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『舌弐』について。
去る2022年8月31日は初音ミク15周年の誕生日でした。
いやぁ凄いですね。いつまで幅を効かせるつもりでしょうかあの女は。
いつまでも長生きしてほしいものです。
さて、そんな誕生日に投稿した僕の新曲。
『舌弐』
ゼッツーと読みます。
今回も自己満足の曲解説をしていこうかなと思います。
曲名について
もともと舌弐と書いて「ゼッツー」と読むタイトル案は存在していました。元ネタはもちろんKawasaki 750RS、通称Z2(ゼッツー)です。
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『舌弐』と書いて「ゼッツー」。格好良いとダサいのギリギリのラインですね。でもそこが良いんじゃないですか。
今回この曲を書いてるうちに、「この曲のタイトルを舌弐にしよう」という気持ちが湧いてきて、歌詞を書く前にタイトルが決まるという形になりました。
音について
冒頭。ガンガンと脈打つ偏頭痛のイメージです。ゆっくりと目を見開いて、自らの現状、世界と向き合います。
メインリフ。ここやAメロで鳴っている半音移動するピアノのコードは、この曲を作るにあたって一番はじめに有ったアイデアです。16分音符周期のバキバキなトレモロを掛けて、音が左右に振れるようになっています。
これは以前作っていた没曲の流用でして、格好良いからどうしても形にしたかったんです。
階段を上がって下がるを繰り返すようなシンセリフは、ストリングスのイメージです。あえてシンセサイザーでやる事で、スタイリッシュな感じを出そうと思いました。今思えばmillstonesさんからの影響とかかもしれませんね。
この曲はサビ以外7/4拍子ですが、もともとは普通に4/4拍子で作っていました。小節毎に強拍が入れ替わるスネアのフレーズにその名残がありますね。
Aメロの歌!気に入っています。「コードに捉われすぎない」「間を意識する」という課題を掲げ制作したこの曲の歌メロだったのですが、Aメロはその課題をクリア出来ているのではないかと思います!2番のAメロが1番と少し違うのもお気に入りです。
Bメロはなんかわちゃわちゃやってます。
ここは7/4というより7/8×2というグルーヴですね。歌も忙しくなります。
スネアやバスドラムのシンプルな16分連打で勢いを付けるフィルの入れ方はお気に入りです。電子音楽系だからこそ映えるドラムの組み方ですね。
サビ。キーがひとつ上がります。4/4拍子になり、パワーを持った歌メロに合わせて開放感のあるアレンジを目指しました。ベル系の音源がこれでもかという程鳴ってます。
ドラムンベースチックですが、これは本家のドラムンベースアーティストというより、僕が敬愛するゲームミュージック作家=来兎氏からの影響によるものだと思います。
2番Aメロですが、ミクさんの声がちょっとこもった感じに聞こえてますよね。
それもそのはず。ミクさんを箱に閉じ込めて歌わせたんですから。
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いやぁ別に何かに目覚めたりはしませんでしたが、業の深いことをしてしまいましたね。凄く嫌そうでした。ミクさん。
「Cofee&TVのグレアム・コクソンもこんな感じだったのかな?」って言ったらしばらく無視されました。
さて!!Aメロが終わって、今回2人目のフィーチャリングアーティスト嘯さんのラップですよ!!!
これやばくないですか?!
僕が一番食らってますからね!
裏でピキピキと鳴っている歪んだシンセのアルペジオに合わせて16分音符でラップする嘯さん。高速ラップは彼の十八番なのですが、そのラップで紡がれるリリックも楽曲の世界観により深みを与えてくれます...うっとり。
誘惑のまま甘い苦味と
深く捩じ込む空白
この部分、リズム的に一文字多いのを無理やり捩じ込むようなフロウ好き過ぎますね。歌詞の内容と合ってます。直後のブレイクもお気に入りです。
落ちサビを挟んでラスサビへ突入。「引き換えに壊れてしまっても構わない」の後の豪快なタム回し、お気に入りですね。
打ち込みドラムって人間が演奏してるわけじゃないので、複雑なフィルインを入れ込んでもあんまり気持ち良くない事の方が多い気がするんですよね。そのフレーズが「難しい」ことによって生まれる独特のグルーヴの変化が無いんですよね。(作れよ...)
それよりかは本能的にアツくなれるようなスネアの連打とか、愚直にタムを回すとか、そういう方向性のフィルインをここぞという時には選択してしまいます。僕の場合。
伝家の宝刀、「歌の終わり際ボーカル以外の音なくなるやつ」がキマりまして、アウトロ。最後微妙にrit.してるのがお気に入りです。じっくり余韻を効かせて。
全体的に雰囲気を意識した曲作りが出来た気がして、楽しかったです。
詞について
ずっと怖かったね
はじめに思い付いたフレーズです。
ここから、現在の僕自身の社会的な現状とも照らし合わせる形で「漠然とした生きづらさを感じる人は、痛みや闇を食むことでしか生きる実感を得られないのではないか」という仮説を基に歌詞を書きました。
書いていくうちにスプリット・タンという明確なテーマが浮かび上がってきたので、自分を傷み付けることをなけなしの原動力とする行動の一例として歌詞を飾って貰いました。これが後々イラストのテーマとしても機能していくことになります。
あと、途中『蛇にピアス』という映画を観ました。金原ひとみさん著の小説を原作とした、吉高由里子さん主演の映画ですね。内容的にマッチする部分があるかなぁ〜と思ったのですが、2番以降の歌詞を作る上で少し参考になりました。
嘯さんのラップパートの歌詞に関しては、彼に全任せしました。普段からめちゃくちゃ聴いてる彼のラップを僕がどうこうする必要は無いと思い、歌詞からご本人の手で書いていただきました。
ただ、全編を通して内面のことばかりを歌う歌詞になってしまったので、嘯さんのパートは実際に見たこと、したことにフォーカスした歌詞にして欲しいということだけお願いしました。
その結果、"鏡に映るイマジナリーフレンドの「アリス」から解き放たれ、その破片で自らの舌を裂く"という非常に格好良いストーリーが生まれました。このパートがあることで、内容的な意味でも、メタ的な意味でもリアルとファンタジーが上手い具合に溶け合って、全体としてとても素敵なバランスになったと思います。嘯さん、ありがとうございました。
暗いものは暗いまま、そこに在るだけ
ラストのこの歌詞、この曲のテーマでもありますね。救われる、というのは必ずしも明るい世界に帰結するのではなく、終わりかけていた暗い生活が辛うじて存続する、という方向性も含んでいます。
それは救われた側には何一つ本質的な救いにならない結末なのですが、元よりそういう人種は暗い暗い場所で生きることでしか息を吸えないのです。僕にも、あなたにも、そんな日がありませんでしたか?
僕ら、闇を食べていくしかないんですよ。優しい言葉や行為はあまりにも甘過ぎて甘過ぎて。疑ってしまいますよね。
そう考えると前々作『狂っと廻って忘れちゃう!』から地続きのテーマでもあるんですよね。
こんな歌を書いている僕は果たして幸せになれるんでしょうか.....?もう少しマトモな人生観があるのでしょうが、今はこういう感じです(笑)
イラストについて
今回のイラストは棄印きうさんに描いていただきました。
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本当に素晴らしいイラストですね!!感謝してもし切れません。
実は、『舌弐』はもともと知声さんに歌ってもらうつもりで作ってて、実際ワンコーラス目が出来た段階では知声さんが歌っていました。
きうさんにもそれを聴いてもらいながら早い段階でイラストを仕上げていただいてて、そんな時急に「これ初音ミクに歌わせた方が良い気がするな...」という感情が胸の片隅で騒ぎ出したのです...。
そして僕はきうさんに土下座、いや土下寝をしながら、「初音ミクでもう一枚書いていただけないでしょうか!!」と一生の御願いをする事となったのでした。
「おっけ〜で〜〜す♪」
やさしいきうさん。
素敵なきうさん。
本当にありがとうございました。
※知声ver.のイラストは、棄印きうさんのTwitterをご覧ください。
まとめ
今回も長ったらしい記事を最後まで読んでいただきありがとうございました。
毎回「代表曲になって欲しいな」と思いながら曲を書いているのですが、今回の曲はその思いが特に強いですね。過去の自分を、どうせなら超えていきたいですよね。
皆さんの生活に、この音楽が在ることを願っています。
では。