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結婚8年目にして妻の旧姓に改姓した話

妻と結婚して8年。
2024年3月に妻の旧姓に改姓しました。

生まれてこの方名乗っていた「秋山」から、妻の旧姓「山寺」へ。

結婚してから改姓するというのは、ちょっと珍しいパターンかなと思うので、そこに至った経緯をみなさんに共有したいと思います。


選択的夫婦別姓が遅々として実現しない!

 結婚が決まって、いざどちらの姓にするかということを決める時、おおよそ95%の夫婦が男性側の姓を選択しています。なので多くの人が、なんとなく男性側の姓になるのかな。という意識でいるであろうことは想像に難くありません。

 かくいう私も、そうした意識が潜在的に強くあったことは否めません。妻との結婚が決まって、どちらの姓にするか、という話し合いの場は設けたものの、しっかりと妻の気持ち、本音に寄り添えていたかというと、甚だ怪しいものだったと反省せざるをえません。

 結婚してからも、ことあるごとに「選択的夫婦別姓が実現した暁には、私は旧姓に戻る」と宣言をしていた妻。そのたびに、結婚した時の自分の考えが浅はかであったことを恥じる私。という構図がこの8年の間、繰り広げられてきました。

 いまか、いまかと待ちわびていた選択的夫婦別姓の実現。

 しかし、どうやら政権与党は全くやる気がなさそうだ。という現実が変わる気配はなく、これはもう、待っていても埒があかないのではないか。と思っていたタイミングで、ちょうど住まいを引越すことが決まりました。

住まいが新しくなるこのタイミングで、妻の姓に改姓しよう!


 私たち夫婦には7歳と3歳(当時)になるこどもたちがいます。なので改姓についても、こどもたちの心のケアとともに、タイミングがとても重要です。大人であっても名字が変わるというのは大変なこと。当然、こどもたちにも多大な負担を強いるものであるということは想像に難くありません。

 いつ、どのタイミングで改姓すればこどもたちの負担を少しでも軽くすることができるだろうか。そんなことを考えていたなかで、唐突にやってきた引越しのタイミング。引越しをするために学校も転校することになるので、改姓をするのであれば、今なのではないか。少なくともクラスメイトたちに名字が変わることの説明をする負担は省けます。環境も名字も変わるというのは負担が大きいと思いつつも、他に適切なタイミングも思いつかない。

 改姓という思い切ったことをするためには何かしらの勢いのようなものも必要なので、この機を逃すとまたズルズルと行ってしまいそうだ。

 引越しをすることが決まってから、実際に引越しをするまでの5ヶ月間。自問自答し、夫婦で話し合い、こどもたちとも話し合い、私たちが下した決断は「改姓するのであれば、この機を除いて他にない!!」でした。

改姓するにはどうすれば良いのか?

 いざ、改姓をしよう! となったら次はどうやったら改姓できるのか? 簡単に改姓することは果たして可能なのか? ということが気になります。

 そこで、区役所戸籍課に伺いました。

 窓口で、妻の旧姓に改姓したいのですが、と尋ねるとすぐには返答をもらえず「少々お待ちください」と待たされること15分ほど。再び窓口に現れた担当の職員さんが告げました。

「改姓するためには、3つの方法があります」

 おそらく行政としても普段受けることのない、珍しい相談だったと思います。窓口で対応してくれた職員さんも、戸惑いながらもちょっと楽しそうに教えてくれました。

改姓するための3つの方法

1、義実家の養子になる

 これが一番手っ取り早い方法かもしれません。私が義父母と養子縁組をすると、義父母の姓を名乗ることになります。つまり、秋山から山寺になる。よって家族全員が山寺になる。

 ただし、養子縁組をすることによって、私も義父母の法定相続人になってしまうということに気をつけなくてはなりません。相続は非常に繊細な問題です。それぞれの家族の事情もあるので、慎重に判断しなくてはいけないところ。

 ということで、私たちはこの選択肢を外すことにしました。

 親族間のコミュニケーションがしっかりと取れていれば相続争いにはならないだろうなとは思っているものの、少しでも争いの種になりそうなことは避けたい。もとより、妻のことを思っての改姓なので、財産目当てだと思われたりしたら嫌だな、とい思いが私の中で強くあり、養子縁組は違うなと。

2、家庭裁判所に申し立てる

 家庭裁判所に氏の変更許可を申し立てることも選択肢のひとつです。

 しかし、許可が認められるかというと、かなりハードルが高いです。氏の変更許可が認められるのは「やむを得ない事情」がある場合のみ。私たちの場合のように、ただ変えたい、という理由だけではまず許可が降りないだろうということは言われました。
 
 その後、念の為に家庭裁判所にも立ち寄って、実際に申し立てる場合の流れも聞きましたが、今回のケースが「やむを得ない事情」にあたるかというと、やはり芳しくなさそうでした。

 さらに、申し立ててから結果がわかるまでが6ヶ月ほどかかる可能性があるとのこと。試しに申立書を提出してみることも検討しましたが、6ヶ月かかって結局認められない、となる可能性が高いので、さすがにそこまで待てないよねということで、この選択肢も外すことにしました。


3、一度離婚して再婚する

 戸籍課の職員さんが最後に教えてくれたのが、この一度離婚して再婚する方法です。

 まず離婚をして、妻が山寺の姓で戸籍をつくります。山寺に戻った妻と再婚して山寺の姓を選択。そうすると妻も私も山寺です。この方法にデメリットがあるとすると、離婚をしたという事実が残る。ということですが、私たちにとっては別に対した問題ではなく、デメリットと言うほどのものではないです。

 養子縁組は親族も含めた話になってしまいますが、離婚と再婚だけなら妻と私だけの話し合いで完結しますし、家庭裁判所に申し立てるよりも圧倒的に早く、そして確実に改姓できる。

 一応、建前としては改姓のために離婚して再婚するのではなく「離婚を決意したけれど、その後関係性が戻って再婚する」ということにしてください。と窓口の職員さんには言われました。確かに制度としては改姓のためだけに離婚して再婚するのは少し裏技感があるんだろうな。

 とはいえ、この方法が私たちにとっては一番現実的であることに変わりはありません。

 離婚しよう! そして再婚しよう! ということになりました。

離婚・再婚・入籍

 ということで、妻と私の予定が合う日に再び区役所に。別にどちらかが提出にくれば良いのですが、なかなかできない経験なので、一緒にやってみようということで、2024年3月8日に離婚届を提出。

 妻は山寺の姓に戻り、新しい戸籍をつくります。こどもたち二人の親権者は私にしておきました。

 これで翌日以降、婚姻届を出せば改姓できます。

 二人の予定がなかなか合わず、束の間の「独身期間」。とはいえ、何をするというわけでもなく、仕事で会う人たちに「いやぁ、実はいま独身なんですよ」とネタにするくらい。

 2024年3月22日に婚姻届を提出。独身期間は2週間で終了。

 これにて、私は「秋山」から「山寺」になりました。しかし、ふたりのこどもたちはまだ「秋山」のまま。

 この時点で山寺姓の戸籍には妻と私しかいないことになるので、こどもたちをその戸籍に「入籍」させる手続きが必要です。

 この入籍届を提出して、晴れて家族全員の改姓が完了。

 ついでに、私の旧氏併記の手続きもしてしまいます。

 自分で会社をやっていますので、仕事上の名前は旧姓のままの方がいいなと思い、旧氏記載。しかし後日、旧姓使用はとんでもなくめんどくさいということを実感することになりました。

 旧姓使用が広がっているから、選択的夫婦別姓は導入してなくてもいいとか言ってる人は、現実をまったく理解していない人だということが分かります。

改姓を終えて

1、手続きについて

 改姓すること自体は、離婚届と婚姻届を提出するだけなので、そこまで面倒なことはありません。しかし、改姓をしたことによって生じる、さまざまな手続きの多さ、そして面倒臭さは嫌と言うほど味わっています。

 また、私の場合は国家資格(一級建築士)を持っていること、会社とNPOの代表であることも面倒臭さを増大させている要因になっています。

 できるだけ多くの面倒だったことを、今後この記事に追記していきます。

 今までに、多くの婚姻をした女性が味わってきたであろう、この面倒な手続きの数々。自分ごとになって初めて、本当にこれは申し訳ないことをしているなと強く強く実感します

 もちろん、改姓してパートナーと同じ姓にしたいという方はそうしていただくのが良いと思います。その上で、改姓したくない、という人たちの意思も同様に尊重してくれる制度。つまりは選択的夫婦別姓は必須の制度だと思います。

 改姓することによる時間の浪費、行政や企業で生じる作業量を考えただけでも、結婚しても産まれもった名前で生活することは認められてもいいじゃないかなと思います。

2、精神的なことについて

 改姓することで、自分自身がどう感じるか。

 改姓する前までは喪失感とかが襲ってくるのかな。と思っていましたが、あまりそういったことは感じなかったというのが現状です。

 まだ、山寺と呼ばれることに対する違和感のようなもの、というかすぐに自分のことだと反応できない場面はあるのですが、精神的にダメージがあるとか、喪失感があるとかはないです。

 ただ私の場合は、自分の会社が「秋山立花」という名前のためか、よく人から「立花さん」と間違えて呼ばれることも多く、そうした呼び間違いに慣れきってしまっているおかげで、どう呼ばれてもあまり気にしないという耐性がついているということが大きいかもしれません。

 実際に、改姓による精神的な負担は個々人で変わるものです。自分の姓に対しての思い入れは、その人にしか分からないもの。外野がとやかく言うことではありません。

 私は大丈夫でしたが、他の人がどう感じるかはまったくの別問題です。

 改姓によって喪失感を味わったり、精神的な負担を抱えている人がいる。ということだけは確かですし、その事実をみんなが理解し尊重することがとても大切なのではないでしょうか。

改姓したことによって生じた面倒なこと

今後、順次、書き足していきたいと思います。
とりあえず(2024年7月18日現在)は、ここまで。

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秋山怜史
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