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僕が母子ハウスを始めた理由 〜母子ハウスの今までとこれから〜 vol.06

2012年3月。収益物件としては、全国で初めてとなるシングルマザーシェアハウス「ぺアレンティングホーム高津」がオープンした。なぜ、建築家である僕が、母子シェアハウスを立ち上げるに至ったのか。その背景を何回かに分けて書いていこうと思う。
 母子ハウスの今までと、これからを少しでも多くの人に知ってもらいたい。まだまだ、成長していかなくてはいけない事業だし、多くの人の助けと応援が必要である。
 2015年、母子ハウスのポータルサイト「マザーポート」を立ち上げ。
 2019年、母子ハウスの運営者が集う全国組織「NPO法人全国ひとり親居住支援機構」立ち上げ。
 そして、これから僕らは何を目指していくのか。

 6回目の記事になります。
 これまでの記事はこちらより。


シングルマザーシェアハウスのメリット

 ペアレンティングホーム高津がオープンしてから、シングルマザーシェアハウスに関わり始めて、この新しい試みのメリットもデメリットも経験してきた。

 今回は、そのメリットをまとめたいと思う。


入居のハードルが低い

 賃貸物件を借りる時に不利益を被ることもある中で、シングルマザーシェアハウスは当然のことながら、母子家庭であることを理由に入居を拒むことはない。

 初期費用も一般的な賃貸に比べると、圧倒的に安くなる。
 敷金や礼金といったものがなく、鍵の交換費用や清掃費の預かり金と当月の日割り家賃、次月の家賃程度で入居できる場合が多い。中には、就労状況に応じて、フリーレント期間や当初の家賃を下げる仕組みがあるハウスもある。

 また、就労状況が不安定であったり、就労していない状態であっても、一定の条件を満たせば入居することができるように、ルールを定めているハウスが多い。ここはとても重要なところだ。
 一般の賃貸物件だと、無職の状況でスムーズに物件を貸してくれるところはほとんどない。ただ、引っ越しをともなうことによって就いていた仕事を辞めなくてはならなかったり、そもそも無職の状態で問い合わせをしてくる母子家庭は多い。そのような状況下であっても、入居をすることができる選択肢があるということは、とても大きなメリットだと思う。

 もちろん、誰でもかれでもどうぞというわけではないのだけれど、シングルマザーシェアハウスは母子家庭の住居の選択肢をかなり大きく広げているのではないだろうか。

 ちなみに、離婚がまだ成立していない、プレシングルマザーももちろん入居することができる。問い合わせ件数でいうと、プレシングルマザーからの問い合わせの方が多いくらいである。


孤立しない

 孤立しない。というのもメリットのひとつだと思う。

 入居者の方が「ここでは大人と話すことができる」と喜んでいたことがある。曰く、当時はあまり会話のない職場で働いており、家に帰ればこどもと話すけれども、大人は自分以外にいない。気がつけば、1週間以上、大人とまともな会話をしていない、なんていうこともザラであった。ところが、シェアハウスには、帰ってくれば他のお母さんたちがいて、いろんな話をすることができると。

 会話というのは人生にとってとても大切なものだ。他者と会話をする頻度が多い人の方が健康に長生きをするというデータもあるくらいである。

 また、子育てが孤立化しないことによって、こどもへの接し方も変わっていった事例もある。入居者のお子さんが「ここに引っ越してきてから、お母さんの怒り方が変わった」ということを言っていた。子育てが孤立して、密室化すると、感情が高ぶった時にその抑えが効きづらくなることもある。少なくともシェアハウスではそうした孤立は起きない。


自分の時間が増える

 シングルマザーシェアハウスのリビングでは、こどもたち同士で遊んでいる風景を見ることができる。もちろん、年齢にもよるけれど、そこに大人の姿がないこともある。

 兄妹がいる方は想像しやすいと思うけれど、ある程度の年齢になると、親のいないところで、こどもたちだけで遊んでいるということはよくあることだ。シングルマザーシェアハウスに暮らすこどもたちは兄妹ではないけれど、あたかも兄妹のように遊んでくれることによって、親がこどもから目を離すことができる時間ができる。

 母子家庭は家にいるときは常にこどもと一緒だし、なかなか目を離すこともできない。自分の時間を持つことができることは、子育てをしていてとても贅沢なことだと感じることはよくある。シングルマザーシェアハウスで暮らすことによって、自分だけの時間が少しでも増えるということは、それだけ生活の質、人生の質をあげてくれるものだと思う。


シングルマザーシェアハウスのデメリット

 シングルマザーシェアハウスの代表的なメリットを書いてきたけれど、もちろん、デメリットも存在する。

 共同生活になるので、入居者同志で仲が悪くなると、生活の質が一気に落ちてしまう。自分の思い通りにいかないことも出てくるし、他者の生活音やペースにストレスを感じることだってある。

 また、個室の広さにも限界があるので、こどもが成長すれば、どうしても手狭に感じてしまう。シングルマザーシェアハウスは長期間暮らすというよりも、次のステップに向かうための数年間を過ごす場所と考えた方がいい。

 そもそもシェアハウスで暮らすということが、日本人の多くの人が苦手なのではないかと思う。他者と暮らすということに、慣れていない人が多いのではないだろうか。

 なので、シングルマザーシェアハウスも万人にとって良いものであるということでは、もちろんない。
 これからはシェアハウスだけではなく、さまざまなタイプの母子の住居をつくっていかなくてはいけないと考えている。

 


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秋山怜史
読んでくださりありがとうございました。 いただいたサポートは全て『特定非営利活動法人全国ひとり親居住支援機構』の運営資金にまわり、母子家庭の居住支援を広めていくための活動に活用させていただきます。