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The Year of Hibernation 2024 #20 / あたらしい星

2024年の日記を1週間単位で記していきます。
#20は、2024年5月13日〜5月19日。

今週はまた調子が悪く、先週一週間頑張った…と言っても普通に生活しただけだが、その揺り戻しでしんどいのかな、と考えて、仕事を休んでしまう自分を何とか許した。今週は休んではならない大仕事があるから、それまでに元気にならなければ、と思って。

週末のアートブックフェアにはたくさんの出展者が居て、見て回るだけで刺激的で面白く、知恵熱が出そうだった。それぞれにたくさんの本を持ち寄ってきた中でわざわざ私のブースに足を止め、何人かの方に本を買って帰っていただけたこと、とても嬉しく思う。知人・友人も少し居たが、殆どが初めてお目にかかる方だった(昨年の展示を観に来てくださったや、観に行きたかったけど行けませんでした、という方も居た!)。

フェア2日目、一人の男性が私の作品について、どんなコンセプトで制作されているのですか? と訊ねてくださった。そんな風に聞いてくださったのは、その方が初めてだった。拙い言葉で何とか説明すると、その男性は静かに耳を傾けてくださった。抽象的な話でごめんなさい、と謝ると、なるほど、飲み込めた気がします、と言って去って行かれた。この方が買ってくれたら良いなと思ったが、そうも上手くいかないよなと思って後ろ姿を見送る。

終幕する少し前のことだった。その男性は私のブースに戻ってきて、また改めて作品集をパラパラと捲り始めた。ブースを離れて再び戻ってきてくださる方は少ないから、私の勘違いかなと思い、声はかけなかった。するとその男性は作品集を私に差し出し、これを一冊ください、と言う。
もしかしたらさっきの男性と違うかもしれないから、再び「この作品集はブックフェアにあわせて作ったものなんです」と説明する。そうですよね、さっきも立ち寄らせていただいて…と返ってくる。やっぱりだ! と思う。その男性と交わした言葉はほんの少しだが、この本を通して私たちは深く通じ合えるのかもしれないと思うと嬉しかった。

男性が手に取ってくださった「NEW PLANET」という作品は、「見ようとしなければ始まらない」というガリレオ・ガリレイの言葉から始まる。そのあとのページを捲ると「想像力というのは、目に見えない星を自分のもとへと引き寄せようとする引力である」という言葉が続く。ざっくりと言うと、目には見えないものについて想像すること、思い浮かべることについて考えて制作した作品だった。そもそも写真というものはそういうものだと私は思っている。目に見える、身近なものを写真に写す。私たちは時に、それを手掛かりに、そこにないはずのものを見つけ出そうとする。私は自分が見てきた地球という場所の写真を材料に、ここでは無い、どこにも無い新しい星を生み出してみようとトライした。「NEW PLANET」はそういう作品だ。

ここではない未知の惑星。ここには居ないけれど確かに存在しているはずの誰か。いつか辿り着きたい理想郷。自分が想像しているよりも、ずっと明るい未来。すべて、見ようとしなければ始まらないのだ。私は見ようと試みていたいと思ったから、この作品を作った。拙い本ではあるが、興味を持ってくださった方に何か引っかかるものがあれば嬉しい。

自分の作品にどれだけの力があるのかは分からない。殆どの場合、作品というのは役に立たない。何の効力も持たない。その事実を認めながら、希望を捨てずに居たいと思う。少なからずそう思えるうちは、作り続けていたい。見てもらえる・手に取ってもらえる努力をしたい。

そして幸福なことに、男性が「さっきも立ち寄らせていただいて…」という言葉のあとに続けたのは、こうだった。


「さっき話されていたことが、心に残って」

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