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Sumino Hayato Piano Recital with TOWMOO in Seoul (15 Dec. 2022)

ソウル公演、何もかも素晴らしかった!角野さんにまた新たな世界に連れて行ってもらえた。特にRhapsody in Blue (Arr. Hayato Sumino)にはこれまで以上に壮大な世界観を感じ、ただただ圧倒された(ヘッダーは延世大学校の100周年記念館)。

角野さん、韓国ツアーのご成功おめでとうございます!!

今年は角野さん(以下敬称略)にとって国際舞台での活躍が本格化した記念すべき年になったと思う。4月のハンブルグでのjump-inを皮切りに、夏にブタペスト、パリと欧州でのコンサート、秋以降は9月にNOSPR来日公演のソリストとしてツアーに参加、10月にシンガポール、台湾3ヶ所、12月に韓国3ヶ所とアジアでのリサイタルも行われ、ますます注目されるアーティストに!この内、NOSPR(4公演)シンガポール、ソウル公演に行けたことに深く感謝している。

ソウル公演について記憶が新鮮な内にまとめた感動を(語彙力足りず、拙い文だが)以下の通り残しておきたい。ソウル公演にご関心を持った方、前の方(備忘録)を飛ばし、ざっと流し読みして下さい。

ソウルの気候、ホールと観衆

公演当日の昼頃からソウル中心部では雪が降り始め、夕方までに10cm前後積もった。前日午後は晴れて気温は-5, 6度、夜は-8, 9度とかなり冷え手袋と帽子が必須の寒さだった。15日は気温が0-2度まで上がり、前日より暖かく感じた。

15日13時半頃の雪が降る風景

会場は延世大学校(Wikipediaによれば、1885年に設立された韓国で最も古い大学)の新村キャンパス内にある100周年記念館だった。本大学校には音楽大学(器楽科含む4学科)もあり、ホールが敷地内にあるのも頷ける。収容人数は約900人、仁川、釜山の会場と比べると小規模で、場所の利便性もある故、最も早く完売になったと記憶している。

100周年記念館の外観(公演日17時頃撮影)

建物のロビーにポスターが飾られ、左側がホール入口に繋がるスペースとなっている。

ロビーにあった大型ポスター
ホール入口手前のスペース

舞台のみならず、内部は木目調の壁に囲まれ、木の温もりを感じるホールだった。個人的に気に入っている神奈川県立音楽堂(木のホール)を彷彿させる空間だった。

100周年記念館(開演直前、最後方の左側通路から撮影)

客席は最前列から後方まで緩やかなカーブがあり、どの場所からも舞台がよく見える造りと思われた。私の席は1階左ブロック前方の通路側。舞台が少し高めだが、私の席は舞台を少し見下ろす位の丁度よい高さで、鍵盤と角野の横顔がよく見える位置だった。

開演前、観衆の人物観察をしたところ、Yonsei Universityと書かれたジャンパー(部活動で揃えて作ったような感じ)を着ている学生さん達を見かけるなど、全体に若い方々が多い印象を受けた。また、男女比はほぼ1:1と感じるほど、若い男性の姿を目にした。

延世大学校の音楽大学の学生さんたちもいたのかな。TOWMOOのYouTube動画で角野とバトル(笑)を繰り広げ、善戦した学生さん達、ソンワンやスルギがいるか、少し探してみたが、残念ながら見つけられなかった。

開演前の挨拶やプログラム

19時半の開演時間が少し過ぎ、場内が暗くなり、下手からTOWMOOの関係者らしき女性がマイクを持って登場、角野のプロフィールを韓国語で読み上げ(ショパン・コンクール、東京大学、Cateen、YouTubeなど、聞き取れた単語から類推)、プログラムの概要も紹介していた(気がする)(開演に先立ち、演奏中の写真・動画撮影は禁止との放送が英語で流れた以外、アナウンスは全て韓国語だった)。

当日のプログラム冊子(演目、TOWMOOの取り組み、角野のプロフィール、全ての曲解説(全10ページ);極一部の英語表記を除き、韓国語)は、3,000ウォン(約315円)で販売され、A4のパンフレット(角野のプロフィールとプログラム;英韓2ヶ国語)は無料。Meet & Greet (M&G)チケットは公演チケット所持者のみが購入でき、10,000ウォンでTOWMOOの白いエコバッグとプログラム冊子付きで販売。

プログラム・M&Gチケット売場、柱に貼られているものがA4パンフ(販売開始前に撮影)

本題に入る前にもう一点触れたいことがある。私が気づいた範囲ではあるが、ピアノの横と1階最後方の中央に撮影機材があった。何れかの演奏がTOWMOO and/or Cateenのチャンネルから上がる可能性があると期待したい。

舞台にあった撮影機材

前半: All Chopin Program

All Chopin、これまで知っているスミノショパンより、より洗練された演奏というのが、前半を聴き終えた第一印象。彼が1音目を弾き始めた途端に、その場の空気が変わる、一瞬にして彼の世界に連れて行ってもらえる。彼がショパンを弾く時の没入感、当たり前かもしれないが、他の作曲家の曲を弾く時とは明らかに違う、とても特別なものを感じるが、今回もそれを強く感じた。今後色々な世界にますます引っ張りだこになっても、これからもショパンはずっと弾き続けていただきたい。。

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開演前の挨拶をした女性が舞台袖に戻り、しばらくして角野が少しはにかんだ笑顔で登場すると、早くも歓声(まだ遠慮気味の音量だった)が上がり、韓国で待ち焦がれていた方々がいるのを感じ、胸が熱くなった。

前半は昨年のショパコンの演目から6曲。今は日本でAll Chopinプログラムを聴く機会はないため、角野さんのショパンが好きな私には前半だけでもソウルに飛んでくる価値があった。

最初はスケルツォ1番Op.20。通常より少し低めに見えた椅子にゆっくり腰掛けた角野はしばらく鍵盤を静かに見つめ、気持ちを落ち着けているように見えた。固唾を吞み、1音目を待っていた時間は少し長く感じた。

1音目の鋭い不協和音が鳴り響いた途端、ホールは一瞬にして緊迫感に包まれ、続く角野の音に集中するかの如く、観衆が息を潜めている気配を感じた。

中間部のポーランドのクリスマス・キャロルが引用されているところに来て、ホールに平穏な空気が戻ってきた。弱音で奏でられる旋律が木のホールに響き、しあわせな気持ちに浸った。

突如、不穏な不協和音が再び鳴り響き、暗闇の中に突き落とされた。また息を吞んで角野の音に集中し、最後の1音の余韻に浸って終わった。ひたすら音のパワーに圧倒された時間だった。

観客から大きな拍手が送られる中、角野はゆっくり立ち上がり、深く丁寧にお辞儀をして舞台袖へ。

次はノクターン13番Op.48-1。ショパンの思いや人生がぎゅっと凝縮されているような壮大な一曲。私も特別な思い入れがある。

冒頭ハ短調では、鍵盤をそっと撫でるような感じで1音1音大事に弾く姿がショパンに何か語りかけているようで、それらの音が心の奥底に沁みてくる。この日の午前中に訪れた昌徳宮の庭で雪が降りしきるなか、鳥が単調に鳴いていた光景も目に浮かび、角野の演奏から冬の庭の「侘び寂び」も感じた。

徐々に思いが溢れてきて抑えきれなくなりそうなところでコラールハ長調へ。バッハ(の平均律)を感じる和声に聞き入り、教会で祈りを捧げているような神聖な気持ちに。木のホールでの角野のコラールのハーモニー、とにかく美しかった。

次第に(舞台に)エネルギーが集まってきてクライマックスを迎え、力強い打鍵で感情を爆発させているような後半「agitato」以降、高ぶる感情が重厚なハーモニーからダイレクトに伝わってきて、心を大きく揺り動かされた。

ドラマティックな短編映画を見終えた後のような充足感があった。私が最も好きな角野の渾身のノクターンOp.48-1(予備予選の動画)をおいておく(概要欄にタイムスタンプあり)。

ノクターンを弾き終えた角野はしばし首を垂れたまま余韻に浸り、察した観客は静かに見守り、彼を待った。そのまま続けてエチュードOp.10-1を弾き始めた(この曲の流れ、予選1次と同じだ!と、帰国後に気づいた)。

久しぶりの生演奏、右手のアルペジオの粒立ちのいい音色、芸術作品のような滑らかな指の動きに見いる --- 至福の時間。

角野はここでも左手の和音の余韻を味わいながら、前傾姿勢のまま。しばらくして徐にバラード2番Op.38を弾き始めた。嵐が来る前の静けさを思わせる最初の牧歌的な旋律が美しく心に沁みる。「嵐パート」(正確にはPresto con fuocoで始まる部分)で感じたのが、以前聞いたより、低音域(の弦)が太く鳴り響いていた。ホールの構造上、高音域より低音域の方がより響きやすいのか、今回のピアノの低音部が鳴りやすいのか、角野が敢えて強めに鳴らしていたのか。何が理由か分からないが、今夜の演奏は、嵐が来る前の静けさと嵐が来た後の荒々しさのコントラストがはっきりしていて、胸に迫ってくるものがあった。

3曲通しで弾き終えた角野は立ち上がって深くお辞儀し舞台袖に姿を消した。

バラ2は先程の予備予選動画の最終演目でもあるが、予選2次の動画リンクも載せておきたい。

少し明るくなった照明の下、ワルツ1番Op.18が始まった。躍動感に溢れ、軽やかなリズムの刻まれ方が絶妙で、本人が楽しみながら弾いているのが伝わってきて、観客も笑みが溢れる。弾き終えてすぐ観客席からは小さい歓声が上がり大きな拍手が送られた。ソウルの観客の反応(とそのタイミング)が絶妙で素晴らしいと感じた。

角野は一旦立ち上がって、口元を緩ませ少し笑顔を見せながら深くお辞儀をし、椅子に座るや否や、ポロネーズ6番Op.53を弾き始めた。若干速めのテンポは彼の持ち味だが、バラ2「嵐パート」で感じたように低音域の音量が若干大きめで、右手の旋律が少々消され気味の部分もあったが、これはこれで弦の響きを楽しめ、私は嬉しかった。音量バランスにすぐ気付いて、音の出し方を調整していて、さすがだと思ってしまった(プロに対してすみません)。

勢いがあって力強さが漲っていた英雄ポロネーズ。韓国の観客も気に入ったようで、大きな歓声を上げる方々もいて、大きな拍手とともに前半プログラム終了。角野の表情も充足感に満ちていた。

話が脱線するが、隣の若い男性2人は1曲終わるたびにスマフォを遠慮気味に点けて何かやっていると思ったら、パンフレットに近づけ次の曲を確認しているようだった。1曲ずつ曲名を見ながら大事に聴き入っている感がいいなと思った。

前半の演奏中、観客は物音一切立てず、静かに聞き入り、3曲連続で角野が弾いた時にはそれを察して拍手せずに見守っており、観客がクラシック音楽の聴き方に慣れている層が多いように思った。そういう観客のマナーにも感動し前半を満喫できた。

後半:Gershwin, Kapustin, and Hayato Sumino

後半の現代音楽+自作曲、全く飽きることなくずっと楽しかった。時にスリルを感じ、興奮した。「あれ?私、今、どこにいるんだっけ?」と思わせる。ピアノ1台だけでこれだけ楽しませてくれるって改めてすごい!と、何を今更・・・という感想を敢えて言いたい(伝わる方にだけ伝わって)。

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約20分の休憩を経て、舞台に戻ってきた角野はGershwinI Got Rhythm (Arr. Hayato Sumino) を弾き始めたが、Level 1がいつもよりスローテンポで、結構タメを入れていた。Level 3で指パチンがホールに鳴り響き、両足でリズムを刻んだり、全身の動きがとても自由。Level 10はもう笑うしかない超絶技巧で、終わった途端に観客一同、大喜びの拍手。

次はKapustin8つの演奏会用練習曲Op.40から最初の3曲。8ビートのラテン調のリズムが刻まれる1曲目"Prelude"はダイナミックでキレッキレ、2曲目"Rêverie (夢)"ではJazzyな和声を美しく響かせ(実際にはとても複雑そう)、3曲目"Toccatina"で再び8ビート、同音連打が色々な音程でテンポよくクリアな音色で刻まれ、疾走感溢れる演奏の最中に指パチンも。いや、もう、かっこよすぎ!!Toccatinaは幾つかの音源の聴き比べをしたことがあるが、これまで聞いた中ではCateenがベストだと確信。

弾き終えるや否や、拍手喝采。歓声も上がった。これは誰もが歓声を上げたくなるレベル。興奮する観客を前に穏やかに微笑みながら深くお辞儀をするのは前半の時と同じ。

ジャズ寄りの2曲を弾き終え、ホールの観客は魔法使いCateenにも魅了されたようだった。舞台に戻ってきた角野は、彼の過去2年の月日の経験や思いなどが凝縮されている自作曲を3曲続けて披露。

最初は大猫のワルツ、素人が生意気な発言をするようだが、聴くたびに洗練されていっているように感じる。下の動画に(ソウル公演に行ったであろう)韓国の方が「昨日のリサイタルでこの曲をとても楽しみました」と韓英2カ国語で書き込んでおり、角野がいいねを付けているのを偶然見つけ、このささやかな交流に心が温まった。コンサートで聴いた曲をYouTubeのチャンネルで探し、映像付きで楽しめる。改めて考えるとすごいこと。国内外での公演や付随する活動で多忙極めていても、YouTubeチャンネルの視聴者を大事にし、運営を続けているCateenさんにこちらでも改めて感謝申し上げます。

大猫の次は、前半で聴いたバラード2番とエチュードOp.10-1をそれぞれオマージュした追憶、胎動が続いた。こういうプログラミングは韓国が初ではないか。私はここもソウルに来たいと衝動に駆られた理由の一つ。

追憶について、当日のプログラム(有料)の解説が今まで聞いたことがない内容も含まれていたので、以下に紹介したい(翻訳アプリを活用しつつ訳出)。

追憶(Recollection)はショパンのバラード2番の旋律に新たなリズムと柔らかさを加えた作品で、角野の旋律にショパンのテーマを載せ、まるでピアニストとショパンが音楽のなかで出会ったような印象を与える。作品全体には、角野とショパンのテーマが含まれており、永遠に続く2人の会話のように感じられる。ショパン・コンクールが開催されたワルシャワで角野が見て感じたことから生まれたこの作品は、ショパンの魅力とロマンティックさをよく表している。
PROGRAM NOTE, SUMINO HAYATO PIANO RECITAL with TOWMOO

当日の演奏は、スタインウェイで演奏しているのにアップライトで弾いているあの雰囲気を再現しようと、低音の弦を弾(はじ)いているような音を鳴らしたり、鍵盤のタッチやペダリングの工夫でいろいろなニュアンスの音を出しているようにみえ、しばらく細かいところに見入った。でも、あんまり観察しすぎず、頭を空っぽにして音の世界に浸ろうと、後半は目をつぶって聴き入った。かつては、追憶を聴くと、胸が締め付けられるような感覚を持ったが、今では気持ちが落ち着く不思議なパワーを感じるようになった。

胎動についても、当日のプログラム(有料)の解説が良かったので以下に紹介したい(翻訳アプリを活用しつつ訳出)。

胎動(New Birth)は、ショパンの練習曲第1番(Op.10-1)の旋律を元にした作品で、力強いアルペジオを加えて豊かな旋律を表現するとともに、壮大な低音を生かした曲である。角野はかつてショパンコンクールの予選で緊張したが、その瞬間ショパンの偉大さを感じたという。それで彼は新しい道に向けた着実な歩みに拍車をかけることができるように、活気のある希望と明るい未来を感じさせる作品「New Birth」を書いた。
PROGRAM NOTE, SUMINO HAYATO PIANO RECITAL with TOWMOO

右手で奏でられるエチュードOp.10-1のアルペジオは滑らかな水の流れのように、左手は大きな木から幹がぐんぐん伸びていくような光景が浮かびつつ、彼の揺るがない強い意志や自信を感じた。舞台が小宇宙のように見え、彼が光を浴び、風を受けながら、颯爽と走っているようでもあった。

追憶、胎動と聴く中で、私の中で何か込み上げてくるものがあり、気がついたら涙が頬を伝っていた。コ口ナ禍で世界と断絶され、色々止まっていたことが漸く動き始めた。プライベートでもシンガポールや韓国など海外に行けるようになり、自由な旅ができるようになってきたことに感謝し、胎動に込められた「新しいものを生み出していく」というメッセージを私も受け止め、止まっていたこと(私事だがライフワークの一つ)を再開していこう、少しずつ頑張ろうと思わせて貰えた。

胎動の後も拍手喝采。一旦舞台袖に姿を消し、再登場して、Sleigh Ride (Arr. Hayato Sumino)が始まった。開場前に散策した延世大学校の敷地内にもそりすべりができそうな場所が幾つかあったなー(笑)と思い出しながら楽しく聴いた。昨年の動画も思い出しつつ、今回はスタインウェイ&指パチンのみのバージョンだったが、充分に華やかでホールにfestive moodが広がった。

角野は立ち上がってお辞儀をした後、最後のラプソディインブルー (Arr. Hayato Sumino)を弾き始めた。今回はピアニカ無しのスタインウェイ1台。

私はこの約1ヶ月半の間に配信含め角野のラプソディを複数回聴く機会に恵まれたが、彼がNYから戻ってきて間もない12/4のサントリー1万人の時にオケと合わせて弾いた編曲版にものすごい衝撃を受けた。

冒頭からこれまで聴いたことがないアレンジを入れていたが、それよりも圧倒されたのはカデンツァ、特に後半のカデンツァの編曲は数学好きな彼が緻密に計算して作ったように聴こえ、とにかく圧巻だった。これは10月下旬の"のだめ"、11月のトリスターノとの2台ピアノ版から確実に変えている。NY滞在中じっくりと練ってきたものを初披露したのではないか。

これを韓国ソロ公演でも披露してくれたら!と期待に胸を膨らませ、ソウル公演の後半プログラムではラプソディを最も楽しみにしていた。

12月17日にTBSで6分ほど、ラプソディ(ファン目線ではいいとこを凝縮させた名編集)が流れ、カデンツァ(後半)はソウルで聴けたのとほぼ同じ編曲だったかと思った。その場の即興も多少あったと思うが、骨格は同じ。

素人が言葉を尽くしても限界があるので、TVerなどでぜひ、その6分を見て頂きたい。昨日の放映から2週間は視聴可能。この6分は、冒頭、ピアニカ入り中間のカデンツァ、後半のカデンツァ(ここだけで3分強)という構成になっていたかと。

ラプソディが終わった直後の歓声と拍手はもうほんと凄かった。前半のようなクラシック音楽が好きな客層が多いような印象があったが、後半の冒頭と最後のラプソディ部分も大いに盛り上がっていた。

あいさつとEC

何度かのカーテンコールに応え、マイクを持って舞台に登場。韓国の観客は拍手とともに歓声を上げた。角野は期待に応えるかのように

「밥먹었어? (パンモゴッソ?)」と。

韓国の観客は大笑い。その後も韓国語で流暢に話していた。恐らく「私の名前は角野隼斗です。今日はコンサートに来て下さってありがとうございます。韓国でコンサートができて嬉しいです」だったかと。というのも、この直後「I am sorry. Let me speak English.」みたいなニュアンスの英語を話し、類似の内容を英語で言っていたから、韓国語の方も大方あっているのではないか。

その後「Oh, one thing! (あ、1つ(言い忘れた))」と人差し指を立て、韓国語で何かを話し、再び観客は笑っていた。私は「진짜(チンチャ)=(本当)」しか聞き取れなかった(笑)。多分「밥먹었어?(パンモゴッソ?)」に関連して「韓国のご飯は本当に(辛かったけど)美味しかったです」みたいなことを話していたのではないかと勝手に推察している(↓ツイートで書いていたことから想像😋)。

その後「I will play Chopin's Winter Wind.」と話すと、観客から再び歓声が上がった。

極寒のソウルで聴いてみたかったエチュードOp.25-11。右手の高速で細かいパッセージを歯切れよく1音1音美しく響かせる超絶技巧、左のバスの弦も時に太く鳴り響かせて・・・圧巻の演奏。これ以上の言葉が見つからない。彼のエチュードOp.25-11の名演と言えば、予備予選の時だと思っているので、再び貼り付けておく。

カーテンコールに応え、舞台に戻ってきて、そのままピアノの前に座りながら、人差し指を立てて「あと1曲ね」というようなジェスチャーをして、いきなり弾き始めた2曲目のECはMerry Go Round of Life。柔らかく優しい音色の人メリ、心に沁みた。

まだまだ鳴り止まない拍手に応え、再登場した角野は、ピアノの椅子に座って、きらきら星変奏曲のLevel 0を弾き始め、ホールからは笑いが起こった。ECの締めはこれだってソウルの観客も知っているようだった。Level 7の最後、角野が鍵盤から手を離すより早く、大歓声と拍手喝采が湧き起こった。右手後方の方では、まとまった人数の若者がスタオベをしていたように見えた。TOWMOOの動画に登場していた学生さんたちかな。暗くて分からなかった。総じて観客は大人しくて、スタオベする方はあまりおらず、歓声と拍手喝采で大いに盛り上がり、大成功だったと思う。

帰国後に徒然なるままに・・・

角野はシンガポール、台湾に続き、韓国でも熱く歓迎された。特に韓国はTOWMOOによるYouTubeのほか、IGやTwitter等のSNSを活用したプロモーションが素晴らしく、このプロモによりチケットが瞬く間に完売したようだった。角野のYouTubeチャンネル登録者数の急増にも貢献したように見えた。

韓国公演のプログラムも素晴らしい選曲で、前半のAll Chopin、後半の自作曲含む現代曲の展開もとてもよかった。前半でバラード2、エチュードOp.10-1、後半でこれらをオマージュした追憶、胎動というプログラミングが憎い(最高!)。

全部最高だったけど、やはりサントリー1万人に合わせ、特別に入念に準備したと思われるRhapsody in Blue (Arr. Hayato Sumino) が本当に最高だった。大阪城ホールでのオケとの共演(PA入り)Ver.の時の迫力ある演奏も良かったが、ホールでのソロVer.(生音)は彼の音のみに集中でき、特にカデンツァの神技の数々をダイレクトに体感できたことが夢のようだった。以前「ピアノは身体の一部」みたいなものと話していたが、ラプソディの時は本当に一体化していて、ピアノから、打楽器が刻むリズム、弦楽器がかけるビブラートなども聞こえてきて、彼の音色パレットがものすごい勢いで増えていて、音とリズムの魔術師になっていた。いや、これもラプソディを弾く彼を表せていない。私が知る日本語では言い表せないすごさがあったのだ。これはかてぃん奏法と言われ、後世に語り継がれていくのではないか、と思ってしまう(いろいろ意味不明なことを書いているが、後からいい表現が浮かんだら書き直したい)。この角野隼斗編曲は、ガーシュウィンのピアノ協奏曲in Fと共に来年以降販売予定のCDの最有力候補として頂きたいと強く思う。

コ口ナ禍前は、1年に数回、音楽祭や、好きなミュージシャンのライブ・コンサートに行きたいがために旅(海外)に出掛けていたものだが、2020年以降、生活は一変した。こんなに日本だけに留まっていたのは高校生以来。「人生が即興」の角野に対し「人生は旅」の私は、定期的に旅をしていないと、人生の調子が狂ってくる。旅は私の生きがいでもあるから。

私を旅に連れ出すような魅力的なプログラムと最高の演奏を届けてくれた角野さんに改めて感謝したい。今回は彼の即興演奏以上に緻密に作りこまれた編曲に圧倒された。このラプソディの編曲は、NY滞在中に作ったのか。小曽根さんラプソディを読み解くラボ続編として、サントリー1万人の第九と韓国で披露したラプソディ角野編曲を読み解くラボをお願いしたい。


角野さん、もうただただ感謝です本当にありがとう 私はずっとこれからも角野さんの音楽を聴くのが大好きです。

番外: 行き当たりばったりの一人旅

シンガポール同様、今回も角野公演、フライト、ホテルのみを予約して韓国入り。金浦国際空港到着後、モバイルWi-Fiを借りてから、ホテルに移動する地下鉄の中で旅の企画を始めた。

ハプニングもあったが、韓国の方々にたくさん助けて頂き、窮地を脱することができ、本当に感謝している。TOWMOOのYouTube動画で角野さんがピアノを弾いていた場所も一部、訪ねることができ、改めてすごい場所にピアノが運ばれていたこと、そこでピアノが弾かれたことに驚いた。TOWMOOの中の方々の企画力、行動に感服。

-9℃下での漢江のクルーズ (動画はこちら)
TOWMOOのUnderflow Cafe入口, Seoul駅, Seoullo (参考動画😎) etc.
Lotte World Tower 118階のSky Deck (117階での粋な演出はこちら
韓国の精進料理、チンチャ美味しかった!

(終わり)

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