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子どもに絵を教えるってこと(児童絵画)

初めて小さな子供に絵を教えたのは、2004年の21歳頃。
まだ私は学生でした。
受験の時にお世話になった師匠の絵画教室のお手伝いで、動物園での写生大会に参加しました。
園内に広がる20人近くの子供達を、先生と二人で見て回る。
一人一人楽しそうに、のびのびと絵を描いている姿を見て、
「何をアドバイスすることがあるのだろう…」
正直そう思いました。

後に、児童絵画という言い方があることを知りました。
幼少期に見えている世界と、大人が見ている世界は全く違い、大人の目線で指導をすることの危険性を感じました。

晶代 作

3歳児頃には丸の中に目と鼻と口が描かれ、その丸から手足の棒が出ている顔人間(胴体がない)を描くことが多い。
なぜかというと、人は顔の表情で情報をキャッチするためまずは顔を描くことが多く、比較的抱っこされていることの多い乳幼児にとって、体という認識が浅く自分を観察している時に手と足が自分から生えている、という感覚から顔人間が産まれるようです。

晶代 作

5歳になると体の認識ができるようになり、男女差に興味が湧いてきます。
また社会性を学び始めるため、自分以外の情報を描き始めます。
この頃によく見かける絵は、地面、人や建物がある層、空の層という3つの層に分かれます。
大人から見ると、地平線まで空を塗りたくなりますが、日常の子供の目線から景色を見ると、下を見ると地面、まっすぐ見ると人や建物がある、真上を見上げると空がある。つまり、空は上にあるものと認識しているため、下の方まで塗ることはあまりありません。
これまでに子供の絵を見てきて、非常にその傾向があることを目の当たりにし、あらためて認識しました。

彼らは頭で描くのではなく、見えたものを描いています。
ここで大人が「空はここまで塗るのよ」と不意に教えた場合、子供は何を思うか想像できますか?
「空は青で塗りましょう、木は緑色です、太陽は赤、月は黄色で塗りましょう」
これらは本当に正解ですか?
空は1日・1年を通して、いろんな色に変化します。
木の葉っぱは、種類によって、季節によって異なります。
太陽は(直視すると危険ですが)、朝日、夕日の色は異なります。
雪を描く時、白い紙に白は描けないという理由もありますが、子供は降ってくる雪を下から見ているので、逆光でグレーに見えている、という話も聞いたことがあります。
大人の価値観でアドバイスをしてしまうと「自分が見えている世界は、間違っているのだろうか?自分は変なのだろうか?」と不意に傷つけ、不安にし、絵を描くことが怖くなってしまう可能性があります。
児童絵画においては、経緯を理解しよく考えて話しかける必要があります。

8歳くらいになってくると、情報が増え理解力もつくので、早く気が付く子は大人っぽい絵を描き始めます。
そうすると今度は大人は「もっと子供らしい絵を描きなさい。そうすればコンクールに入るわよ。」なんてアドバイスをしてしまいがちです。
その結果子供は「子供らしい絵って何?そもそも絵って何?上手に描けないからもう描くのやめよう。」そんなふうに感じてしまう子供も少なくありません。
苦手意識が芽生え、美的センスがないと勘違いさせ、自信を無くします。
成長して欲しいと思っているはずなのに、正しいと思ってかけている言葉が逆行していきます。
大人が最も注意するべきことは、その言葉がその子にとって適切かを常に見極めることだと思います。

2016年ごろから自分の教室を持ち、大人と子供の絵画に向き合ってきました。
初めて教えたあの頃から、思うことは同じです。
「私は彼らに何を教えたらいいいのだろう。」
でも一つだけ分かった大切なことは、子供達が描いた作品は彼らにとっての真実であること。それを否定すると人格否定にも繋がりかねない。
私ができることは、彼らは何を見つけて、何を感じて、どう思ったかを尋ね、理解を示すことだと思います。
そして出来上がった作品を見て、描きながら理解したことを復唱・解説をし、発見したことを共に喜ぶこと。
感性を磨くためには、ものを正確に書き写す技術よりも先に、見えたり感じたものを色や形で表し、それを楽しむことが大切だと思います。
多くのお父さんとお母さんに知っておいて欲しいことです。
上手とか下手とか、そんな簡単で乱暴な言葉でジャッジをせず、生まれてきた子供の気持ちや感覚を一緒に見つけて大切にしてほしい。
子供が絵を見せてきた時、「どこが楽しくて、どこが難しかったか」それを聞き出すだけで良いのです。

迷った時にはガイドはしますが、描き方を教えることはありません。
その子一人一人が生み出す線や色に毎回感動しています。
今しか描けない絵があるはず。
いつか自分が大人になって見返した時、何を思うか、それもまた成長なのです。

20年近く指導にあたってきて思うことでした。
近いうちに大人への指導について思うことも綴りたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
少しでも絵を描くことが楽しいと思える人が増えますように^^


いつでもどこでも考える人

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