フィンエアー創立100周年 ヘルシンキ空港のビフォーアフター
北欧の航空会社「フィンエアー」が、2023年11月で創立100周年を迎えました。その11月某日、在日フィンランド大使館で行われた記者会見に出席。その取材時のエピソードなどを紹介します。
【掲載】トラベルニュースat 本紙(2023年11月25日号)
https://www.travelnews.co.jp/tnat/backnumber/2023112508593238017.html
コロナ前は日本路線をどんどん強化
フィンエアーは、東京(羽田・成田)、大阪(関西)-ヘルシンキ線を運航中。来年5月から、名古屋(中部)線の運航再開も発表されました。新型コロナ前は札幌(新千歳)線、福岡線もありました。欧州系航空会社では断トツトップで、一時は怒涛のように日本路線を増やしていたエアラインです。
そして、コロナ禍となり、さらに、ロシア領空の飛行禁止で、フィンエアーは厳しい状況となりました。というのも、ヘルシンキは日本から飛ぶとヨーロッパの入口に位置しています。飛行時間は最短で10時間を切り、「最もヨーロッパに近いエアライン」として人気を集めました。特に、中高年が多い旅行会社のツアー客に、絶大な支持を得ていました。
2019年夏のヘルシンキ・ヴァンター空港に降り立つと、まわりは日本人旅行客だらけ。搭乗便がフィンエアーのソウル発ヘルシンキ行きだっただけに、ヨーロッパに着いたのにいきなり「ここは日本か?」と思う光景を目の当たりにしました。
東京、大阪、名古屋、そして福岡からの便まであると、他のアジア便を圧倒する便数。出発時も同様で、しかもほぼ同時刻に集中するため、フィンエアーのラウンジ内も日本人旅行客が大半という状況でした。
ロシア領空問題。空港は一時閑散
2022年4月、コロナ禍がまだ完全に落ち着いていない頃、再びヴァンター空港に着くと、日本人旅行客の姿は皆無。当時まだ日本帰国前にPCR検査が必要だったので、致し方ないと思いつつも、空港での光景は一変していました。この日はフィンエアーもJALの直行便もあったのに、です。
しかも、ヨーロッパの他の主要空港がコロナ後の反動ですでに客足が戻り、にぎわっていた一方、ヴァンター空港の閑散ぶりも印象的でした。
飛行ルートは、ロシア上空から北極圏を通過するルートに変更。今まで10時間足らずだったのが12-13時間かかるようになり、事実上「最もヨーロッパに近いエアライン」ではなくなったわけです。
日本人にとって海外旅行が厳しい現状
渡航制限がなくなった今、日本国際線はフィンエアーも含め、どんどん再開しています。しかし、日本人にとっては運賃の高止まり、燃油サーチャージの高騰、円安、そして物価高と、コロナ前と状況が変わり、海外旅行はコロナ前の水準と程遠い状況。
特に、物価が高いヨーロッパは、1週間のツアーでも1人50万円超えもザラです。中には100万円近いツアーも。
日本からヨーロッパがその距離以上に遠い場所となってしまいました。今の欧州路線はほぼ満席であっても、乗客のほとんどがインバウンド客でしょう。
フィンエアーが今も日本路線に前向きな理由
それでも、フィンエアーの記者会見では、非常に「ポジティブ」な姿勢を感じました。1980年代に日本とヨーロッパを初めて直行便で結んだのがフィンエアーであること、しかも北極圏を通るルートで、今まさに原点回帰となっていると。
飛行時間が長くなってしまった、そのハンデがなくなったのは、フィンエアーにとって痛手なのは間違いありません。しかし、他の日系航空会社を含むヨーロッパと日本を結ぶエアラインの中で、フィンエアーはいろいろな意味で秀逸です。特に、他の欧州系航空会社と比べると。
例えば、日本人によく知られている「ムーミン」や「マリメッコ」などとコラボレーションしていること。そして、飛行機が比較的新しく、エアバス「A350」がメイン。機内も清潔感あり、機内食は美味しく、そしてなにより客室乗務員のレベルが高いです。ANAやJALと比べてはいけませんが、他の欧州系航空会社、しかもエコノミークラスで比較すると、いずれも乗ったことがある方は納得できるのではないでしょうか。
フィンエアーが自信を持って、今後の日本路線も引き続き強化していく姿勢を示したことは、長年、日本で培ってきたそのサービスの高さと評判の良さでしょう。そして、ハブ空港であるヘルシンキ・ヴァンター空港は、乗り継ぎやその他施設も、初めてでも利用しやすいです。他のヨーロッパの主要空港と比べると、そのアドバンテージはいまだ健在と言えます。
願わくば、もう少し円安が今よりマシになり、日本人が海外旅行へ再び行きやすくなれば、言うことはないのですが。
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