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四半世紀に渡る夢

2018年の日本シリーズ終了後に酔っぱらいながら書き殴ったものを加筆修正したものです。
今更感はありますがnoteも始めてみたので、自己紹介の意味も込めて投稿します。
特にカープファンの方にあの時を思い出して読んで頂けると嬉しいです。



ぽっかりと空いた心の穴にころんと入っているのは猛烈な悔しさと「一つの時代が終わったんだな」という空虚で、それでいて奇妙な充実感だ。

僕はいつから広島カープを応援していたか自分でも分からない。
ただ母に聞くと2歳くらいから「赤いから」と熱心に応援していたようだ。
大きくなってからは広島復興の象徴であること、親会社がないこと、猛練習、スクワット応援等々応援する理由がどんどん増えてきた。

幼いころからいつもブラウン管の奥には赤い縦縞のユニフォームを着て、必死に野球をしていた選手たちがいた。
緒方が、金本が、佐々岡が、前田が、東出が…名選手を挙げていくとキリがないけど中心はやっぱりエースと4番、そう黒田さんと新井さんだった。

ただカープはいつも負けていた。

チャンスで三振、中継ぎ炎上、サヨナラエラー…小さいながらよくもこんなに多彩なパターンで負けられるものだと感心するほどだった。
そして僕は負けるたびに不貞腐れて、物陰で不満を爆発させたり、唇を尖らせていたことを思い出す。
クラスメイトからも「いっつも負けてる!弱すぎ!!」とからかわれた。泣き出したくなるほど悔しかった。

それに追い打ちをかけるように2007年、黒田さんはメジャーに、新井さんは阪神に行ってしまった。
残った選手たちも頑張ったけれど、エースと4番を欠いたチームはやっぱり弱かった。
冗談抜きに「生きているうちに優勝は見られるんだろうか…僕が応援しているから弱いのではないか…」と思ったものだ。

若い選手が台頭したもののもう1つ壁が破れなかい時期が続いていた頃、嘘みたいなニュースが飛び込んできた。
「黒田博樹、広島復帰へ―。」
メジャーリーグの名門ヤンキースで安定した成績を残し続けた黒田さんが、高額契約を蹴って帰ってくる。
毎年「帰ってきてくれないかな」と思っていたくせにいざ帰ってくるとなると、全く信じられなかった。
さらに阪神を戦力外になった新井さんも復帰する事になった。
同じ年に出ていったかつてのエースと4番がまた同じ年に戻ってくる…僕は興奮を抑えられなかった。運命的なものを感じたのだ。

しかし2015年は優勝はおろか4位…。
エースだったマエケンもいなくなり、正直「また裏切られた」という思いが捨てきれなかった。
でも、このチームはそんなことではへこたれなかった。原爆復興の象徴として生まれたチームの根性はこんなものではなかったのだ。

2016年、25年ぶりに優勝…。あの胴上げは、黒田さんと新井さんの抱擁は、未だに映像で見ると泣いてしまう。
しかし日本一にはなれなかった。二刀流、大谷翔平率いる日ハムと、何よりパリーグとの力の差を見せつけられた。
そして黒田さんはチームを去った。「俺がいなくとも、このチームは強い。」という思いを感じさせる会見だった。

2017年も連覇をしたもののまさかのCSで敗退。

新井さんの花道がかかっていたこ2018年も3連覇を成し遂げたものの、日本一にはまたしても届かなかった。

こうしてみるとこのおよそ四半世紀のカープの歴史というのは「黒田と新井の物語」というような気がしてならない。
いつの日かこの2人が首脳陣となって、いやあの暗黒時代の皆がコーチや裏方やらで力を合わせて日本一になったのなら、そんなに嬉しいことはないだろうな…と思う。
そんな未来を酔いに任せて妄想しつつ、一つの時代の終わりを感じつつ、このドラマにしてもできすぎな素晴らしかった赤ヘルの物語に今はただ乾杯したい。

黒田さんに、新井さんに、何よりこの広島東洋カープに、乾杯。

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