映画評論13「ボクたちはみんな大人になれなかった」
日本国内での劇場公開と、Netflixにて全世界同時配信で話題になった作品です。
高い評価を得た、燃え殻による恋愛小説が原作。
作品情報
公開日:2021/11/5
視聴日:2021/11/11
監督:森義仁
脚本:高田亮
出演:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人
ストーリー
森山未來演じる主人公の、1990年代から現在までを、それぞれの時代のカルチャーと共に描いた、美しく汚く、がむしゃらで無気力な、ある意味リアル青春ムービーです。
感想
今にある程度満足している人も、今に絶望している人も、どちらの人も、過去に何らかの後悔を抱えているでしょう。
僕は、今にある程度満足している側にいると思っているけれど、大きなこと、小さなこと、いろいろと心に引っかかっていること、後悔していることはあります。
でも、後悔が必ずしも悪いことではないと思う。
あの時こうしていれば。
このような後悔、欲求があるからこそ、
今ここから、またがんばることができる。
後悔を悪いものにするのも、悪くないものにするのも、結局、今の自分次第です。
後悔していることも含めて、やがていい思い出になっているんじゃないかなと、これを書きながら思えています。
涙を流した夜だってもちろんあるけれど、今思い出すとそれもいい思い出です。
きっと、もう僕以外、誰も覚えていないような思い出がたくさんあります。
なぜだか、その時の風景も、温度も、匂いも、そして思いも、不思議なくらい覚えていて。
だけど、何気ない日常のワンシーン。
こんな記憶がきっと誰にもあると思います。
そういう小さな出来事の一つ一つで、今の僕ができている気もするし、全然関係ないような気もします。
本作では、時代の流れを改めて感じることができました。
ちょうど、僕くらいの年代の人に一番響くんじゃないかなと思います。
文通、公衆電話、携帯電話
連絡手段だけをとっても、この20、30年でずいぶんと変わりました。
誰とでもいつでも簡単につながれるようになった。
だからこそ、つながれないことが怖くなった。孤独を感じる人が増えた。
そんな気がします。
音楽もノスタルジーを感じさせてくれました。
何度も何度も、歌詞を見ながら聞いていた曲たちを思い出しました。
今ではもう、あんな音楽の聞き方はしていません。
僕が大人になったからなのか、時代が変わったからなのかはわからないけど。
ものすごく便利になった今と、少し不便だった昔と、どちらが幸せなんだろうか。
森山未來がスマホや腕時計を持っていないことは有名だけど、彼は、昔の少しの不便さの中に幸せを見出しているということなのかな。
昔の渋谷の風景を見ていて、若い頃の恋愛を少し思い出した。
その子と渋谷に行ったかどうかは覚えていないけど、なぜだか懐かしい感覚と共に。
ベタな表現だが、いわゆる甘酸っぱい、青い恋愛
満たされなくて、子供で、足りなくて
心がきしむような、一生懸命な
すごく苦しかったけど、もう二度とあの感覚を味わうことはないんだろうと思うと、とても寂しい気持ちにもなる。
大人になった僕たちは、もう子供に戻ることはできなくて
大人になれないこと
子供に戻れないこと
どちらが悲しいことなのかな
なんてことを考えたりもした
こんな文章を思わず書いてしまうほど、エモい映画ですw
どんな時に見るのがあっているのかわからないけど、どんな時に見ても、きっとそのたびに違う何かを感じさせてくれる映画だと思います。