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サイマルアカデミー8ヶ月目:「迷いを無くす」ことの重要性


はじめに

サイマルアカデミーという通訳学校に通い始めて8ヶ月目に突入しました。ノートテイキングやらなんやらと、色々と自分なりのやり方が身についてきました。一つ、良い気づきがあったので書き残しておきたいと思います。

リテンション力(記憶力)が最近上がったように感じるのですが、リテンション力を上げるには、文章を迷いなく理解する力が大事だと気づきました。「文章を迷いなく理解する」とは、聞いた文章の情景を迷いなく想起できることです。迷いなく想起できていれば、記憶にもくっきり残りますし、自信を持って通訳ができます。

文章を迷いなく理解するには、登場する全ての単語を迷いなく理解できる必要があります。しかし母国語の日本語であっても、意外と迷いがあることに多々気づきました。

「迷いを無くす」方法

例えば、貴方がある講演会の通訳だったとします。「あの人は頭脳明晰ですね〜」と話者が発言しました。これを訳すことを考えます。この文章を初めて訳したとき、僕は「明晰」という単語で一瞬"迷い"が生じました。頭脳明晰という表現は何度も出会ったことがあるし、なんとなく「頭が良い」という意味なのは分かっている。しかし、「明晰」の意味を説明しろと言われるとできない。。。まあそれでも通訳の現場では「He is smart!」と訳せば問題は無い。今回のように迷いが一箇所しかなければ、その文章はそれっぽく訳せる。しかし一つの文章で迷いが二箇所以上出てくると、、、

  • リテンション力が下がる(脳内でイメージがくっきりと残らないから)

  • 訳出に自信が無くなり、声に迷ってる感が出る(迷ってるから当然)

ということに気づきました。

そこで、通訳中の迷いを減らすために、迷いが生じた表現は辞書を調べ、その定義を頭に入れ、自信を持って脳内イメージを形成できるようにしていま
す。

例:「明晰」という単語を考えてみる


例えば、「明晰」という単語の場合、次のように訓練しています。

Step1: 複数の辞書を横串検索する

iPhoneの物書堂アプリを使う!

  • はっきりしていて分かりやすいこと(日本国語大辞典)

  • 明らかではっきりしていること(大辞林)

  • 筋道が通っていて、いうことが誰にでもよく分かる様子だ(新明海)

  • はっきりしていること。筋道が通っていること(明鏡)

  • 明らかではっきりしていること(大辞泉)

物書堂アプリはMac/iPhoneユーザーは全員使うべしw

Step2: 各辞書の定義を要素分解する

  • はっきりしていて分かりやすいこと(日本精選辞書) →はっきり+分かりやすい

  • 明らかではっきりしていること(大辞林)→明らか+はっきり

  • 筋道が通っていて、いうことが誰にでもよく分かる様子だ(新明海)→筋道+分かりやすい

  • はっきりしていること。筋道が通っていること(明鏡)→筋道+はっきり

  • 明らかではっきりしていること(大辞泉)→明らか+はっきり

その中から自分にとって一番しっくりくる定義を採用します。
「明晰」は明鏡の「筋道+はっきり」が個人的にしっくり来ました。

Step3: 頭の中でイメージ化する

Googleで画像検索したり、自分の頭の中で想起されるイメージを眺めたりして、単語のイメージを頭に定着させます。ちなみに「明晰」という単語を聞くと、次のような血管みたいなものをイメージしています。血管全体が筋道
で、枝分かれがはっきりしている。だから「明晰」だよね、みたいな。

明晰のイメージ

Step4: 訳出案を考える

その言葉の意味さえ分かってしまえば、和英辞書を使わなくても訳出できることが多いです。例えば、「あの人は頭脳明晰だね!」という称賛のコメントであれば、パラフレーズすると「あの人の話はいつも筋が通っていて分かりやすいね!」ということなので

  • His explanations are always concise!

  • His logic is always clear and easy to understand!

などと文脈に合う形で自信持って訳せばいいわけです。「明晰」を和英を調べると"clearheaded"っていう単語が出てきますけど、1:1の訳語を覚えるよりも、原文の理解に対する迷いを0%にする方が、良い通訳ができるなと最近つくづく思います。僕は中学校2年生までアメリカに住んでいましたが、"clearheaded"はそんなに聞き覚えが無いので、英語が母語じゃない人に対しては、上記の訳出の方がむしろ親切かもしれません。ここまでの配慮は生成AIは自動的にしてくれないので、まだ人間に勝機があると思います(まあ追いつかれるのは時間の問題でしょうけどw)。

と、いうわけで、僕は理解があやふやな単語が出てきたら、上記のプロセスを経るようにしています。ここ2ヶ月ぐらい、通訳するときには明確なイメージを形成しながら訳出しているのですが、リテンション力は間違いなく上がっているように感じます。めでたしめでたし。

最後に:どうやって効率的にイメージ力を鍛えているのか?

最近は英検準1級レベルの単語に対する自信度を100%に高めることを意識しています。「通訳目指してるのに英検準1級レベルの単語かよw」と思われるかもしれません。一応、高2の時に英検1級には合格しておりますが、全ての単語に対して脳内にくっきりとしたイメージが残るか?というとそんなことはありません。ちなみにSVL12000のVol.3の単語を使って訓練しています。

次のエントリで、テクノロジーを活用しながら、イメージ力を効率的に鍛える方法について記載したいと思います。

▼次のエントリ

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