短編小説「誰かは私です」
私はダメ人間だった
多くの人間は世界を維持するべく仕事を行い、なりたい自分に擬態して、コミュニティを維持している
怠惰なわけでもない、仕事をしたくないわけでもない。ただただ、私には多くの人間と同じように仕事が出来ない。やろうと思っても出来ない
そんな私にも唯一と同類と呼べる友人がいた
彼は社会に順応し彼と私に与えられた仕事を私の分までも果たしてくれていた
「大丈夫、きっと上手くいく」
彼の目線はいつも私を勇気づけてくれるが、それでも私は動けなかった
そんなある時、彼がコミュニティを追放されることになった
彼はあまりに優秀すぎた。仕事をこなしすぎたのだ
追放される彼に私は言葉をかけることは出来なかった
そんな時であっても彼は目線で私に訴えてくる。
「大丈夫、君なら出来る」
仕事をする人間は着実に少なくなっている
多くの人間は忙しそうに私の前を通り抜けていく
私は人間としてダメで何も出来なかった
だからこそ多くの人間は「私たちの間に誰かいる」と思いながら私を見逃し続けていた
そして私は
誰一人気づかれることなく
みんなを喰べてしまった