「特定空家」とは
2013年の総務省調査によると全国の空き家数は約820万戸、全住宅の7戸に1戸が空き家という状況になっています。これが、2033年頃には空き家数2,150万戸、なんと全住宅の3戸に1戸が空き家になってしまうという民間予測となっています。
1.特定空き家って何?
まず、空き家と判断する基準は、水道やガス、電気などを1年以上使用していない、1年以上人の出入りがないといった要素を考慮して判断されます。
その中でも、特定空き家とは、国土交通省が示している基本指針である、以下の4項目のいずれかに該当する空き家のことです。
「倒壊などの著しく保安上危険となる恐れがある状態」
「著しく衛生上有害となる恐れがある状態」
「著しく景観を損なっている状態」
「放置することが不適切である状態」
特定空き家に指定される不動産の4つの状態
1:倒壊などの保安上の危険がある
倒壊など保安上危険となるおそれがある空き家は、特定空き家に指定されるケースがあります。保安上危険となるかどうかを判断する条件としては、建物が倒壊する恐れがあるケース、屋根や外壁が脱落する恐れがあるケース、擁壁が老朽化し危険となるケースなどが挙げられます。
このような状態を判断するには、基礎部分に不同沈下があり、建築物が傾いているかどうかなどを見て総合的に判断されます。
2:衛生上で有害となるおそれがある
そのまま放置すれば衛生上で著しく有害となるおそれがある空き家は、特定空き家に指定されるケースがあります。
衛生上有害となるかどうかを判断する条件としては、主に建物や設備の破損が原因であるケース、もしくはごみなどの放置や不法投棄が原因であるケースの2つがあります。
たとえばアスベストが飛散し暴露する可能性が高い状態や、浄化槽の破損によって汚物が流出している状態、ごみが放置され臭気や害虫が発生している状態などが該当します。
3:景観計画やルールに適していない
既存の景観計画やルールに著しく適合していない空き家は、特定空き家に指定されるケースがあります。これは、景観法にもとづいて景観計画を策定している場合、空き家が形態意匠などの制限に適合していない場合が該当します。
他にも、適切な管理が行われないことによって外壁の落書きが放置されていたり、窓ガラスが割れたままになっていたりする場合などが例として挙げられます。
4:周辺住民の生活環境を妨げている
さまざまな要因によって周辺の生活環境の保全を守るために放置することが不適切な空き家は、特定空き家に指定されるケースがあります。
たとえば立木の倒壊や枝折れによって枝が敷地外に散乱していたり、建物に動物が住み着いたことで鳴き声や糞尿などの被害が発生していたりして、近隣住民の生活に悪影響を及ぼしている場合が該当します。
他にも、建物が適切に管理されていないことで不審者が侵入したり、屋根からの落雪で通行が妨げられていたりする場合などが例として挙げられます。
2.特定空き家に指定された場合
特定空き家に指定された場合、倒壊の危険や不法投棄などの問題があることから、空き家の所有者に対して対応が求められます。ここでは、特定空き家に指定された際の措置についてそれぞれ解説します。
自治体からの指導・勧告
自治体から所有者に対して、特定空き家に対して修繕などの措置を行うように助言、指導、勧告、命令が行われます。
命令に対して所有者が従わない場合は、50万円以下の過料が発生します。さらに、命令を受けても改善が見られない場合、行政代執行の方法によって強制執行が行われ、建物が解体されるケースもあります。
固定資産税への影響
特定空き家に指定されて自治体から勧告を受けると、固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。「住宅用地の特例措置」の対象ではなくなるため、固定資産税は更地の場合と同じように最大6倍にまで膨れ上がる可能性があります。
3.特定空家に指定されるまでの流れ
適正管理の助言→指導→勧告→命令
空き家を適正管理する義務は所有者にあります。建物が老朽化して倒壊しそう、庭の草木が成長して道路まではみ出している、捨てられたゴミのせいで害獣が発生しているなどの場合、所有者はすぐにその状況を改善する必要があります。
「空家等対策特別措置法」では、所有者の義務である空き家の適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導、そして勧告しても状況が改善されなかった場合は命令を出すことができるようになりました。
特定空家に指定されるまでの流れ
勧告の段階まで改善されないと特定空家に指定されてしまい、
「行政によりさまざまな処置がとられる」ことになります。
そうならない為にも早めの対策が大切です。
特定空家に対する税制措置
特定空家に指定された建物に係る敷地について、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されます。これは、固定資産税の軽減措置を理由に不要な空家を撤去せずに残しておく状態を改善するためです。
特定空家に対する法的措置
勧告の時点でも適切な処理をせず行政から命令が出された場合、持ち主には50万円以下の罰金を支払わなければいけません。
それでも改善されない場合は行政による代執行により、強制撤去などの処分が下されます。
そして、この際の費用は空家の持ち主に請求されます。
4.まとめ
行政からの要請が助言・指示の段階で適切な処置をすれば、特定空家に指定されず行政から処罰を受けることはありません。また、住宅用地特例から除外されるのは特定空家に指定された次年度からなので、それまでに対処し特定空家の指定を外すことができます。このように、空家問題は早めの対策をとることで負担を減らすことができます。
5.空家のお医者さんに相談しよう。
所有者さんには一定の責任をもって空家と向き合ってほしいと、空家のおいしゃさんは日々考えています。そして、放置空家を見るたびにもったいないと思ってしまいます。
適正な知識があれば、適正な時期に保全をすれば、維持費用は格段に抑えられます。
そして、大きな声では言えませんが火災保険や補助金を上手に使えばむしろ手持ち金が増える場合もあるんです。
さらに、空家に働いてもらってお金を稼ぐこともできるかもしれません。
あなたが所有している空き家がどんなポテンシャルを持っているか、空家のお医者さんに相談してみませんか?