サイマルアカデミーに4ヶ月半通って期末試験を受けた
はじめに
2023年10月からサイマルアカデミーのIC2(通訳者養成コース)に通い始めて4ヶ月半が経ちました。期末テストが数日前にあったので、自分のスキル向上の歩みを記載しようと思います。リテンション(記憶)の話がメインです。
最初にぶつかった壁
日本語のリテンション(記憶)が苦手だということ。
リテンションの訓練では、日本語(or英語)を10秒ぐらい聴いて、一言一句同じ内容を復唱します。
私は明らかにクラスメイトと比較して復唱の精度が低かったです。帰宅してから、いくつかのNHKのニュースの音源を妻と聞いて勝負した結果、妻は3回聞けば10秒ぐらいの音源は完璧に再現できるのに対し、僕は10回ぐらい聴いて練習しないと再現できませんでした。
妻がリテンションが得意なだけでは?と思い、大学時代の親友の何人かに試させたところ、全員妻と同じレベルでした。
これには面食らいました。
僕がリテンションできなかった内容としては、次のようなNHKのニュースの文章でした。
僕は「グッズ販売店」という単語が2回聞いても出てきませんでした。周囲の日本人に3人にやらせたら、全員この単語を1回目から言えていました。理由を考えてみると、僕は
「グッズ販売店」という単語を聴いて即座にイメージを想起できない(そもそもSMAPを5人言えないです。俺の思考履歴にはアイドルのグッズ販売店という文字が存在しないw)
ことが原因だと分かってきました。
たぶん、日常会話で上記内容を聴いても、普段の僕は「ジャニーズがオワタでグッズもオワタ」ぐらいの浅い理解に留まっています。私は日常生活を営むうえでこのレベルの思考能力・言語能力で困ることは無いのです。。。
次にぶつかった壁
日本語のリテンションは本当に酷かったものですが、教材の難易度が上がると英語のリテンションも苦労しました。
最初の3ヶ月で「ボクはリテンション能力が欠けた人間である」という理解をし、改善することを諦めていました。
正確に言うと、通勤電車の中で3週間ぐらい真面目にニュースを一文ずつ聴いて、リテンションできるか練習したのですが、一向に上達しませんでした。
今振り返ると、リテンションができていない原因をわかっていないまま、無駄に繰り返し作業をしていたように思います。
中学校1年生の数学の授業で、分配法則が理解できなかったときの気持ちを思い出しました。「あー、全然できん。もう諦めよう」という気持ちです。
赤点が続いて、母親も困っていました。
このとき、塾に通い始め、先生との問答を繰り返しながら理解できていない原因を特定してもらい、そこからは数学は得意科目になったのですが、、、リテンションについては解決するきっかけが得られずにいました。
その次にぶつかった壁
そんな僕の記憶力に関係なく、授業の難易度はどんどん上がっています。10年前ぐらいに話題になった「特定秘密保護法案」のテーマを授業で取り扱いました。僕は戦争とか各国の覇権争いには興味があるけど、日本国内の政治について全く知識がありません。
とりあえず単語を頭に詰め込んで授業に出るのですが、訳す前の日本語を見ても何を言っているのか本当に分からないのです。
例えば次のスピーチの一節を逐次通訳するよう、授業中に当てられるのです。
特定秘密保護法案に関するある議員の発言です。
まず登場する単語が日本語でもよく分からない。「官房」「省庁」「事務次官」「内閣官房長官」「情報監視委員会」「省庁間上訴委員会」??
日本語そのものが文法的にオカシイ気がするw
もはやこのレベルになると、文脈を理解したうえで、文法的に怪しい日本語を元に、話者が言いたいことを再構築する必要があります。
そこで何をしたか
「2時間で分かる政治の教科書」みたいな本を買って、政治の勉強をしました。勉強前は、国会と内閣や、衆議院と参議院の違いも知りませんでした。内閣総理大臣がどのように指名されるのか、省庁とは何なのか、等も知りませんでした。
本当に疑問なのですが、多くの日本人はこれを理解しているのでしょうか?理系ではありますが、私は大学院を卒業した33歳(あ、実は今日が私の誕生日です。今日33歳になりましたw)でして、今までの人生でこの知識を要求されたことがありませんでした笑。非国民なのでしょうか。
まぁともかく、この「2時間で分かる政治の教科書」という本を4連休で20時間ぐらい読み込み、内容を理解するとともに、内容を英語で表現する訓練もしました。また、河野太郎さんと安倍さんに関する本を1冊ずつ買い、少し読んでみました。
すると、「省庁」「国会」「内閣」「内閣官房長官」「衆議院」「参議院」「事務次官」あたりの単語はイメージして英語でも少しずつ表現できるようになりました。ここまで理解すると、さっきの意味不明だった文章の単語も「情報監視委員会」「省庁間上訴委員会」の2単語以外は分かり、話者の言いたいことの幹は掴めるようになりました。
とか言ってますけど、まだまだ激ムズであることには変わりません。。。
そして迎えた期末テスト
2月15日に期末テストを迎えました。英語→日本語のテーマは「地経学に関するスピーチ」で、日本語→英語のテーマは「民主党の再生について」でした。
結論として、どちらも酷いパフォーマンスでした。正確に言うと、終わった後は「まぁまぁできたんじゃん?。。。」と思ったけど、後で自分の録音を聞き直したら、普通に誤訳を連発してました。
一つだけ言い訳すると、私はアメリカ英語以外の聞き取りは苦手です笑。イギリス英語を聴き慣れていない自分は、中間テストで「assume」が何故か聞き取れず、今回は「volatile」を聞き取れず、ハテナとなりました。フォrタイr みたいに聞こえ、"v"が"f"っぽく聞こえました。まぁ、録音を聞き直して一発で"volatile"じゃん!wwって理解できたので、単に僕が悪かっただけです。ハイ。
期末テストの反省で見えたこと
期末テストの音源をちゃんと聞き直して復習していたところ、大きな発見をしました。
あるフレーズを聞いたときに、即座に心の中でイメージが湧くものと、沸かないものの二種類があるということです。
正確に言うと、「強いイメージが想起されるフレーズ」と「なんとなくのイメージしか想起されないフレーズ」の二種類があります。
例えば、期末テストで出てきた次の文章を考えてみます。
China, Korea, and Japan are where the potential growth of the world economy could come from.
私の中では次の二つに分類できました。
強くイメージが残るフレーズ
China, Korea, and Japan are
3つの国が頭でマッピングされる
... of the world economy could come from
世界経済の ... が来るかもしれない
イメージがぼんやりとしか残らないフレーズ
potential growth of
潜在的な成長
やや意訳すると「中国、韓国、日本は世界経済の潜在的な成長源となりうる国々だ」となります。
なんか、日本語を見ても、自分の中でしっくりこないのです。今までpotentialという単語は何度も見てきて、なんとなく理解したつもりでしたが、このpotentialが理解の壁になっている気がしました。
potential(潜在的な)とは、どういう意味だ?を理解できていないことに気づきました。
考えるうちに、"potential risk(潜在的なリスク)"という表現があるが、"risk(リスク)"との違いを理解していないことに気づきました。
ChatGPTに質問した回答をざっくりまとめると、
riskは顕在化している危険性と、顕在化していない潜在的な危険性の両方を含む
potential riskは顕在化していない潜在的な危険性を指す
とのことでした。
なるほど。この説明を聞いて、「潜在的」のイメージは、「まだ表面化して顕になっていない状態で、まだ地中に潜っている感じ」なんだなと自分なりに理解しました。
そうすると、
・growth(成長)
・potential growth(まだ明らかではないが、秘められた成長の可能性)
みたいなイメージが増しました。
30分ぐらいpotentialという単語について考えを深めた後に、同じ文章を聴いたら、スッと自分の中に入ってきて、文章が頭に残る感じがしました。
実際にもう一度音を聞いてメモを取って訳してみたら
China, Korea, and Japan are where the potential growth of the world economy could come from.
↓ イメージを介して自分なりに和訳すると
中国、韓国、日本は、世界経済を成長させる可能性を秘めているのかもしれない。
と綺麗に言葉にできるようになりました。
何ができるようになったのか
長くなりましたが、一つ一つの単語の理解を深めることこそが、リテンションに繋がることを4ヶ月目にして理解しました。
日本語でも「政策」という単語など、過去の教材に出てきた単語で、自分の中でぼんやりしているものが多いので、ちゃんと理解を深めてトレーニングしていきたいと思いました。
と、いうことで、リテンションは記憶力だけでなく、理解力にも大きく影響されることを、身をもって体験したというお話でした。
以上!