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IDE応援上映「ヴィクラムとヴェーダー(ヒンディー版)」のネタバレ有り感想

はじめに

少し前に通常上映の「ヴィクラムとヴェーダー」のヒンディ版とタミル版の比較感想書きましたが、今日はヒンディ版の2回目を見てきました。
結果として、応援上映だったんですが、みんな見入っちゃって(最初こそシャラシャラと音はなったものの)静かに映画に浸ってました。

実は本日7/2は新宿ではこのインド大映画祭での応援上映、大森はインディアンムービーウィークで、ヴィジャイさんの「マジック」があって、ほぼ同じような時間で上映で、当初どっちに行こうかずっと迷っていたんですよね。どちらも2回目が見たいと思っていた作品なので。
最終的にマジックはまだ今後やってくれる可能性があるんじゃないかと期待して、ヴィクラムとヴェーダーをとりました。
昨日の野獣一匹の上映の後のトークで、ヒンディ版映画を手に入れるのにだいぶ苦労されたお話をうかがって、結果として今回はこちらに参加で良かったのかもと思ってます。

https://twitter.com/akiyama_0_0/status/1675027316546867200

ヒンディ版2回目の感想(ネタバレ有り)

「Vikram Vedha」
2回目なので話の筋が判っている分、安心して見られました。
やはりヒンディ版のヴィクラムは、終始、斜(はす)に構えた感じで余裕を感じる。そしてどんなにムサい恰好しても、ギラギラしている。タミル版の親しみやすいヴェーダーの風貌じゃないのが、明確に違いを出しているし、そもそも役者のタイプが違うからね。
改めてタミル版もヒンディ版も、別の面白さがあって好きだな。
自首してくるヴィクラムのシーン、ニヤニヤがもう既に「何か企んでいる」感で溢れている。

おさらいのためのあらすじ(ネタバレ)
冒頭のヴィクラム班が、ギャングのあじとに乗り込んでいって、全員射殺。その際に丸腰の青年が一名いたため、急遽偽装襲撃を作り上げるところから始まる。
警察上層部から、彼らのやり方に対し物言いがつき、ヴィクラムの友人で同じ班であるアッバースが「自分の作戦なので処罰は自分に」と言ってその場をおさめた。
その夜、酒をくみかわすヴィクラムとアッバース。アッバースは偽装襲撃のことで良心が痛むらしく、自分の罪が天罰となって息子に厄災(喘息の持病?)となって降りかかっているんじゃないかと吐露する。自分達のやっていることは正しいと、彼を励ますヴィクラム。
翌日、警察にヴェーダーが自首してきて、ヴィクラムに話を聞かせる。
ヴェーダーは、ギャングと係わり合いのない一般人の弟が襲われた話をし、この場合に実行犯を殺るべきか、命令者を殺るべきかとヴィクラムに問う。
二人とも倒すという回答をするヴィクラムに、一方をやっている間に他方が逃げるので、どちらか一つしか選べないと伝えると、ヴィクラムは命令者を倒すと答えた。
そこへヴィクラムの妻で、弁護士でもあるプリヤーがやってきて、彼に雇われたことで釈放を求めてきた。
同じ事件を夫婦で扱えないので、互いに相手に降りろといって譲らない二人。夫婦喧嘩になったヴィクラムは友人であるアッバースに愚痴電話をかけるが、彼はタレコミがあって現場へ向かう途中だった。

ヴィクラムは、冒頭のシーンで誤って射殺してしまった丸腰の青年が、ヴェーダーの話に出てきた「シャタク」だと気付く。そして先程のアッバースの話の中に出てきた「チャンダー」も、その「シャタク」の幼馴染と同じ名前だと気付く。もしやと思い、アッバースに電話をかけるが通じない。慌ててタレコミのあった工場へいくと、銃撃戦によるいくつもの死体と、チャンダーおよびアッバースの死体も見つかった。
ヴェーダーが自首してきた際に、彼との会話の中で、シャタクを誤って射殺してしまった際の話でアッバースの名前を出してしまったことで、彼がヴィクラムのいう「命令者を殺せ」を実行したと確信するが、その時間のヴェーダーにはアリバイがあった。また警察では、チャンダーの右手に、アッバースを撃った銃があったことで、彼女がシャタクの仇としてアッバースを死なせたのではないかという結論になった。

アッバースの件ではアリバイがないため逮捕は出来ないが、別件で逮捕になるだろうという連絡を受けたプリヤーは、弁護士としてヴェーダーに接触して書類に署名を貰おうと出かける。
彼女の車の後を追う、ヴィクラムたち。しかし最終的に尾行をまかれてしまい、下町の一角で見失う。どこの家が隠れ家なのか判らないヴィクラム班は、聞き込み調査を開始し、彼が隠れ家からそっと抜け出すのを見越して、ヴィクラムは待ち伏せをした。アッバース仇をうちたいヴィクラムは、群衆の中で彼を射殺はできないと手錠をつけて車に乗せ、上司にも連絡を取った上で、彼を人気のない森のような場所へ。そしてそこで彼をどうにか理由をつけて射殺しようと試みるが、最後の遺言かわりに聞いて欲しいと、ヴェーダーは再び語りだす。

ヴェーダーの頭の良い弟が事業を始め、彼のボスがそれに投資する。ボスから預かったお金だが、それを一度はチャンダーが誘拐を装って持ち逃げをする。しかしお金よりも大切なものに気付いたチャンダーは、戻ってきて、ヴェーダーは金を取り戻すが、ボスからはその落とし前としてチャンダーを殺せと命じられる。ボスには逆らえない。しかし子供の頃から彼女を知るヴェーダーには、容易に実行できるものでもない。
ヴェーダーはヴィクラムに問い掛ける。
弟の幼馴染を殺してボスに忠誠を示すのか、彼女を助けるためにボスを敵に回すのか。
ヴィクラムは答える。ボスは確かに脅威だが、弟にとっては世界はお前とチャンダーしかいないから、この場合は弟を選ぶべきだと。
「何故なら、シャタクは無実の人間だから」とヴィクラムが呟き、自分の言葉にハッとする。
丸腰のシャタクを撃ったことに対する答えを、自ら示してしまったヴィクラムを、ヴェーダーは不意を突いて形勢逆転。ヴィクラムの首を締めあげながら、ヴェーダーは正義とは?悪とは?と問い掛ける。

ヴェーダーの問いに答えられないまま、ヴィクラムは彼を逃がしてしまう。
アッバースを殺した犯人は誰なのか、正義とは悪とは、答えに行き詰るヴィクラムは、妻を通じて、ヴェーダーと電話連絡をとることに成功。
ヴィクラムは、シャタクを罠にかけて警察に射殺される状況を作り出した犯人が彼の関係者であるバブルーだと伝える。ヴェーダーはバブルーへの復讐に赴き、ヴィクラムはその現場へ駆けつける。
そして再びヴェーダーは、彼に語りだす。
警察の悪の部分の話を始めた。
バブルーは、アッバースを殺した真犯人ではない。
アッバースも、息子の治療費のために大金が必要で、ギャングと繋がっていた。
そしてヴィクラム班の面々はそれぞれ何故か金回りが良い。
刑事の給料だけで賄えるものではない。
ヴィクラムは、自分以外の班のメンバーがすべて賄賂をもらっていたことに気付く。
ヴェーダーをおびき出すためには、チャンダーを連れてきてシャタクを呼び出し、それによってヴェーダーが出てくるという計画によるものだった。
しかし良心からか足抜けしたいと言い出したアッバースを、保身のため班のメンバーによって射殺したのだと知る。

以上の流れを知った上での2回目感傷は、要所要所に伏線があったことを確認できた。
まず冒頭のアジト乗り込みシーン。班が踏み込んだ際に、アッバースが敵を撃つことを躊躇って、それを不審に思うヴィクラムの表情が見える。
初見はここを見逃していた。
そして夜、アッバースとヴィクラムが酒を飲みかわす際に、アッバースが自分の罪に対し、良心の呵責に苛まれる部分が、偽装襲撃のことではなく、賄賂を(治療のためとはいえ)受け取っていたことなんだと判ると、彼の苦しみの表情が本当に辛そう。本当は、ヴィクラムに打ち明けたかったのかもしれない。
全部のシーンが、最後の伏線回収に繋がっている。

タミルとヒンディの違いは、
タミル版のヴェーダーの弟の愛称は「虎」である「プリ」、ヒンディ版は100点とる頭の良さから「シャタク」。

あとタミル版って、ヴィクラムもヴェーダーも、立場は違えどやっていることは同じだろ、境界線はあってないようなもの……という感じの印象に対し、
ヒンディ版はヴィクラムの堅物度があがったせいか、「貴方は正義、私は悪。でもやっていることは同じでは?」みたいな真っ向勝負からの、境界線の曖昧さが出ていた。

あと当初ヒンディ版ってリティクという存在のギラギラ加減で、悪が目立って、ヴィクラムが負けていないか?という初見感想だったんだけど、
今回2回目を見たら少し印象が変わった。
確かにヴェーダーのギラギラ感があるんだけど、それってヴィクラムの存在によって際立っているギラギラ感なのだと気付けた。

思い出したのが、「ガラスの仮面」で「ふたりの王女」の回、上演後の客席や評論家の感想は「圧倒的な闇、姫川亜弓の闇が勝っていて、光が負けている気がする」みたいな感じだったのに対し、黒沼監督が「光があるからこそ闇がひきたつ」みたいなことを言っていた気がする。なんかそんな感じ。

もう少し思い出した事あれば、追記します!