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シングルマザーシェアハウスもついにセーフティネット住宅に登録できるようになりました! 次は家賃低廉化の予算獲得へ

 特定非営利活動法人全国ひとり親居住支援機構の秋山です。

 令和3年4月1日より、シングルマザーシェアハウスもセーフティネット住宅への登録が全国的に認められるようになりました。

 シングルマザーシェアハウスもセーフティネット住宅に登録できるように制度を変えようとご尽力をいただいた議員のみなさま、官僚みなさま、そしてシングルマザーシェアハウスに関わる全てのみなさま、ありがとうございました。

ひとり親世帯向けシェアハウスの基準新設について  
 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅(以下「セーフティネット住宅」という。)のうち、共同居住型賃貸住宅の基準を定めた「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則第十一条ただし書及び第十二条第二号ロの国土交通大臣が定める基準」(平成29 年国土交通省告示第 941 号。以下「告示」という。)については、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則第十一条ただし書及び第十二条第二号ロの国土交通大臣が定める基準の一部を改正する告示」(令和3年国土交通省告示第277 号)により、ひとり親世帯向け共同居住型賃貸住宅の基準を加える改正が行われ、令和3年4月1日より施行される。
<国土交通省の通達文章より引用>

 これによって何が変わるのか、何が進むのか。まとめてみたいと思います。


そもそもセーフティネット住宅とは

 セーフティネット住宅とは、高齢者や障害者、子育て世帯などで住宅の確保に配慮が必要な世帯に対して、住宅を確保しやすいようにしようとした制度です。

 本来であれば、そうした住宅のセーフティネットは公営の住宅が担うのですが、今後、公営住宅は減ることはあっても増えることはなかなかありません。

 そして、民間の住宅では空き家が著しく増えており、社会課題となっています。

 そこで、そうした民間の住宅を活用して、住宅の確保に配慮が必要な世帯に対して、住宅を供給すればよいではないか。ということです。

 制度の柱は3つ
1、セーフティネット住宅として民間の空き家を登録すること
2、改修工事費用の補助や家賃の低廉化の補助がでること
3、居住支援法人の支援があること

 詳細はセーフティネット住宅のポータルサイトがありますので、リンクを貼っておきます。

 パッと聞くだけでは、なるほど良い取り組みなのではないかと思うかもしれません。しかし、実際はなかなか上手く行っていないというのが実情です。


セーフティネット住宅の何が課題なのか

 セーフティネット住宅が抱えている課題は大きく3つあると考えています。

 ひとつめは、登録件数を増やすこと。
 セーフティネット住宅を増やそうと努力している自治体、そうでもない自治体と取り組みに温度差はあるのですが、どの地域も、自治体が目指す登録住戸数には届いていない、というのが実情です。
 理由はいくつかあると思いますが、まずもってセーフティネット住宅の認知度が低いことと、物件オーナーへのインセンティブを感じてもらえないことが大きいと思います。
 確かに、セーフティネット住宅にすることによって、改修費用の2/3最大200万円/戸の補助金が出ますが、1/3は当然自己負担になります。そもそも空き家になってしまっている物件に対しては大家さんも投資意欲が低く、わざわざお金をかけてまで改修するという部分でハードルがあります。
 また、認知度が低い制度のため、セーフティネット住宅にしたからといって、入居者が決まるかというと決まるはずがありません。せっかく改修工事に投資をしたのに、結局空き家であることは変わらない。ということになれば、投資をする気になるはずがありません。
 入居者に見つけてもらうためには、その他の不動産と同様、それ相応の資金を投入して知ってもらう、検索してもらうことが必要になります。しかし現状は、残念ながら住宅要配慮者に情報として届いていないと言わざるをえません。
 入居者だけではなく、不動産のプロの方々でさえ、この制度を知らない人は多くいるというのが実情です。

 ふたつめは、家賃低廉化の予算を組む自治体を増やすこと。
 セーフティネット住宅のもっとも大事な部分だと思われるのが、この家賃低廉化。セーフティネット住宅に入居すると、家賃の一部(最大4万円)が補助されます。例えば6万円の家賃の住まいであれば、入居者の事情によっては2万円で住むことが可能になります。
 母子家庭へのアンケートでも、家計の中で負担感がもっとも家賃が負担感が強いという結果がでています。家賃の低廉化はまさにセーフティネット住宅がセーフティネット住宅足る理由になります。しかし、家賃の低廉化を実施するためには、それぞれの自治体が家賃の低廉化のための予算を組んでいなくてはなりません。そして、その予算を組んでいる自治体は驚くほど少ないのです。
 結果として、制度として家賃低廉化できるようになってはいるものの、実際には運用されることがない。という状況になっています。

 みっつめは、居住支援法人を充実させること。
 居住支援はただ住居を紹介して、入居する。だけではなく、それぞれの入居者さんに応じて、必要な支援を組み合わせて行かなくてはなりません。そのために、セーフティネット住宅では支援団体を居住支援法人と認定しています。住まいだけではなく、生活の支援をしていく。不動産に関わる法人だけではなく、生活支援など多様な法人がいかに参画できるようにするか。実行力のある居住支援法人の充実が求められます。


シングルマザーシェアハウスは今まで対象外だった

 前置きが長くなりましたが、ここからが今回の本題です。

 上述のセーフティネット住宅ですが、いままでシングルマザーシェアハウスは対象外でした。シェアハウスは対象だったのですが、あくまでも単身で住むことが想定されており、シングルマザーシェアハウスのように2人以上での入居は制度の中で規定がなく、対象外とされていました。
 この制度ができた当初から、なぜシングルマザーシェアハウスが対象外なのか。対象にするように改訂することはないのか。と、ことあるごとに、国土交通省の方にお伝えしていました。

 シングルマザーシェアハウスは、そもそも住宅要配慮者になりやすい母子家庭に対して、安心して安全に暮らせる住居を広めていこうという想いで成り立っています。
 シングルマザーシェアハウスのポータルサイト「マザーポート」でアンケートを実施した時には、実に84%の方が「母子家庭であるという理由で不動産を借りるときに不利益をえた経験がある」と答えています(回答数114人)。
 まさに、セーフティネット住宅の法理念を体現しているとも言えるのが、シングルマザーシェアハウスであり、セーフティネット住宅の制度から外れてしまっているというのは、制度の損失であると言えます。

 とはいえ、当時は全国的でどれくらいのシングルマザーシェアハウスが存在しているのか、それぞれのハウスの運営状況がどうなっているのか、しっかりとした統計が存在していなかったこともあり、国土交通省としても制度の中に組み込むには情報が少なかったということは否めません。

 この反省も踏まえ、シングルマザーシェアハウスの業界団体とも言える、NPO法人全国ひとり親居住支援機構の設立に繋がっていきます。


横浜市が全国に先駆けて承認

 そんな中、横浜市が全国に先駆けて動いてくれました。

 セーフティネット住宅は自治体ごとに登録条件の緩和をすることができます。全国一律は難しくても、シングルマザーシェアハウスがある自治体ごとに緩和をしてもらえれば、セーフティネット住宅に登録していくことが可能になります。

 2018年10月に、NPO法人全国ひとり親居住支援機構の全国会議を横浜市で開催し、そこに議員の方々、行政の方々にもお越しいただきました。

 シングルマザーシェアハウスの実情、いかに居住支援が大切か、そして私たちの想いや願いも含めて、お伝えできたことは多かったと思います。

 その後も行政の方々とのやりとりを継続し、2020年6月に政令指定都市で初めて、シングルマザーシェアハウスをセーフティネット制度に組み込むことになりました。
 横浜市のこども青少年局こども家庭課のみなさんの熱量、建築局住宅政策課のみなさんの柔軟な発想がなければ、難しかったと思います。とかく、行政は批判ばかりされがちですが、こうした良い事例はもっと広く伝わって欲しいなと切に願います。

 この横浜市の緩和によって、現在では横浜市にあるシングルマザーシェアハウスは2軒ともセーフティネット住宅の登録住宅になっています。

 しかも、横浜市はしっかりと家賃低廉化の予算を組んでおり、最大で4万円、家賃を減額することも可能になっています。まさにセーフティネット住宅の理想の形とも言えると思います。


そして全国へ

 横浜市へのアプローチと並行して、国土交通省でもシングルマザーシェアハウスをセーフティネット住宅に登録できるようにする緩和の検討が始まりました。

 横浜市の先行した緩和の影響も大きかったと思います。

 また、多くの国会議員のみなさまも後押しをしてくださり、国土交通省の方々も本腰をいれて、緩和に動き始めます。

 そして、今回、住宅セーフティネット法が施行されてから、ずっと言い続けていた、新グルマザーシェアハウスのセーフティネット住宅への登録が、認められるようになりました。


これからの課題

 シングルマザーシェアハウスがセーフティネット住宅に登録できるようになると何が変わるのか。

 まずはシングルマザーのための住居の選択肢が広がっていきます。改修工事への補助金もでるようになるので、より一層、母子のための住居を立ち上げやすくなります。

 そして、それはセーフティネット住宅の法精神に合致する住宅が増えていくということでもあります。登録件数が伸びやなんでいる制度ですので、この影響は小さくないと思います。

 そして、横浜市のように家賃の低廉化ができる自治体であれば、母子家庭が低額で住居を確保することができるようになります。これは本当に大きい。

 家賃が下がれば、その分、食費やこどもの学習費用、そして貯蓄に回せるようになります。母子家庭の生活の質の向上、安定した生活の確立に向けて、これは本当に大きいことです。

 このことはそのまま、これからの課題に繋がります。
 冒頭にも言及した通り、家賃低廉化の予算を組んでいる自治体は圧倒的少数です。これでは、せっかくの法律の趣旨が達成できないことと同義です。

 今後は、ぜひ、多くの自治体に率先して家賃低廉化の予算を組んでもらうことが重要になってきます。

 そしてその実現のために、私たちも動いていきます。


最後に

 住まいだけで、生活のすべてが解決するわけではありませんが、住まいというのは生活の根幹です。

 住まいが不安定だったり、劣悪であったりすれば、それだけ、生活は安定せず、心も豊かになっていきません。

 安心して安全に住まうことができる。これは基本的人権だと思います。

 誰もが、住居を確保できる。

 誰もが、安全で、清潔で、快適な住環境を得ることができる。

 その実現をこれからも、追求していきたいと思います。

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秋山怜史
読んでくださりありがとうございました。 いただいたサポートは全て『特定非営利活動法人全国ひとり親居住支援機構』の運営資金にまわり、母子家庭の居住支援を広めていくための活動に活用させていただきます。