僕が母子ハウスを始めた理由 〜母子ハウスの今までとこれから〜 vol.10
2012年3月。
収益物件としては、全国で初めてとなるシングルマザーシェアハウス「ぺアレンティングホーム高津」がオープンした。
なぜ、建築家である僕が、母子シェアハウスを立ち上げるに至ったのか。その背景を何回かに分けて書いていこうと思う。
母子ハウスの今までと、これからを少しでも多くの人に知ってもらいたい。まだまだ、成長していかなくてはいけない事業だし、多くの人の助けと応援が必要である。
2015年、母子ハウスのポータルサイト「マザーポート」を立ち上げ。 2019年、母子ハウスの運営者が集う全国組織「NPO法人全国ひとり親居住支援機構」立ち上げ。
そして、これから僕らは何を目指していくのか。
10回目の記事になります。
これまでの記事はこちらより。
全国会議
2018年10月5日。
母子ハウスが増えてきたとはいえ、それぞれの運営者同志の横のつながりは希薄で、それぞれが孤軍奮闘しながら、ハウスの運営をしている。という状況がずっと続いていた中、母子の居住問題を長らく研究されていた、葛西リサ先生(追手門学院大学准教授/2021年現在)の呼びかけで、母子ハウス運営者が一同に会する「全国会議」が行われた。
当日集まった人数は37名。
母子ハウスの運営者だけではなく、母子家庭の支援をされている方、不動産ポータルサイトの運営会社など、母子ハウスに関わりのある方々にもご参加いただけた。
それぞれの母子ハウスがどのような形で運営されているのか。課題に感じていることはなんなのか。それぞれの運営者がそれぞれの思うところを話すことから会議は始められた。
自治体とは連携しているか。
やれることとやれないことの線引きをどこに置いているか。
「居住支援」なのか「コミュニティ支援」なのか。
入居できる母子のターゲットの範囲はどれくらいなのか。
専門家と繋がっているか。
運営者が抱え込みすぎていないか。
僕たちが運営をしている母子ハウスは「施設」ではなく、あくまでも「住まい」だ。
だから、運営をするにあたって、行政からの委託や補助金などは当然のことながらまったくない。運営の手間もかかるし、一般的な賃貸住宅と比べると空室リスクも高くなる。時には、ソーシャルワーカーのような動きを(ほとんど無意識のうちに)している場合もある。
それが果たして、持続可能な形なのだろうか。健全な形になっているのだろうか。悩みの種はつきることがない。
この初めての全国会議が行われたことによって、多くの運営者が横のつながりの大切さを感じたと思う。運営者同士で繋がり、運営者を守ることができる仕組みをつくること、ひいてはそれがよりよいハウスの運営につながって、入居者である母子家庭にとってもメリットになっていくだろうことを実感した。
そして、全国会議が終えた後の打ち上げ飲み会の場で、母子ハウスの運営者が加盟する全国団体を立ち上げることが決まった。