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水冷工場への道 その10(最終章)

さあいよいよ各種データの発表です。noteでは簡単に書いていますが正直ここまで来るのに約1年かかっています。水の流し方、室内換気扇動作等の調整、検証、データ取りをずっとやってきました。最終的には正直自分でもびっくりするくらいの良い結果が得られたと思います。ただもう一回この建物を作れるならさらに完璧でしょう。修正したい点がいくつかあり、それに対応できるので。なかなかここまで複合系のものは一発では完璧には出来ません。

まずは温度、湿度について 

(詳細は後記)

6/29(水曜日)晴 温湿度データ

今年の梅雨はすごく早く明けて、その後の1週間くらいは異常に暑かった。例えばその時期6/29(水曜日)晴れの日の データです。
外気温 26.4度~35.4度        外気湿度 44.2%~72.5%
作業場 25.4度~26.4度(ほぼ横ばい) 作業場  62.7%~68.3%
事務所 26.7度~27.6度(ほぼ横ばい) 事務所  55.0%~64.6%

まとめると外は35.4度でも室内はまるで恒温槽のように安定している。具体的にはメインの作業場、事務所は 25度台から27度台。室内湿度も70%以下に。全然快適だ。

次は雨の日

7/7(木曜日)雨 温湿度データ

7/7(木曜日)雨の日の データです。
外気温 23.7度~29.3度        外気湿度 68.5%~91.1%
作業場 24.2度~25.2度(ほぼ横ばい) 作業場  65.9%~71.2%
事務所 25.0度~26.7度(ほぼ横ばい) 事務所  62.2%~68.5%

まとめると外は雨であまり気温も上がってない日、室内は24度台から25度台に。いつもと同じくらいだが暑い日よりは1度くらい低い室温に。雨なので外気の湿度が高く室内の湿度も高めになった。でも全然不快というほどでもない。
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電気代

井戸ポンプの電気代は計算上 毎月810円程度。詳しくは後記(ただし低圧電力基本料金は必要)
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井戸水使用量

毎日7.7立方メートル程度使用。詳しくは後記。
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導入コスト

総額920万円程度。詳しくは後記。
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まとめ、考察

考えていた対策と施工内容でほぼ想定の効果を得られたという感じに。つまり恒温槽のような魔法瓶のような建物を作り、外部の熱の影響を最小限にする事が出来たと思う。でも夏なのでやはり少しは内部にいろんな形で熱量が侵入したり発生したりするがその分を井戸水を使って冷やす事が出来た。その結果室温も一日中ほぼ安定した。建物の性能がいいので井戸水の使用量、井戸ポンプ電気代も思ったより少なく済んだ。このシステムを250坪全館で土日も夜中も動作させっぱなしで電気代が実質月1,000円程度なんて夢のようだ。できたらこの中の一部仕切って自分が住みたいと思うくらい快適。どこかで書いたがこの方式では湿度を下げることが出来ないはずであるが思ったより湿度が上がらなかったのは 床を冷やしすぎては湿度的に良くないという事をデータ取り途中で気が付いた事と、木材とか大面積の石膏ボードがうまいこと調湿してくれた結果だと思う。それとエアコンを1台だけ時々ではあるが除湿運転をしてたのもあるかもしれない。

倉庫の湿度がなぜか高めであるがこれはこのエリアだけが「全面土間コンむき出し」が原因と思われる。コンクリートは水分とか湿度を吸ってため込む特性がある。対策として今年秋に倉庫内土間コンに塗装を行う事を考えている。また食事室、会議室の気温が高めであるがこれは西向きの窓がある事、建物の外皮に近い事が原因と思われる。まあこれは必要なら都度エアコンを使えばそれで何も問題はない。建物の大面積を占める作業場と事務所は毎日どの時間帯も快適環境になったのはとても良かったと考えています。
最後になりましたがこの壮大な趣味的実験に精力的に協力して頂いた清水さん、藤井さん、田安さん、奥田さん(福井県工業技術センター)および各関係者には深く感謝しております。ありがとうございました。

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最近になって知り合いの特許関連識者からの意見がありました。すなわち今回の物件は水の流し方、各種場所の冷やし方に特徴があり、この点は特許庁データベースで調べても今までにない方法で行っている。知的所有権(特許)獲得出来る可能性があるとの事。2022年7月頭から書類作成を行っており、8月中旬目途に特許申請を行う段取りで書類の作成を進めています。
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各種詳細

電気料金、井水使用量明細

(これに関しては専門家である福日機電株式会社様の監修を頂いています)

電磁弁4基稼働 電磁弁が開いた時間だけ井戸ポンプが動作
井戸ポンプ電気的定格 2.2KW
井戸ポンプ揚水量  163L/min(最大)

A回路 150分に60秒稼働→9.6分/日 (実際の流量67L/min 643L/day)
B回路 150分に60秒稼働→9.6分/日 (実際の流量67L/min 643L/day)
C回路 75分に60秒稼働 →19.2分/日(実際の流量30L/min 576L/day)
D回路 40分に60秒稼働 →36分/日 (実際の流量163L/min 5,868L/day)

合計74.4分/日=1.25時間/日

水中ポンプ定格 2.2KW → 一日の電力使用量=2.8kwh/day
井戸ポンプ揚水量(max)  163L/min → 12,130L/day(max)
北陸電力電気代 19円/kwh なので 2.8kwh=54円/日
一か月の概算電気代= 1,620円
井水使用量 12.1立方メートル/day

上記はあくまで計算で求められるものである(最大値)。
福日機電で再計算したところ ホースが細いので実際はそこまで水が流れない、さらには電力も全然定格まで使用していない。実際の流量は上記計算の64%である。電力使用量もポンプ定格の50%程度、あるいはそれ以下で動作している。これで再計算すると以下のようになるとの事。

一か月の概算電気代= 810円(低圧電力基本料金のぞく)
井水使用量 7.7立方メートル/day

導入コスト明細

架橋ポリエチレン管布設、関連工事  約700万円
放熱フィン、継ぎ手等 約100万円
放熱フィン組み立て、換気扇取付け、ガラリ工事など 約60万円
ポンプ電磁弁、制御回路1式 約60万円
合計 920万円
(ただしこのコストは建築時2021年時点でのものであり、現在は原材料が上がっているので今から手配する場合は多少割高になると思われる)

各種温度、湿度データ

温度湿度の測定にはGovee Bluetooth温度湿度計 デジタルというのを複数台使用した。アマゾンで購入。家庭用なのでもしかすると0コンマ何度の誤差はあるかもしれないが温度の推移をみるにはこれで十分だ。すごいのはその瞬間の温湿度だけではなくずっと過去のログまで取れる事だ。

Govee温湿度計

各場所の温湿度推移はBluetoothでスマホに簡単に取り込める。測定は以下6箇所。

1.百葉箱(屋外日陰の温湿度)
2.作業場中央
3.事務所
4.倉庫
5.休憩室
6.休憩室床下(参考データ)
1週間の推移はこんな感じ。どの場所も気温は毎日昼にピークを迎え、朝方には最低温度になっている(当然か)。

外気と作業場の温度推移(1週間)
事務所と倉庫の温度推移(1週間)
休憩室と休憩室床下の温度推移(1週間)

これではちょっと分かりにくいので違うグラフの形にまとめたのがこれ↓です。特定の晴れた日の温湿度データを時間とともに各場所でプロットしてみた。簡単に言うと 外が35度とどんなに暑くても室内は25-28度と涼しく、さらに温度変化が少なく保たれている事が分かる。

6/29(水)1日の温湿度推移

ちなみに1ヵ月単位の温湿度推移はこのようになっている(つまり過去1年分)

外気と作業場中央の温湿度分布(過去1年)
事務所と休憩室の温湿度分布(過去1年)

さらに冬はどうなのか

冬は井戸水の送水は停止しています。水は流していません。17度の水を流すと部屋の暖房に支障をきたすからです。でも建物の遮熱断熱(+保熱)性能がいいので、いったん温まると冷めにくいというのがデータでも表れています。

1月の屋外 & 作業場室温

弊社は残業がほとんどなく、毎日17時半には無人になります。次の朝7時過ぎまでは誰もいないし、全く暖房がない状態です。上の表を見て分かりますがエアコンにより毎日20度付近まで室温が上昇、夕方にエアコンを切ると朝方に16度付近まで室温が下がります。13時間で4度しか室温が下がりません。土日はもちろん誰も会社にいないので、丸2日経過するとあと3度下がり、月曜早朝には13度にまで室温が下がります。この時期屋外は0度くらいなので建物の遮熱断熱性は良いと言えるのではないでしょうか。ちなみに昨年の数字ですが夏の一番暑い8月の電気代は6万円程度、冬は2月が一番高く10万円程度でした(すべての照明とかPCも含む)。
冷房は250坪全域で、暖房は倉庫以外の140坪全エリアとなっています。

私からのレポートは以上となります。 長い間ありがとうございました。

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追記: 近日中に水冷工場への道 その1~10を1つにまとめたものをnoteで作成する予定です。


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