クレイジー・ラブ
私は自他ともに認める(いや、古くからのファンの方には認めてもらえないかもしれないが)プロレスファンだ。プロレスがとにかく好きだ。その中でも大好きな選手がいる。DDTプロレスリング、そしてアメリカのプロレス団体AEWに所属している選手、KONOSUKE TAKESHITA選手だ。
TAKESHITA選手は高校二年生の時にDDTという日本のプロレス団体でデビューし、今現在はDDTとAEWのダブル所属という形で活躍されている。彼のことは、彼がAEW所属になってから知った。早い方ではないと思う。AEWという大きなプロレス団体に、私の知らない日本人レスラーが一人渡米して所属している。そして、活躍している。どんな人なんだろう。それがことの始まりだった。各種オンデマンドコンテンツで彼の試合を見た。そして私は、すぐに彼に首ったけになってしまった。なんだこれ。なんだこれなんだこれなんだこれ。ファイトスタイル、入場曲、マイクパフォーマンス、そして、たった一人で渡米して日本のプロレス界を背負って闘っている姿。何もかも格好いいじゃないか! たまらない!
私はTAKESHITA選手のことを片っ端から調べた。身長187センチ、体重105キロという恵まれた体格。大阪は西成区出身。咲やこの花中学校・高校、日体大卒。中高時代は四種競技で日本トップ選手に。卒論のテーマは「ジャーマン・スープレックス」。インドア派でサブカルチャー好き。辛いものと動物が苦手。納豆は梅ダレのやつが好き。お父さんは焼き鳥屋さんを経営している、などなど……。そのスペックのすべてが眩しく見えた。知れば知るほど好きになってしまう。そしてその生き様とプロレスのスタイルが合致するのだ。彼のプロレスには、彼の人生のすべてが詰まっているような気がする。
そして2024年夏。新日本プロレス(普段私は新日本プロレスを中心に観戦している)の最も過酷な夏の祭典、G1 CLIMAXにTAKESHITA選手が出場するとのアナウンスがされた。全出場選手が発表となった時の、TAKESHITA選手の名を見た時の感動の雄叫びを、聞かせてあげたい。普段声の小さい私でも、こんなにも大きな声が出せるのだというところを、お見せしたい。しかも、新日本プロレスで一番好きな、後藤洋央紀選手と一緒に闘うのだ! おいおいおいおい! 夢がありすぎる!
試合前にTAKESHITA選手はこんなコメントを残していた。このG1で最も闘いたい相手が、後藤洋央紀選手であると。おいおいおい……勘弁してくれよ……絶対いい試合になるに決まっているじゃないか。幼少期、新日本プロレスを観ていた竹下少年は、後藤選手の試合を逐一メモし、後藤選手の試合の組み立て方などを学習していたらしい。なんだそれ。なんだそれなんだそれなんだそれ。プロレスって、あまりにも夢がありすぎるだろ。
そしてその時はやってきた。2024年8月4日、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)大会、第9試合。結果については、ここではあえて書かない。入場のことも試合後のコメントについても、何も書かない。観て欲しいからである。ただ一つ、書いておきたい。プロレスというのは、敗者なきスポーツであるということを。つまり私の中ではKONOSUKE TAKESHITA選手も、後藤洋央紀選手も、勝利をあげたのだ。あの日、あの試合、誰も負けなかった。それくらい、素晴らしい試合だった。
とにかく私はTAKESHITA選手のすべてが好きだ。TAKESHITA選手のnoteに記されている日々の雑感や記録、そこから垣間見える文才。私と同じ1995年生まれとは思えない大人の色気。「プロレスラーになりたい」という大きな夢から逆算して生きてきた人生、そして、その夢を叶えてしまったところ。マイクパフォーマンス。試合の組み立て方。レイジング・ファイヤーという格好良すぎるフィニッシュ技。例えば私が10歳の少年だったとしたら、もう憧れて憧れて仕方がなかっただろう。もしかしたら、あぁなりたいと思うかもしれない。そして、アマチュアレスリングを始めるのかもしれない。各団体に履歴書を送るのかもしれない。
大好き。もうとにかく、大好き。私がこのエッセイで書きたいのはそれだけだ。もしこのエッセイを読んでいる人の中でプロレス関係者およびTAKESHITA選手のお知り合いの方がいらっしゃったら、伝えて欲しい。京都に、クレイジーなファンがいるということを。そしていつでも、あなたの幸せを祈っているということを。今日も怪我なく一日を過ごせますように。そうファンレターに書きたいのだが、どこに送れば良いのか分からない。だからせめてアメリカに向かって念を送りたいのだが、アメリカがどっちにあるのか、分からない。