盗んだおもちゃの返し方- 14歳で反抗期を終えた息子とオカンの物語(7)
「あきつさん、息子くんのジャケットのポケットに入っている○○のおもちゃ、お金払った?」
あたしと同じくシングルマザーのKちゃんの息子くんと一緒に空手に行こうとしたときに、Kちゃんが聞いてきた。
息子8歳。
小学校3年生の、冬の時のお話。
*
当時は毎週土曜日、ダウンタウンにあるダンススペースを借りて空手を習っていた息子たち。その日もいつものようにおもちゃも売っている大型本屋に寄ってからから行ったけれど、どうやらKちゃんが息子のポケットに入っているおもちゃ、お金払われていないんじゃないのか? と思って聞いてきた。
「え? なんの話?」
とわたしは思ったけれど、その日の夜、息子はわたしが今までみたことがないおもちゃで遊んでいるのをみて「おや?」と思ったのだ。
まさか、盗んだのかな?
翌週もなんだか知らないおもちゃが増えている。
本屋さんでおもちゃが売っているのは2階。
半分のスペースが子供関係の本が売っていて、残り半分がレゴだのボードゲームだのフィギュアだの、本に関連したグッズなどが売っている。
エスカレーターで下がるときに、そういえば息子のジャケットのポケットが膨らんでいたような……?
息子に聞いたら「クラスメイトからもらった」だの「○○に買ってもらった」だの、どうも合点がいかない。
あ、こりゃ盗んだな。
と、その時に思った。
だって、明らかにウソをついている顔をしているし、何よりも母の勘ですわな。
そうか、盗んだか。
盗んじまったかーーーーーーーー。
いやね、盗みを働いたことがない子供なんていないと思っているし、盗むとは思うのよ。
あたしだって小学1年生の時、消しゴムとか鉛筆、はたまたシャーペンとか盗んだ経験あるからいいんだけどさ。これは成長するための通過儀礼。
な
ん
で
す
が
どうやって「盗むことはよくない」を教えよう。
くそー、また頭痛い問題持ち込みやがって!
と、正直思いましたョ。
そこで職場の日本人の皆さんに「盗んだ経験ある?」「どうやって辞めたの?」と調査。親が泣いたのを見て「やばいと思って辞めた」という意見が多数だったんですよね。
あたしが泣いたら辞めるかなあ……。
3年生の担任のカルロス先生にも相談(なんと! 3年連続)。
「そうか、ちょうどそういう話をしようと思っていたから、ありがとう」と言われたことは覚えている。
どうしよう、と悩んでいる間にも、ゆっくりと、確実に息子が盗んだおもちゃが増えていき、このままではキリがないなと思って、真剣に聞いてみた。
「ぼくが買ったの」
ほほう。
そのおもちゃはまだ箱に入っていて、ちょうど小さな息子のジャケットのポケットに入る大きさ。某美術館のシールが貼ってあって、10ドル弱のもの。どうやらミュージアムショップで買ったらしい。二つもね。
「レシートは?」
「捨てた」
「本当に買ったの?」
「買ったよ!」
「どこで買ったの?」
「XX」
「某ミュージアムショップのシールが貼ってあるじゃない」
その瞬間、息子の目が一瞬泳ぐ。
そしてばれた! という顔をした。
細かいことは覚えていないけれど、盗むことはよくないと言うことを伝え、そして彼が大切に、大切にとっておいた100ドルのピン札を持って、そのミュージアムショップへ盗んだおもちゃを持っていくことにした。
ミュージアムショップには息子が盗んだおもちゃが山積みにされていて。
そりゃね、他の色や大きさがあると欲しくなるよね。
だけどお金は持っていないし、ピン札はピン札のまま取っておきたいし、お母さんはぜったいに買ってくれないし……で、その結果盗み決行。
うん、気持ちはよく分かる。でもやっちゃいけないことだから、レジの前まで連れて行き、自分で「盗んでごめんさない」と言いなさい、と伝えた。
って、もちろん言えるわけではなくて。
二つのうち一つはまったく手をつけてないから返せたけれど、もう一つは箱を破っておもちゃで遊んでしまったので返却は不可。なので一つだけの料金を払うことにした。
もちろん、お店側としてみれば盗まれていることなんて沢山あるだろうから、盗んだ商品をわざわざ返しに来た私たち親子に驚いていたけれど、レジのおじさんはにっこりと笑って最後に「ありがとう」と言った。
息子は終始顔を真っ赤にしながら怒っていて
「お母さんはボクの100ドル札を盗んだ、盗んだ」
と、ことある毎にずーーーーーーーーーーーーーーーっと言っていた。
盗んだのは、お前だろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
物を盗むことに対してどうやって教えよう、と息子のサイコアナリスト・マイクにも何回か相談していたので、この経緯を伝えたら「あきつ、エクセレント!」と言ってくれました(マイクからの助言は忘れてしまった)。
ついでに息子へのフォローをよろしく✨ とも頼んでおいて。
これをきっかけに、物を盗むという行為はなくなり、これが功を奏したのかね! やったね! とるんるん気分でありましたが、数年後、思いも寄らぬことをされて、バトルが激しくなっていくのでした。
それはまた別のお話。
2006年生まれのアメリカ人とのハーフの男の子のいるシングルマザーです。日々限界突破でNY生活中。息子の反抗期が終わって新しいことを息子と考えています。