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過去最速タイの東京の桜の開花が示唆する景気拡張局面継続。今年が冷夏になる可能性等には要注意。―景気の予告信号灯としての身近なデータ(2023年4月17日)―

今年の東京の桜の開花、最速タイの3月14日が意味するもの

今年は桜の開花が早く、東京の開花日は史上最速タイの3月14日でした。開花日は、標本木に5~6輪の花が咲いた日とされます。東京の標本木は、靖国神社の能楽堂の近くにあります。今年は3月13日に開花するのではないかと言われ、13日も各局の取材クルーが標本木の前に集まっていましたが、寒冷前線の通過によって午後から気温が下がったため、気象庁の観測員の13日の発表は「さくらの開花は4輪」と1輪足りませんでした。東京のさくら開花宣言は3月14日にズレ込みました。
東京の桜は2月1日以降の最高気温の合計が概ね600℃になると開花する傾向があるということです。開花日が3月14日と、1953年の調査開始以降で過去最も早かった20年、21年の最高気温累計は各々598.6℃、611.5℃でした。開花日が3月20日の22年は最高気温の累計は626.6℃。今年は3月14日までの最高気温累計は593.2℃でした。今年は早く暖かくなっていたことがわかります。
東京の桜の開花日が、平年の3月24日より4日早い3月20日以前になった年は昨年までで11回あり、コロナ禍でお花見が自粛された20年を除き、全て景気は拡張局面に当たります。早く春が来ると春物衣料などの商戦が早まるほか、お花見などで、外出することが多くなることで個人消費の底上げが期待できます。お花見の宴会は人々の気分を盛り上げます。厳しい冬の期間が過ぎ桜の花を愛でて明るい気分になる人は多いでしょう。最速タイの今年の東京の桜の開花日からみると、足元の景気は拡張局面である可能性が大きいとみられます。
23年3月の景気ウォッチャー調査で「桜」関連判断DIをつくると、現状判断DIは72.5(回答ウォッチャー10名)、北海道、北関東、甲信越で回答があった先行き判断DIは75.0(同5名)で、「桜」が景況感にプラスに働いたことがわかります。
開花日から満開日まで日数が長いかどうかも重要なポイントです。長く桜が咲いている年は、お花見ムードが続くので、好景気が持続しやすい傾向があります。東京の開花日から満開日までの日数が17日間だった66年や、15日間だった89年は翌年以降も景気拡張が続きました。開花日が平年より早かった年はその2回も含めて、満開まで12日間以上あった年は9回、全て景気は拡張局面で、そのうち8回は翌年以降も景気拡張が続きました。今年の東京の満開日は3月22日。開花日から満開日までの日数は9日間で、平年(開花3月24日から満開3月31日の8日間)よりやや長かったものの12日間には届いていないため、景気が今後持続することを示唆してはいません。

エルニーニョ現象発生の可能性60%。平成の米騒動の93年と同じ5日の東京・大阪の桜開花日の差。今年の夏の気温は?

気象庁は、エルニーニョ監視海域のうちNINO.3海域と呼ばれる「北緯5度~南緯5度、西経150度~90度」の月平均海面水温を用いて、当該海域の月平均海面水温の基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差の5カ月移動平均値が6か月以上連続して+0.5℃以上になった場合をエルニーニョ現象と定義しています。なお、気象庁は正式な定義に基づく発表とは別に「エルニーニョ監視速報」の中でエルニーニョ現象や、逆の現象であるラニーニャ現象の現状と見通しについての判断を述べています。
日本ではエルニーニョ現象の時は冷夏・暖冬になりやすく、ラニーニャ現象の時は猛暑・厳冬になりやすい傾向があります。4月10日に発表された「エルニーニョ監視速報」では3月のエルニーニョ監視指数(海面水温基準値偏差)は+0.4℃でした。気象庁の判断は「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態になっている。今後、夏にかけて平常の状態が続く可能性もある (40 %) が、エルニーニョ現象が発生する可能性の方がより高い(60 %)」としました。
エルニーニョ監視指数(海面水温基準値偏差)は3月中旬+0.6℃、下旬+0.5℃と連続して0.5℃以上でしたが、4月17日に公表となった4月上旬は+0.4℃に縮小しました。
夏にエルニーニョ現象が発生すると冷夏になりやすいため、通常年では景気にはマイナスの影響が出ます。夏季(7~9月期)は、消費者物価上昇率を考慮した実質大型小売店販売の前年比が81年から22年までの全期間平均では+0.6%ですが、エルニーニョ現象発生時に限ると前年比は+0.2%と低めです。冷夏により夏物衣料や冷房器具などの需要減が生じるためです。
但し、今年は物価・光熱費高が消費者の負担になっています。高い電力料金を政府の補助金で引き下げているような状況なので、エルニーニョ現象が発生し猛暑が回避されるなら消費者の負担軽減につながり、全体として景気にプラスに働く可能性もあります。今後の動向は要注視でしょう。

なお、東京と大阪の開花日の差が、その年のコメの作況指数などと関わっていることも経験則からは読み取れます。コメの作柄を左右する夏(7~9月)の平均気温が23℃台であり、コメの作況指数が不良以下(94以下)だった年は、1972年以降では、76年、80年、93年の3回しかありません。この3回の東京と大阪との桜の開花日の差が平年(東京の開花日は3月24日、大阪は3月27日で、差は3日)以上に開いています。76年の開花日の差は7日、80年は同3日、93年は同5日(東京・3月24日、大阪・3月29日)です。但し、平年以上に開いたからといっても必ずしも冷夏になるとは限りません。
今年は東京が3月14日、大阪が19日でその差は、93年と同じ5日開いています。93年は1913年以来、80年ぶりの大冷夏で、深刻な米不足になった年です。1991年6月15日のフィリピン・ピナツボ火山の20世紀最大級と言われる大噴火の影響で地球全体の平均気温が0.5℃程度下がったと言われています。93年には日本でも日照不足で米の生産量が減少してタイなどから輸入する事態となりました。93年の冷夏はピナツボ火山の大爆発とエルニーニョ現象などが要因と言われています。
22年1月15日にトンガの海底火山で発生した大規模な噴火の影響などは気になりますが、二酸化硫黄や火山灰などのエアロゾルの量はピナツボ火山の噴火の際より少なかったと言われており、現状では気候への影響は限定的ではないかとみられているようです。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。