乾燥ブンブン部【毎週ショートショートnote・裏お題】
ねえ、知ってますか?
蜜蜂ってね。暑い日はあの小さな羽を一生懸命震わせて、風を起こして巣の中を冷やすんですって。
「……もう書けない」
ある物書きがぽつりと呟きました。
その眼からは涙がぽとぽと零れ落ちます。
すると遠いどこかで、1匹の蜜蜂が素早く巣を飛び立ちました。
「誰かが泣いてるんだ」
蜜蜂は仲良しのカニに声をかけます。
「誰かが泣いてるって」
カニは知り合いの招き猫に伝えます。
「誰か泣いてるみたい」
招き猫は餃子を食べ散らかしてる犬をつつきます。
どんどん増えた仲間たちは、先頭を飛ぶ蜜蜂を追いかけました。
「いた……!」
蜜蜂は泣いている物書きの部屋に向かって、ブンブンと羽音を響かせて微かな風を送り始めました。
やがて追いついた仲間たちも、思い思いに風を起こします。
「少しずつでも……書こうかな」
いつのまにか物書きの涙は乾いていました。
みんなで風を送ったからでしょう。
「帰ろうか」
「そうだね」
ブンブンと嬉しそうに飛ぶ蜜蜂のあとを、仲間が揃って帰っていきました。
*424字、ちょっとオーバー。すみません。
【あとがき】
最近、やたらお仲間を登場させてしまう秋しばです。人恋しいのかしら。秋ですね。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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