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プロのバナナ【毎週ショートショートnote】

「あ、あんたは……」

俺の姿を見た途端、男はじりじりと後ずさる。
それも当然だ。誰だって命は惜しかろう。

「待ってくれ!俺は関係ない!黒幕はあいつだ。なあ、見逃してくれよ。俺みたいな下っ端、プロのあんたから見たらクズみたいなもんだろう」

己の立場はわきまえているらしい。

「ならば二度と俺の前に姿を現すな」

男はぱっと喜色を浮かべた。

「わ、判った。恩に着るぜ。さすがはプロ中のプロだ。……ようあんた、人以外もやれるってのはほんとか?」

命が保証されたら今度は質問攻めか。現金なものだ。

「あんたの上に乗ったら、車でも派手にひっくり返るって聞いたぜ」
「……車だけじゃない。その気になれば戦車でもやれる」
「すげえ!やっぱプロのバナナは違うぜ」

俺の脳裏に戦場の匂いが蘇る。
敵の戦車の進路や戦闘機の滑走路にこの身を投げ出して、派手に横転させてやるうちに、いつの間にか裏の世界に知れ渡る存在となった。


あいつバナナ87の真上に立つな。痛い目見たくなきゃな」


*この記事は、以下の企画に参加しております。



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秋田柴子
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