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僕が母子ハウスを始めた理由 〜母子ハウスの今までとこれから〜 vol.05

 2012年3月。収益物件としては、全国で初めてとなるシングルマザーシェアハウス「ぺアレンティングホーム高津」がオープンした。なぜ、建築家である僕が、母子シェアハウスを立ち上げるに至ったのか。その背景を何回かに分けて書いていこうと思う。
 母子ハウスの今までと、これからを少しでも多くの人に知ってもらいたい。まだまだ、成長していかなくてはいけない事業だし、多くの人の助けと応援が必要である。
 2015年、母子ハウスのポータルサイト「マザーポート」を立ち上げ。
 2019年、母子ハウスの運営者が集う全国組織「NPO法人全国ひとり親居住支援機構」立ち上げ。
 そして、これから僕らは何を目指していくのか。

 5回目の記事になります。
 これまでの記事はこちらより。


ペアレンティングホーム高津

 石尾さん、細山さん、そして僕の3人の出会いから始まった「ペアレンティングホーム高津」は2012年3月にオープンした。

 立地は東急田園都市線の高津駅から徒歩5分ほど。元々は、1階と2階が病院で、3階がオーナー住居として計画されていた。住居部分は15年間、誰も住んでいない空家の状況が続いていて、細山さんのところへ活用の相談があったことから、シェアハウスへの転用が決まっていた。

 オーナー住居だったということもあって、ひとつひとつのつくりもしっかりしていたし、水回りやリビングダイニングも元々から広く造られていた。LDKの広さがおよそ30畳ほど。そして、それよりも広いルーフテラスがあった。

 こどもたちが暮らす上でも、共有部分の広さはとても大切になる。単身者向けのシェアハウスであれば、8部屋あったとしたら、住人は最大でも8人だけれど、母子家庭が住むとなると、それが単純に倍になる。お子さんが2人だと、それ以上だ。
 そこに住む人数が多くなるのだから、単身者向けのシェアハウス以上に共有部は広くなくてはいけない。その点からすると、最初のシングルマザーシェアハウスとしては、とても適した物件だったなと思う。

 実際に母子家庭のみなさんが住み始めてから、ルーフテラスに大きな(これでもかというほど大きかった)ビニールプールを買って、こどもたちが全員で遊んでいた様子をみるにつけ、普通の暮らし方では得難い体験をしてもらえたのかなと嬉しい気分になる。ただ、水道代はばかにならなかったけれども。

 もうひとつ、僕が個人的に好きなエピソードがある。

 当時、小学生だった子が同じクラスの友達を2人連れてきて、リビングで一緒に遊んでいた。初めて、ペアレンティングホーム高津を訪れたであろう友達2人が、その広さに驚いて感嘆の声をあげていた時のその子の顔がとても誇らしそうだったのだ。

 友達をつれてきて、ちょっと自慢できる家。

 そんなふうに、ペアレンティングホーム高津のことを思ってくれて(いるのであろうと思う)いて、そのことが、その子の自己肯定感を高めるというか、その子の将来を少しでも支える体験のひとつになれたのであれば、これほど嬉しいことはない。


オープンからの歩み

 オープンしてから全てが順調にいったかというと、もちろんそんな訳はなく、なんだかんだと課題が見えてきていた。

 一番はやはり集客。ペアレンティングホーム高津は8部屋あったのだけれど、すべての部屋が埋まるという状況は本当にすくなかった。オープン当初も、ひと月ごとに1部屋ようやく決まるといったようなスローペースでしか入居者が決まらなかった。

 全国的にみても、シングルマザーシェアハウスは当時は他になかったこともあって、新聞やテレビにも取り上げられることが多かった。

 そのことは初期の集客の大きな助けになってくれたものの、だからといって爆発的に問い合わせが増えたかというと、そうでもなく。収益物件としては、とても苦しい数字が続いていたのは事実である。

 ただ、初期の入居者のみなさんは、シングルマザーシェアハウスという、今までになかった新しい住まい方を楽しみ、その文化を自分たちでもつくっていこう。という気概のある方々ばかりで、細々トラブルはあるものの、全体としてはとても良いコミュニティが育っていった。

 そのことには本当に助けられたし、幸運だったなと思う。

 実際に暮らしていく中で「これはちょっとどうなの?」「これは違うんじゃない?」ということが起きても、最終的には入居者と運営者が集まって話し合い、ルールにする部分はルールにしていく、という繰り返しで、だんたんと運営の指針のようなものが固まっていった。


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秋山怜史
読んでくださりありがとうございました。 いただいたサポートは全て『特定非営利活動法人全国ひとり親居住支援機構』の運営資金にまわり、母子家庭の居住支援を広めていくための活動に活用させていただきます。