行く末
「今が人生の分岐点だなぁって思うよ」と学生時代の友人が呟いた。
彼がオーナーを務める飲食店に顔を出し、深夜までやっているカフェで語る事になった。
聞くと彼は大学を卒業後に飲食店を経営したいと学生時代から思っていたらしい。見事に夢を叶えている彼は夢も目標もない私にはとても眩しい人に見えた。
時間が進み、話題は周りや自分たちの恋愛話になった。私たちの周りにはすでに結婚や出産をしている子が多い。
結婚をしている人と望まず独身でいる人の違いを彼は己の身の程を理解しているかだと言った。
「自己評価が高い人は相手に求めるものが増えて理想も高くなってくる。でも自分を正当に評価できている人は自分が手に入れる事ができる最大級の幸せを理解しているから妥協を妥協だと思わずにいられる。だから結婚まで辿り着くんだと思うよ。」
彼は恥ずかしげもなく女は消費期限が短いと言うタイプの男性だ。男性は歳を取るにつれて手に入れるものが増え価値が上がっていくと考えている。
個人的にその意見自体には異論も反論もない。だが問題があるとしたら、その差別的とも言える考えを堂々と人前で言い放ってしまう無神経さである。しかしそれもまた、彼が仕事という面で成功を収めたが故の自信からくる思想なのかもしれないと思うと面白く感じたのを覚えている。自分に圧倒的な自身があるからこそだろう。
まぁ私自身、意見を求められてもいないのに個人の考えに口出しをするほど野暮ではない。ここは相槌をしておこうと決めた。
世にいうアラサーに片足突っ込んでいる私達からしてみたら耳が痛い報告を毎日と言っていい程受けている現状。
「まるで自分達だけ時間が進んでいないみたいだな。今こうして俺達が夜中にお茶しながら話している間にも周りの時間はどんどん進んでいて婚活やら育児をしているんだから。俺達は一体どっちの道を選ぶんだろうね。楽しみだよ。」
そんな言葉でお茶会を締め括った。
夢を叶え順調に見える彼が今後どっちの道を選ぶのか、はたまた両方を手に入れるのかひとり夜風を浴びながら考える。
今はまだまるで自分の人生が他人事のようの感じてしまう私はその結果を見届けてから駒を進めよう。
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