夕凪、某、花惑い
僕らを貶す奴らを殺したい
君ならきっと笑ってくれる
『ヨルシカ/夕凪、某、花惑い』
4月。春は出会いと別れの季節と言いますが、自分にとっては別れの記憶しかない辛い季節です。
前回noteに綴った子とは別に自分にはもう1人、同じく飛び降り自殺で失った子がいます。
8月9日は亡くなった後輩の子の命日でした。本当の命日は今日ではないのですが、自分がその子のことを嫌いになったのがその日で、自分にとって興味を失った人は亡くなったのと同じなので。
2年前の8月9日。自分と後輩は児童公園で水風船を割ることになりました。水風船に嫌いな人の名前や、今まであった憂鬱な記憶を書いて、思いっきり割ってやろうと企画したものです。
たぶん、気付かなかったけど、後輩は水風船に自分自身の名前を書いちゃったんじゃないかと思います。だから、水風船と同じように、一瞬だけ飛沫を上げて消えてしまったんじゃないかって。
お線香をあげたい。と、後輩のお母さんに電話して家にお邪魔することになりました。マンションの6階を眺めて、この高さから飛び降りたら、人は死ぬ。そんな当たり前のことに今さら気付き、そして驚きました。空が青くたって、電車の中で赤ちゃんが笑ったって、お気に入りの傘を買った次の日が雨だって、人は死ぬ。いつか失う。永遠なんて、どこにもないと。
「マンションの6階から飛び降りたのに目立った外傷もなくて、血も飛び散ってなかったの。きっと、受け身を取っちゃったのよね」
と、お母さんが言っていました。後輩は生きたかったのか、死にたかったのか。終わってしまった人のことはよくわからん。わからんけど、わからんまま終わらせてたまるかとも思います。
「『秋助さんの小説に自分が登場した』と嬉しそうに話してたのよ。私も嬉しかった」
お母さんはそうも言ってくれて、自分が小説や短歌、脚本といった言葉を生み出すことに、少しでも意味があって良かったなと思います。
「有名になりたい」
それが口癖だった後輩は、残念ながら有名ではなく幽霊になってしまいました。たぶん、後輩は『正しくない人間』なんだと思います。でも、それでも、自分が大切にしたい人でした。どうしようもない善人でした。だけど、死んでしまう。
命は不平等だから、後輩のような子が死んでしまう。生活は不公平だから、自分のような人間が無様に生き延びてしまう。人生はクソだと思った。
「有名になりたい」
人生はクソだ。それでも生きようと思います。生きて、無様にあがいて。『正しくない人達』の救いになりたい。なりたかったんだよ。これでも。
この話はもうちょっとだけ続きます。
どうか、最後まで付き合って下さると嬉しいです。