著者:長谷川晃代
「生き残ったずる賢いほうだけが歴史を残すってことだよ」森の奥の孤児院に暮らす少女、サラ。厳しい院長のもとでの窮屈な日々に嫌気がさし、自由な生活を夢想していた。ある日そんな彼女に降りかかったのは、思いがけない真実。サラの両親は「邪教の徒」とされる者たち……イエス・キリストとマグダラのマリアだったのだ。やがてサラは汚い裏切りによって、空想よりずっと残酷な外の世界に引きずり出される。民衆の前で幾度となく鞭打たれるサラ。血に塗れた顔を涙で濡らした理由とは――。これは「歴史」がかき消そうとした、とある少女の物語。