スペイン語の語源を調べて脱線するシリーズ。ブレーキをかける frenar
アルゼンチンに来てから知ったスペイン語はたくさんあるんだけど、アルゼンチン独特の単語や言い回しではなくて、どうしてこれまでこれを知らずに生きてこれたのだろう、というのも結構あります。
その1つがfrenar。マニュアル車の練習してたときに、インストラクターに「frena!」と言われてわからず「?」となっていたのが恐ろしい。frenarはブレーキをかける、という意味です。ね、なんで知らなかったん??
止まるのparar はよく使っていたんだけど、frenar は本当に初めて知って驚いたからその瞬間をよく覚えています。
ふれなーる、小林製薬の薬か、はたまた予備校にありそうな響きですが、英語のbrakeとは全然違うんだなーと思うと同時に、「ブレーキをかける」の和語の動詞がぱっと思いつかない。
速度を落とそうとする、速度を抑制する?
ひとまずbrakeとfrenarの語源をググってみました。
Frenarはfreno、ラテン語で馬のくつわ、から生まれた動詞です。
大昔に人間が馬を飼い慣らし、走らせ始めた馬のスピードを緩めなきゃいけないという超重要なアクションを元に生まれたなかなかしっかり歴史と意味を感じる言葉です。
馬時代はfreno は引くものだったけど車時代はfreno は踏むものですね。
言われてみたら日本語にもほとんど同じ表現があります。「手綱を締める」。くつわの先は、手綱です。とっても似た状況です。しかしこちらは人が勝手なことをしないように厳しく取り締まるような意味で、スピードを落とすとは違います。
くつわに戻ると、くつわは、はみとも、言います。
くつわは、「口輪」から、はみは「食む」からきています。freno自体の語源もラテン語の噛むことから来ているようなので、似ています。
もしラテン語と同じ形で日本語が進化してたら今頃日本語でスピードを落とすことを「くつわる」とか「はみる」とか言ってたかもしれない?
そういえば「羽目を外す」は、その「はみ」が転じたらしい。確かにはみを外した馬は自由に走り出しそうだもんね。
日本独自っぽい馬を止める言葉がまだわからないので、遠山の金さんが馬のスピードを落とすときになんと言ってただろうかと想像してみました。
はいし、どうどう!!
どうどう、かな?
うむむ。
さて、一方英語のbrake は古いオランダ語から来ているようで、亜麻を叩き潰す器械から、器械のスピードをコントロールするbrakeと、壊すbreak が生まれたようです。
そのイメージから日本語の「歯止めをかける」を思いつきましたが、歯止めはスピードを落とすというよりは動きを封じ込めたり、動き出さないようにするものだからこれもちょっと違います。
馬のくつわ由来、器械由来、どちらも惜しい。
ブレーキ以前の日本ではなんて言っていたんだろう。紫式部は光源氏が牛車を遅くしろっていう場面(があれば)、なんて書いていたのか。。
日本で昔、スピードがあるものと言ったら剣とか矢とか飛脚?
勝手に作ってみよう。剣が重くなる、矢が風で飛ばない、飛脚が怠ける。。。聞いたことがない。
それとも昔の日本にはスピードを落とすという概念がなかったんだろうか。走るか止まるか、生きるか死ぬか。武士道若しくはマグロの世界。
もう少しfrenoをうまく使いながら生きたいお年頃です。
日本独自のスピードを緩める意味の動詞や慣用句、知っている人教えてください。