ニャンニャン大好き!!ボランティアがつなぐ大切ニャ(な)命。ワンニャピアあきた ボランティア 佐藤隆太
動物の命をつなぐボランティア
飼養ボランティアって知っていますか?保護された動物たちへ愛情を注ぎ、身の回りのお世話をしてその小さな命を大切につなぐ、とても重要な役割を担ったボランティアです。秋田県動物愛護センターワンニャピアあきたにも、ボランティアとして活動されている方がいます。ワンニャピアあきたで、具体的にどんなことをしているのでしょう。
今回のあきたびじょんBreakでは、ワンニャピアあきた開設当時からボランティアをしている佐藤さんに、活動を始めたきっかけや猫の魅力・今後のビジョンなどを取材しました。
「動物を助けたい」という気持ち
― 佐藤さんは平日に仕事をしながら、週末にボランティアを?
そうですね。週末はワンニャピアあきたに来て、9時から16時までボランティアをしています。午前中は猫のトイレ掃除から始まるのですが、きれいにするだけではなく、猫の体調やうんちの色のチェックも並行して行っています。掃除が終わったら、来館されたお客様の案内をしています。
― ボランティアを始めたきっかけは?
母から「映画を無料で見られるイベントがある」と誘われ参加した、ワンニャピアあきたのボランティア募集イベントがきっかけです。そこでは、ワンニャピアあきたの紹介や他県のボランティア活動の紹介のほか、動物に関連する映画『犬に名前をつける日』が上映されました。映画の内容は、東日本大震災の際、福島原発の周辺地域に取り残された犬や猫にスポットを当てたドキュメンタリードラマでした。
震災当時、私は気仙沼で仕事をしていて、まさにがれきに取り残された犬や猫をこの目で見ています。内容は現実の体験と重なるシーンが多かったです。上映後には「動物を助ける仕事がしたい」と思い、自然とボランティアへ応募していました。
― 仕事とボランティア、両立するのは難しそうですね。
そんなことないです。むしろ大好きな猫たちのお世話をすることで、仕事のストレスを発散してるくらいです(笑)。 休日に家でゴロゴロしている時間があるなら、ここでボランティアしたほうがよっぽど落ち着きます。
― ボランティアを続けられる熱量はどこに?
猫好きだからということもありますが、やはり何とかして殺処分を減らしたいという気持ちが大きいですね。実際に私がお世話をしていた猫が、殺処分の対象になる経験もしています。私がボランティアをすることで、そういったことを少しでも減らす手助けがしたいんです。
犬や猫の譲渡について
― ここには、どのような形で保護された動物が集まりますか?
一般の方が保護し、飼い主を見つけられなかった動物や、家庭の事情で飼育できない動物が多く集まります。ここで保護される動物は人なれしていないことが多いので、すぐには譲渡対象にせず、時間をかけて人なれさせていきます。
― すでに名前が付いているんですね。
センターに引き取られた時に、職員が付けるんです。
― この名前は譲渡後も引き継がれますか?
あくまでも案内板に記載されているのは、仮の名前です。飼い主には責任や愛着を持って飼育してほしいので、譲渡の際には「かわいい名前を付けてください」とお伝えしています。譲渡前に猫が仮の名前を覚えてしまわないよう、スタッフは名前で呼び掛けないよう心掛けています。
― 譲渡希望者はどんな人が多いですか?
家族で来られる方が多いですね。コロナ禍になってから家で過ごす時間が長くなったせいか、初めて猫を飼育する希望者が増えました。
― 譲渡には審査や条件などあるのでしょうか。
譲渡希望者には申込書を提出していただきます。それから飼育できる環境かどうか、飼育にかかる経済的負担を理解しているかなど、飼養環境など情報収集させていただきながら審査します。
譲渡は、そのご家庭に無理が生じない頭数に制限させていただいております。災害が起きた時に、多くのペットを抱えて避難するのは難しいためです。また、新しい環境でも幸せに暮らせるよう、研修への参加や誓約書の提出などの手順も踏んで譲渡します。
猫好きによる、猫の飼い方講座!
― 猫は室内でケージ飼いされていますね。
譲渡する際は、室内飼育をお願いしています。猫を放し飼いにすると、周辺地域から苦情が出たり、猫が事故に遭うなどの危険性があるためです。ケージ内にトイレと寝床があればそこは「自分の部屋」として、ケージの外は「外の世界」として認識します。
― このボックスは?
これは、猫を病院に連れていく時などに使う「キャビン」です。猫を飼育するなら必須のアイテムです。
人なれしている猫でも、新しい環境では警戒したり閉じこもったりすることがあります。猫が今までの生活と同じく安心して過ごせるよう、飼い主にはケージやキャビンなど飼育に必要なアイテムをそろえていただきます。
― 猫は夜行性のイメージがあって、飼育するのが難しそうです。
よくそう思われますが、猫は薄暮性(はくぼせい)と言い、薄暗い夕方や朝方に活発になる動物です。人と一緒に生活していると、同じリズムで暮らせるようになりますよ。
― 佐藤さんが思う、猫の魅力は?
気まぐれなところですね。思い通りにならないところが魅力です。あとは、いたずらばっかりなとこです(笑)。でもすやすや寝ている時の顔はずっと見ていられますし、癒されますよね。
みんな動物を愛したい
― ボランティアの中で、印象的な出来事を教えてください。
「あけび」という猫が印象的でした。ある日、譲渡対象として展示していたあけびが急に体調を崩したので、急いでバックヤードに戻しました。栄養剤やエサを与えてがんばりましたが、獣医師が診察すると「難しいかもしれない」とのことでした。
それから、お客様の案内をしてはあけびのところへ行き、体調確認を繰り返したのですが…。夕方頃ですかね、あけびが亡くなってしまいました。悲しい気持ちで案内に戻ると、あけびと一緒に展示していた「もみじ」の譲渡先が決まったんです。もみじはあけびの兄弟です。その時は、「あけびの分も幸せになりなよ」という気持ちで見送りましたね。
― 無責任な飼育放棄について、佐藤さんはどう考えていますか?
みんな、「動物が好き」という愛のある気持ちから飼い始めると思うんです。無責任と言われる方は、飼育方法が分からなくなったり、間違った方法で育てているだけです。それを防ぐためには、ワンニャピアあきたや愛護施設などが、正しい動物の飼い方を啓発・発信していかなきゃなと思います。
― 佐藤さんのように動物愛護のボランティアをしたくても、直接関わるのが難しい場合はどうしたらよいでしょうか。
私の場合は労働という形でボランティアをしていますが、保護施設や民間のボランティア団体に「寄付をする」という形でも動物愛護に携わることができますので、ご自身のライフスタイルに合わせて無理のない範囲でやっていただくのがいいと思います。
― 今後のビジョンを教えてください。
ワンニャピアあきたを訪れてくれる動物好きの方からは、正職員やボランティアという肩書きは関係なく、あらゆる質問が飛んできます。それに答えられるよう知識を深めて、この先も動物の命をつなぐ活動を続けたいです。
【秋田県動物愛護センター ワンニャピアあきた】
《住所》秋田県秋田市雄和椿川奥椿岱1
《概要》犬猫の保護・譲渡、動物ボランティア活動拠点 など
《HP》https://wannyapia.akita.jp/
[聞き手:じゃんご / 秋田ブロガー兼YouTuber] https://dochaku.com