【ざっくりレビュー】2019 J1リーグ第2節 ベガルタ仙台戦
akira(@akiras21_)です。
【前節までのあらすじ】
シーズン開幕戦となったガンバ大阪戦で見事白星を挙げ(○3−2)、意気揚々と本拠地・日産スタジアムへ凱旋したトリコロールの勇者たち。「昨季と変わらなかった」印象のガンバとは対照的に、前節の浦和レッズ戦で堅さを重視したサッカーを披露していたベガルタ仙台を迎えました。
ということで、開幕2連勝を狙うマリノス。先発メンバーは以下の通り。
[4-1-2-3]
GK:飯倉大樹
DF:広瀬陸斗、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、高野遼
MF:喜田拓也、三好康児、天野純
FW:仲川輝人、エジガル・ジュニオ、マルコス・ジュニオール
サブメンバー含め、ガンバ戦から変更はありませんでした。シーズン2戦目ということもあって、まずはゲームモデルの定着・深化を優先した形でしょうか。
結論から言いますと、仙台はガンバよりも堅く、それでいてどこかシンパシーを感じる対戦相手でした。それでは早速見ていきましょう。
「練習通り」の2点目:スピードスターの思考的瞬発力とスイッチング
選手たちも「練習通り」と口にする2点目は、それぞれの動きを切り取って見てみるのも面白い流れでした。
スローインからの攻撃を弾かれて、喜田がボールをトラップしたところから一連の流れが始まっています。仙台は喜田に向かったボールが不安定なバウンドだったと見るや、喜田を追っていた兵藤慎剛、関口訓充と富田晋伍の3人で圧縮プレスを掛けました。が、喜田はそれを惹きつけつつ三好にパスを通しました。
このとき、喜田の背後ではチアゴと畠中が帰陣してトランジションに備えていました。チアゴの近くには石原直樹がいましたが、彼の視線と体の向きはボールに向かっていたため、仮に喜田のパスが失敗に終わったとしても、その後のカウンターは対応できてたのではないかと思います。逆に言えば、兵藤に追われた喜田とそれを迎える2枚が視野に入った段階で石原が体の向きをマリノスゴール方向に向けていたとしたら、果たしてその先どうなっていたでしょうか…?
さて、喜田に対する3枚掛かりの収縮プレスが失敗に終わったことで仙台の対応にも変化が表れます。基本的に5+3で守備ブロックを形成していた仙台ですが、関口と富田がボール奪取に失敗したため、2人少ない状態でカウンターに対応することとなりました。一方マリノスはボールを受けた三好をはじめ、左ハーフレーンに仲川、中央レーンにクリリンと同レーンながら若干流れ気味にエジガル、そして左ハーフレーンに天野と5人が攻撃に参加していました。この時点で5対4と数的優位に立っていたことになります。
その後三好は急ぐでも遅らせるでもない絶妙なスピードのドリブルで持ち上がったわけですが、同時進行で仲川が自身の特徴とクレバーさを発揮します。いったん内側に絞るようにしてシマオ・マテまでランニングで近寄り、横に並んだあたりで外に流れていくようなスプリントへと切り替え。同時に腕を上げて、三好にパスを要求していました。
実はクリリンもボールへの関与意識を見せていましたが、仲川の腕上げを見て近寄るスピードを落とし、永戸勝也と大岩一貴の意識を惹きつけるべく一瞬だけドリブルコースを内寄りへ。また、徐々に中央へと絞っていた天野も同じタイミングで角度を変えてペナルティエリア中央に侵入。ただしこれも囮であって、本当の狙いは天野の裏でファーサイドに抜けていたエジガルでした。この形になった時点で仲川はクロスを入れると決めていたでしょうし、全員がゴールまでの道筋を同じように描いていたと思われます。また、ゴールが決まった後40分ごろの攻撃でも似たような形が見られたのは興味深い点といえるでしょう。
継続は力なり:基礎と応用とタイムマネジメント
これは仙台戦に限ったことではないんですが、選手同士が流動的に、そして有機的にポジション交換をしているのが頻繁に見られました。後方から左サイドに飛んだロングフィードを収めたのが天野であったり、ビルドアップの場面において右サイド後方でボールを握っていたのが三好であったり、前述の2店目のシーンで中央レーンにいたのがクリリンであったり…代表的なものを挙げるだけでもこれだけ出てくるので、すべてを書き出そうとすれば枚挙に暇がありません。
「今のマリノスはポジショナルプレーっていうけど、5レーンに沿ってポジショニングを整理したり維持したりするのがやり方じゃなかったの?」という疑問については前節レビューのこのあたりをご覧いただくとして、仙台はむしろ5レーンに沿ったポジションの整理を行っていました。そして、そうすることによって主に守備組織が良くオーガナイズされていました。たとえば、チーム全体で5レーンを意識しつつ、ボールサイドの逆側レーンを空ける代わりにボールサイド側レーンに人数を多めに割いてプレスをかけやすくする…などです。
ただ、語弊を恐れず極端な言い方をすれば「仙台はただ整っているだけだった」ともいえます。「陣形を整える」ことと「整った陣形をどう活用するか」ということは密接につながっている一方で別個の事項ですし、その間には「時間」という要素も含まれてきます。それらひとつひとつをなるべく素早く、シームレスにつなぎ合わせていくことがゲームモデル(「どのように試合を進めるか」というチームとしてのコンセプト)の質を高めるために求められてくるのです。
…と簡単に言ってしまっていますが、このあたりをチームとして機能させるのはとても難しいんですよね。2018シーズンのマリノスがその点に長く苦しんだのを見ているだけに強く思います。「やりたいことは分かるんだけどうまくいかない」チームの様子を見続けるのは非常にタフなことですし、グッと堪えて見守る覚悟を迫られた感覚でした。仙台サポの方々も、あるいは仙台の選手・コーチ陣もきっとそのようなもどかしさを感じているのではないでしょうか。
さて「守備のオーガナイズが良かった」とは書きましたが、試合後半は攻撃についても仙台の意図が感じられるものが散見されました。たとえば54分のカウンターであったり、64分のスローインから始まったゴール前での攻撃など。そのほか阿部拓馬を投入してチーム全体の重心を守備→攻撃に切り替えたことと、ジャーメイン良を投入して質的優位を用いた第2→第3レイヤーへの進め方を選択肢に加えたことがマリノス1失点目のPKにつながりました。
マリノスとしては「前半に2点を先制しておいてよかった」ということになるんですが、いくつかあった得点機をひとつでもモノにして3−0に持っていけてれば、さらに余裕のある試合運びができたんじゃないかなと思います。後半のマリノスはところどころ光るものがあったので決して出来が悪かったわけではないですが、特段良かったり、あるいは前半以上のものだったかといわれればそうではなかった…という感想です。
おわりに:あの日見た未来の歓喜を僕達はまだ知らない
ということで、前節のガンバと比べれば仙台は堅い相手でした。そして、その堅さを破るためのしなやかさがマリノスに備わりつつあることを感じることができたゲームでした。「相手の出方に合わせてプレーする」ということを、あくまで自分たちの軸やスタイルを変えることなく実行できたことはチームとしての積み上げになったでしょう。
とはいえ、次節の川崎フロンターレ戦がどうなるかは正直言って分かりません。川崎はガンバとも仙台とも違ったスタイルのチームですし、ボールを持った時の主導権の握り方が上手なイメージがあります。焦らされる時間帯が多くなるのではないかと思いますが、だからこそ好機を逃さず確実に仕留めてほしいなというのが個人的な願望です。
前節レビューの締めを「どうなるか見てみようじゃないか」としましたが、とはいえ川崎戦は序盤戦最大の山場になりそうです。ここで弾みを付けられるかどうかによっては、今季の進み方が大きく変わっていく気がします。開幕2連勝で迎えた3節・鹿島戦に破れifを逃した2017シーズンから2年、チームとしての経験と成熟が試される最初の機会がやってきたのです。
2節を終えた段階でチームの核となりつつある三好が契約上出場できないというファクターもあり、チームとしていろいろと試される試合になりそうです。これもひとつの挑戦と捉えつつ、善戦・好ゲームを期待しましょう!
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