで残念だった岸田首相。

 岸田首相の経済対策は内容が良くても発表のタイミングが悪かったことと思われることが多々ありました。例えば、6月21日の首相会見で、消費者物価指数・前年同月比の月平均0.5%以上の押し下げを求め、酷暑乗り切り緊急支援策として「電気ガス価格変動緩和対策事業」を8〜10月に復活実施、ガソリン補助金も年内に限り続けることを指示したことです。
 
 今年の夏はラニーニャ現象発生が予想され猛暑が見込まれていたのにもかかわらず、電気・ガス代の補助金は延長しないことに一旦はなっていたのです。「電気ガス価格変動緩和対策事業」は6月支払い分で半分がなくなり、7月からは完全になくなりました。これに伴い、消費者物価は0.48%押し上げられることになりました。岸田首相は実質賃金プラス化のハードルを自ら上げていました。6月21日の会見で、慌てて緊急支援策を復活させた感じがしました。
 
 なお結果的には、実質賃金はボーナスの伸び率が高かったことで、6月に前期同月比+1.1%と27カ月ぶりにプラスにはなりましたが、デフレーターの帰属家賃を除く消費者物価指数は前年同月比+3.3%とまだ高いので、名目の前年同月比が+2.3%となった、きまって支給する給与の実質の前年同月比はまだマイナスのままです。
 
 岸田首相が8月14日に退陣表明されました。外交日程などへの配慮でこの時期になったのではという解説もありますが、もう1~2日遅くすれば、「名目GDP初の600 兆円超え。実質雇用者報酬 ・前年同期比11 四半期ぶりにプラス」といった経済面の成果を会見の中で発表できたわけです。経済に関する発表のタイミングは、最後まで残念なものになったと思います。
 

4~6月期に5四半期ぶりに前期比プラスに転じた実質個人消費。一方、8四半期ぶりに前期比に転じた実質インバウンド消費。

 4~6月期のGDP統計で気になったことを、最後に挙げてみます。
 
 実質個人消費は、一部自動車メーカーの認証不正問題に伴う出荷停 止の影響から新車販売が持ち直したこともあり、前期比+1.0%と、5四半期ぶりのプラスとなりました
 
 一方、外国人の国内での消費であるインバウンド消費は「非居住者家計の国内での直接購入」で見ますが実質・前期比▲4.2%と8四半期ぶりにマイナスになりました。
 
 6月の景気ウォッチャー調査に関するレポートで「「インバウンド or 外国人」関連現状判断 DI は 57.0 で、引き続き景況感の牽引役にはなっていますが、かつての 60 台以上が継続 していた時と比べると鈍化していて、インバウンドの経済効果で高い水準をつけることが多い業種である「旅行交通関連」の現状判断 DI は 3 月 60.9 から 6 月 49.5 へ3カ月連続低下しました。」と書きましたが、GDP統計でも4~6月期のインバウンド消費は、ちょっともたついたようです。
 
 但し、7 月の「外国人 or インバウンド」関連現状判断 DI は 60.4と3 カ月ぶり 60 台に回復しました。同・先行き判断は 4 月は 59.7 で僅かですが 60 割れとなり、5 月 55.6、6 月 54.3 まで鈍化しましたが、7 月は 56.7 と若干 戻りました。まだ、7月の動向しかわかりませんが、7~9月期になると非居住者家計の国内での直接購入は前期比プラスに戻る可能性があると思われます。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。