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正直ぼくには、恋が何たるか分からない。これまで出会った女性には、大した感情を抱かなかっ…
夕方の鐘が鳴る。図書館にひと気がなくなると、図書カードに押す判子一式をカウンターの抽斗…
図書館の隣には、芝生の広場がある。市役所の鐘が正午を告げると、そこいらの会社の人たちが…
ぼくの勤務先である町の図書館までは、自転車で10分くらいかかる。家賃を安く上げるために、…
青年とはしばらく一緒に過ごして、別れた。同じ町に住んでいること以外、大した自己紹介はな…
透明な水が日射しを受けてきらめいている。出水がすぐ近くにあり、山の伏流水が大量に流れ込…
春もそろそろと終わる頃、ぼくは近所の川べりを歩いていた。暖かいを通り越して、すこし暑い。じわりと汗ばんでいる。白いカッターシャツのいちばん上のボタンをとめて家を出たけど、さすがに外した。途端、さわやかな風が入ってくる。 片手には最近下ろしたばかりの手帳。表紙の革が、まだ手のひらになじんでいない。紺色の万年筆はシャツのポケットに。こちらはもう長く使っている。 自作の詩を書き込む手帳も、これで19冊目を数える。最初の頃は、失敗作も多かった。取るに足らない作品が出来たと思った