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【9月1日は防災の日】前編:空き家と災害リスク—放置がもたらす危険

最近、地震や台風による災害が増えてきており、地震については、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表するなど、とても不安を感じることが増えてきていますね。子供の頃から東海地震が来るかもしれないと言われ続けてきた、私たち静岡県民にとっても、この情報にはドキドキして、日々の生活の中で災害リスクを意識せざるを得ませんでした。

9月1日の防災の日を前に、空き家と地震や台風などの災害の関係について改めて考えてみたいと思います。前編では、どうして空き家が災害のリスクを増大させるのかについて解説していきたいと思います。


空き家が災害リスクを増大させる理由

空き家は、放置されることでさまざまなリスクを引き起こします。特に、地震や台風などの災害が発生した際、老朽化した空き家は大きな危険をもたらす可能性があります。

大きな被害が起こる主な理由

  • 老朽化 長期間放置された空き家は、建物が老朽化し、構造的に弱くなります。特に屋根や壁、基礎部分が劣化すると、強風や地震の際に倒壊するリスクが高まります。台風では強風による屋根瓦や外壁材の飛散、地震では建物全体の崩壊が懸念され、周囲の建物や通行人に危険を及ぼします。

  • 不適切な管理 空き家が適切に管理されていない場合、窓ガラスや扉が破損したり、建物が腐食していることが多いです。これらの損壊部分が強風や地震の際に飛び散り、周辺地域に被害を与える可能性があります。

  • 雑草や倒木 空き家の敷地内の雑草や木々が伸び放題になっていると、台風による強風で木が倒れることや、枝や雑草が飛散することで周辺に迷惑や危険をもたらすリスクがあります。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

空き家は築年数が古いケースが多く、最近建てられた家とは「耐震基準」が異なっているのも、災害を引き起こしやすい理由の一つです。

耐震基準とは?

”耐震基準”とは、地震に対して建物がどの程度の耐力を持つべきかを定めた基準のことです。

日本では、地震が頻発するため、建物の安全性を確保するために詳細な耐震基準が設けられています。1981年6月1日から適用されている「新耐震基準」は、震度6強から7レベルの地震にも耐えられるよう設計されています。

一方、それ以前に建てられた建物は「旧耐震基準」に基づいており、これは震度5強程度の地震に耐える基準です。このような旧耐震基準の建物は、現在の大規模な地震に対して十分な強度を持たない場合が多く、放置されることで倒壊のリスクが高まります。

例えば、1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災では、旧耐震基準の建物が大きな被害を受け、多くの倒壊が発生しました。一方、新耐震基準の建物は、これらの地震にも耐え、倒壊を免れた例が多くあります。これらの事例は、旧耐震基準の建物がいかに災害に弱いかを示しており、適切な対策が必要であることを強調しています。

●耐震基準については、国交省のこちらのサイトにまとめられています。

空き家所有者の管理責任と法的義務

それでは、空き家を所有する人は、災害によって被害が起きた場合にどのように対応するべきなのか、どう責任を取らなければならないのか、についてまとめていきます。

空家等対策の推進に関する特別措置法

日本の法律では、空き家の所有者にはその管理責任が課されています。2023年12月に改正された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空き家の所有者または管理者に対し、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家を適切に管理する責務が下記のように、定められています。

定期的な点検とメンテナンス
空き家の所有者に対して、建物の老朽化を防ぐために定期的に点検し、必要に応じて修繕を行う責務が強化されています​。

  • 安全確保
    空き家が周囲に危険を及ぼす可能性がある場合、所有者には適切な措置(例:倒壊の危険がある場合は補強工事や解体)を講じる義務があります。これには、特定空家に指定される前に適切な管理を行うことが求められています​​。

  • 自治体との連携
    自治体は、管理が不十分な空き家を特定し、所有者に対して改善を求めることができ、所有者は自治体の指導に従って対策を講じる義務があります。この際、改善が見られない場合には、固定資産税の特例が除外される可能性があります​。

  • 行政代執行
    所有者が管理義務を怠った場合、最終的には行政代執行によって強制的に措置が講じられることがあります。この際の費用は全て所有者が負担することになります​。

適切な管理が行われていない空き家は、自治体によって管理不全空家や特定空家等に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除されるなど、税負担が増加するリスクがあります​。

災害時に他人や他人の建物に危害を与えてしまった場合の損害賠償について

日本の法律では、空き家の所有者にはその管理責任が課されています。民法第709条では、他人に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任があります。つまり、空き家の所有者が適切な管理を怠り、その結果として災害時に他人や他人の財産に被害を与えた場合、損害賠償責任を負うことになります。

他人や他人の財産に被害を与えてしまうケースは、下記のようなことが考えられます。

  • 管理責任と過失の評価
    空き家の所有者が通常の管理義務を怠ったと判断されると、過失責任を問われる可能性があります。
    例えば、老朽化した空き家が適切に管理されておらず、台風や地震などの災害時に崩壊し、隣家や通行人に被害を与えた場合、所有者の管理責任が問われます。

  • 賠償責任の範囲
    賠償責任の範囲は、被害の程度に応じて決定されます。例えば、建物の修理費用、医療費、逸失利益など、被害者が被った損害をすべて賠償する責任があります。保険に加入している場合には、その保険から賠償金が支払われることもありますが、保険の適用範囲や条件によって異なるため、事前に確認が必要です。

  • 災害による特別な事情
    ただし、災害が極めて異常な規模であった場合や、予測不可能な事象であった場合、所有者の過失が否定されることもあります。この場合、賠償責任が免除される可能性がありますが、最終的な判断は裁判所に委ねられます。

  • その他の法的対応
    自治体が管理不全な空き家を特定し、所有者に対して適切な管理を求めたにもかかわらず、所有者がこれに従わず被害が発生した場合、所有者の責任はさらに重くなる可能性があります。行政代執行が行われた場合、その費用も所有者が負担することになります。

このように、空き家の管理を怠ることは、大きなリスクを伴います。

続きは後編で・・・

前編では、空き家が災害時にリスクを引き起こしやすい理由と、所有者の責任についてまとめました。後編では、どのように対策したらいいのかを解説していきます。

早めの解決が何よりも大事です。
空き家をお持ちの方で、どうしたらいいのか分からない方、ぜひ一度ご相談ください。